[2020]松永伸太朗「第43回労働関係図書優秀賞受賞に寄せて」

研究会員である松永伸太朗さんの著書アニメーターはどう働いているのかが労働政策研究・研修機構の第43回労働関係図書優秀賞を受賞しました。

著書の内容と今後の展開について、松永さんからコメントをいただいたので掲載します。

「第43回労働関係図書優秀賞受賞に寄せて」

松永伸太朗

このたび、拙著『アニメーターはどう働いているのか:集まって働くフリーランサーたちの労働社会学』(ナカニシヤ出版、2020年)が第43回労働関係図書優秀賞(主催:労働政策研究・研修機構)を受賞いたしました。この著作は、2018年に一橋大学大学院社会学研究科に博士論文として提出した「アニメ作画スタジオにおける経済活動と空間的秩序:職場のモラル・エコノミーの社会学的研究」をもとに加筆修正を行い、出版したものです。

拙著は、フリーランサーながら東京都内のスタジオに集って働くアニメーターが、いかにしてフリーランス労働が有する不安定性に対処しているか、それと同時にいかにして相互干渉をしすぎることなく自由な働き方を維持しているかという問題をフィールドワークに基づいて明らかにしたものです。全体を通して、フィールドワークから得られたフィールドノートから、アニメーターの職場における相互行為をエスノメソドロジーの方針に基づいて分析しました。また、エスノメソドロジー研究と労働社会学研究の関係性についても言及することを試みました。

今回いただいた労働関係図書優秀賞は、労働をめぐる社会科学研究が幅広く対象となるものであり、審査員の先生方のなかに社会学専攻の方はいらっしゃらないなかで受賞させていただきました。EMCAの方針についても他分野の先生方から意義を認めてくださり、大変光栄に思っております。少しでも、EMCAの学術的意義を広めることに貢献できたのなら、この上ない喜びです。
拙著の出版にあたっては、まず博士論文のもとになる調査にご協力いただいたX社のみなさまに大変お世話になりました。また博士論文の審査をいただいた一橋大学の先生方、出版助成をいただいた本務校の長野大学、編集を担当いただいたナカニシヤ出版の米谷龍幸さんをはじめ、多くの方々のお力添えがあって栄誉ある賞をいただくことができました。ここに記して感謝申し上げます。

これに満足せず、今後も労働研究や社会学に貢献するようなEMCA研究の方向性を模索し、ひるがえってEMCA研究の発展にも貢献していきたいと思っております。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。