小宮友根、2011、実践の中のジェンダー──法システムの社会学的記述
ジェンダーという言葉は、性と社会をめぐる議論では社会的な性差を指す言葉としてすっかり一般的な表現です。しかし性差が〈社会的〉だとはいったい何 を意味するのでしょうか。性差の原因が後天的・人為的だということでしょうか? 著者はこの一般的理解が陥る危険を示し、より豊かな現実の理解のため、社会の現場に戻る経験的な研究を促します。私たちの社会生活は、お互いに行為し理解しあうという〈意味〉をめぐるやりとりであり、「性現象の社会性」はこの社会生活の実際を適切に記述することでこそ明らかになるというのです。フェミニズムやシステム理論が予示した社会秩序の研究を、ジェンダーと法をめぐるトピックを実際に記述するなかで実現する清新な野心作です。