- 判型:四六並
- ページ数:223
- 刊行年:2008年12月
- ISBN:978-4-7793-0164-3
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私たちの生きる現実の世界はどのようにつくられ、そしてつくられつつあるのか。文化的につくられる世界を身近な切り口から柔軟に鮮やかに論じる。文化心理学の立場から世界とそのつながりを読み解いた好著。
0.はじめに |
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1.社会文化的サイボーグ |
- 人工物と一緒に
- 社会文化的珈琲メイカーズ
- 道具とセットの主体性
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2.デザインされた水 |
- 可能なスナップショットの交渉としての現実
- 人工物が横溢するフィールドへ向かう
- 社会文化的オーダー記憶
- 焼肉屋のパーソナル・ビュー
- アンサンブルとしての主体性
- あなたの物語
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3.フィールドに向かう |
- 道具のデザイン=主体のデザイン
- ケータイ越しのあなたと私
- 電子的遠隔共同注視
- 誰もがフォト・ジャーナリスト
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4.デザインされた動機 |
- 現実の理解を改訂する
- プリクラ―アイデンティティの装置
- 私らしさの構成要素
- 女子高校生に出会う
- 記憶するプリクラ
- プリクラ越しの友人関係
- 「友人であること」を実践する
- 社会的ステイタスの可視化
- 男の子って何でできてる?
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5.空っぽの世界を意味で満たす |
- サブカルチャーにダイブ
- 文化を定義する
- 心理学という文化的実践
- 腐女子の文化を見る
- コスプレ文化に参加する
- コスプレーヤーに出会う
- コスプレ文化をデザインする
- 正統的周辺参加論
- コスプレ・コミュニティの文化的実践
- 文化、社会、歴史的に構成される主体
- 「とられた」批判と美意識
- 文化的価値の生産と普及
- 実践の文化のスケッチを描く
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6.文化と衝動 |
- ヤオイ・同人誌文化に参加する
- ヤオイを読む
- 同人誌愛好家に出会う
- 萌え語りに耳を傾ける
- ヤオイ・コミュニティにおける意味の交渉
- ヤオイの読み方とアイデンティティ
- 嗜好の履歴とアイデンティティ
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7.作られた「童貞」を生きる |
- 「肥満」という現実の成り立ち
- 文化的対象を可視化する
- 文化的対象としての「童貞」
- 変わりゆく童貞
- 恥ずかしい童貞
- 童貞アンケート
- 童貞のイメージ
- 発達課題としての童貞喪失
- 社会的現実を結ぶ/綻びさせる
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8.現実をデザインする |
- オーダーメイドな現実
- 心理ダッシュ
- 学習環境はデザインできるか
- 複雑さの回復
- 運命を再デザインする―Every man is the artisan of his own fortune
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9.ふりかえりガイデッド・ツアー |
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10.こころのありか―中枢コントロールと世界コントロール |
- 神殿を建てる身体たちをデザインするには
- ロボットでした
- この世の中の保守点検員
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引用文献/あとがき/事項・人名索引 |
自分たちの世代のたくわえを次世代に伝えるためには、世界の見え方を伝承するための特別な実践が必要になる。そのことをわたしたちは、教育と呼んでいる。 自分たちの世代の世界の見えを次世代に伝え、この世界の見えを再生産するために、私たちは教えと学びという営みを必要とする。動物とは違う拡張された現実を生きる以上、動物とは異なる後天的な伝承のプロセスを種として必要とするのである。種の存続の基本条件として、学習のプロセスを埋め込んだ存在が人間ということになる。 なぜ学ばなければならないのか、子どもや初心者は問うだろう。それは人間を維持するためである。(p.198より)
本書をまとめようと思った動機やきっかけを教えてください
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そろそろ一発かましておく必要を感じた。ベストセラーになって松屋の味噌汁を豚汁にアップグレイドしたかった。[有元]
心理学そのものをちゃんと再考したかった。ベストセラーになって王将でチャーハンに餃子をつけたかった。[岡部]
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構想・執筆・編集期間はどれくらいですか?
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構想は長いです。編集者との最初の企画会議が1998年8月19日で出版にこぎ着けたのが2008年です。その十年の間に三歳児が中2になったり(著者A)、独身の院生が二児の父になったりしました(著者O)。これでは いけないと、バラバラに書きためていたものをまとめ、集中的に加筆修正しだしてからは、10ヶ月、あっという間の印象です。編集は執筆と同時進行ですが、ゲラがあがってからは突貫作業で3週間くらい。
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編集作業中のエピソード(苦労した点・楽しかったこと・思いがけないことなど)があれば教えてください
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- それとなく執筆を促す年賀状と暑中見舞いが、辛抱強い編集者からそれぞれ十通ずつ届きました。
- 一人だと書かないし、共著で調整も必要なので、本当に物理的に二人で一緒に共著しました。
- 東京のさまざまな場所で執筆しました。これほどモバイルにユビキタスに書いた本はないのでは。A.C.クラーク風に言えば、東京のありとあらゆる場所に持ち運んだ二台のノートPCで編集、共有されたWORD文書を、かすかな切れ切れの野良無線LAN電波に乗せて、中目黒の北樹出版に送信して作った本です。
- 青学の地下食堂の片隅のコンセントのそば、筑波大大塚キャンパスのエアコンの効いた自販機コーナーのコンセントのそば(大声で茶飲み話をする善男善女を脳内で毒づきながら…)、澁谷の空中楼閣(マークシティ)のようなおしゃれなガラス張りのカフェーで、八王子京王ホテルのスタバ、…いずれも大変良い思い出です。
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状況的学習論の立場からすると,本書の一番の「売り」はなんだと思いますか?
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- 状況的学習論の立場からすると、ヴィゴツキー、レイヴ&ウェンガー、エンゲストローム、上野直樹、茂呂雄二を途中で投げ出した人が、もう一度、それも平明に状況論が学び直せることが一番の売りです。
- または、正統的周辺参加や活動理論やアクターネットワークやハイブリッド・コレクティヴといった難しい理論にへきえきした人にとっての、涙なしの状況論であることが一番の売りです。
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状況論初学者は,どこから読むのが分かりやすいと思いますか? また,読むときに参考になる本や,読む際の留意点があれば,教えてください
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- 状況論の初学者は、上野直樹、茂呂雄二、レイブ&ウエンガー、エンゲストロームを読んでみてから本書を読んで下さい。そして本書を読み終わってからも是非読んでください。
- ヤオイの初学者は「となりの801ちゃん」とあわせてお読み下さい(著者O。著者Aには意味不明…)。
- 本を読むのが嫌いな方は、イラストだけで十分面白いです。
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EMCA研究者に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は?
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p203 からの最終章「こころのありか」を是非読んでいただければと思います。行為や世の中の出来事を自分の自由意志に求めない姿勢を、スピノザを手がかりに論じておりますので、エスノな方々のご意見頂戴できれば幸いです。
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