串田秀也・好井裕明、2010、エスノメソドロジーを学ぶ人のために

書誌と目次



  • 2010年4月刊行
  • 定価2,520円(税込)
  • 2010年4月発行
  • 四六判/324頁
  • 世界思想社 |

身近なリアリティから社会学的探究へ ― エスノメソドロジーの考え方を、平易な言葉と身近な例示によって説き、そのおもしろさを伝え、読者を社会学的探究へと誘う。初学者のために徹底してわかりやすく編まれた格好の入門書。

執筆者(編者以外)
西阪 仰、山田富秋、秋葉昌樹、樫田美雄、菅野昌史、南 保輔
序 エスノメソドロジーへの招待(串田秀也・好井裕明)
第I部 身近な世界のエスノメソドロジー
  • 第1章 言葉を使うこと(串田秀也)
  • 第2章 道具を使うこと―身体・環境・相互行為(西阪 仰)
  • 第3章 子ども/大人であること(山田富秋)
  • 第4章 女/男であること(好井裕明)
第II部 制度的世界のエスノメソドロジー
  • 第5章 メディアに接する(好井裕明)
  • 第6章 学校で過ごす(秋葉昌樹)
  • 第7章 病院に行く―医療場面のコミュニケーション分析(樫田美雄)
  • 第8章 施設で暮らす(樫田美雄)
  • 第9章 法律に接する(菅野昌史)
第III部 エスノメソドロジーの視座と方法
  • 第10章 ガーフィンケルとエスノメソドロジーの発見(山田富秋)
  • 第11章 サックスと会話分析の展開(串田秀也)
  • 第12章 社会問題とエスノメソドロジー研究(好井裕明)
  • 第13章 社会調査とエスノメソドロジー(南 保輔)
文献案内
  • ガーフィンケル『エスノメソドロジー研究』(山田富秋)
  • サックス『会話についての講義』(全2巻)(西阪 仰)
  • ウィーダー『言語と社会的現実:受刑者コードを語るという事例』(好井裕明)
  • ミーハン『授業を学ぶこと:教室における社会的組織化』(串田秀也)
  • リンチ『科学的実践と日常的行為:エスノメソドロジーと科学の社会的研究』(串田秀也)
  • シェグロフ『相互行為における連鎖組織:会話分析入門1』(串田秀也)

本書から:

エスノメソドロジーは「人々の社会学」、すなわち、実際的活動に携わる人々が活動を秩序だったものとしてつくりあげていく方法、を解明する研究分野である…(中略)…本書の第I部と第II部では、できるだけ具体例に則して、とくに読者にとって身近な現代日本社会の現実に即して、エスノメソドロジーの考え方を紹介するよう努めている。また、第III部では、エスノメソドロジーの学説的展開や社会学とのかかわりについてやや専門的な内容も含めて概説している。これらの章を読むことで、読者はエスノメソドロジーとは何かをより具体的に、また多面的に知ることができるだろう。(p.12「序」より)

編者に聞く ── 一問一答

本書をまとめようと思った動機やきっかけを教えてください

世界思想社から「学ぶ人のために」シリーズの一冊として出してみないかと打診を受けたとき、編者2人は、教科書と論文集の中間的性格のものをイメージしていました。が、担当編集者とやりとりしているうち、求められているのは純然たる教科書・入門書の編集であることがわかりました。これはかなり難しい注文だぞ、と思ってやや怯みましたが、日本におけるエスノメソドロジー・会話分析の裾野を広げるためには重要な企画であると考え、怯む気持ちに鞭打って乗り出したという次第です。

構想・執筆・編集期間はどれくらいですか?

3年くらいだと思います。

編集作業中のエピソード(苦労した点・楽しかったこと・思いがけないことなど)があれば教えてください

企画段階で、『実践エスノメソドロジー入門』『ワードマップ エスノメソドロジー』という二つのすぐれた教科書がすでにあったので、それらとは異なる需要に応えられるように工夫することが課題となりました。より初学者向けの本にしようと考え、主流の社会学についての知識を持たない初学者にもわかるような書き方で、術語を減らし身近な日本社会の具体例を豊富に盛り込むように、などの難しいことを各章の執筆者にお願いしました。

社会学的にみて,本書の一番の「売り」はなんだと思いますか?

本書の章立てが、エスノメソドロジー入門であるだけでなく、社会学的探究への入門にもなるように作られていることです。企画段階で考えたもう一つの野望(?)は、「エスノメソドロジーの視点による社会学入門」の本にしようということでした。だから、章立ては一般的な社会学の教科書とけっこう似ています。

EMCA初学者は,どこから読むのが分かりやすいと思いますか? また,読むときに参考になる本や,読む際の留意点があれば,教えてください

いちおう前から順番に読まれることを想定して構成していますが、第I部と第II部の各章は、どこから読んでも大丈夫だと思います。第Ⅲ部は少し後回しにした方がよいと思います。

言語学者に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は? 第1章から第9章まで、さまざまな場面での実際の言語的相互行為の書き起こしをもとに、エスノメソドロジーの考え方が紹介されています。
実践家に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は?

2章、3章、6章、7章、8章、9章には、医療・福祉・教育・保育・法律などのテーマにかかわる議論が含まれており、人間とかかわる実践家の方々が関心をもって読める部分だと思います。(文責:串田)

書評情報

本書で扱われていること ── キーワード集