EMCA研究会セミナー「EMCA研究とジャーナル投稿」

下記の通り、EMCA研究会では「EMCA研究とジャーナル投稿」セミナーを開催いたします。
今回、EMCA研究会企画担当の方で、EMCA研究者のキャリア形成支援に資する企画を実施する方向で検討を行い、上記のセミナーを開催することといたしました。
今回のセミナーでは、近年に国内外の査読付き雑誌に掲載された経験を持つ若手研究者に講師として登壇いただき、投稿するジャーナルの選択や査読プロセスにおける経験、そこから得たノウハウなどについて講義をいただきます。EMCA研究のトレーニングを一定程度受けた方でも、実際に自らの研究成果を発信していくにあたって関連する分野の研究者から理解を得ることに難しさを日々感じられている方も多いことかと思います。そのような課題をどのように乗り越えていくのかについて考えることに資する三つの講座を今回設定させていただきました。
EMCAのアプローチを用いた論文投稿を考えていらっしゃる方はもちろん、EMCAによる分析の意義を広く読者に説得することにチャレンジしたい方に役立つセミナーとなっております。さまざまなキャリアステージにある方にご参加いただきたく思います。奮ってお申し込みください。

なお、申込みは先着順となり、定員に達し次第締め切らせていただきます。
例年告知後早々に定員に達してしまいますので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。申込みは、各コマごとにお願いいたします。

詳細は、下記をご参照ください。各講師が課題文献として挙げている論文については、申込みいただいた方に後日共有いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

(1)EMCA者のキャリア形成と論文投稿プロセスの工夫:社会学の場合

※申込URL:http://ptix.at/z592xy
日時:2022年9月24日(土) 10時30分~12時00分
定員:20人
参加費:500円(会員)、1000円(非会員)
講師:河村裕樹(一橋大学)
講義概要:
本セミナーでは、EMCA者が社会学領域においてキャリアを形成するうえで意識しておきたい点と、その中でも特にキャリア形成において重要となるジャーナル投稿のプロセスにおいて生じうる課題とそれへの対処法を取り上げます。EMCA研究をジャーナルに投稿する際、専門領域の動向を踏まえて、先行研究とEMCA研究とを結びつけたり、データを位置づけたりするやり方が課題となることがあります。また、査読者がEMCA研究に対して「そのような細かい議論をして何になるのか」といった定型的な査読コメントをすることもありえます。本セミナーではこれらについて、キャリア形成という観点から講師の経験も踏まえつつ検討していき、EMCA研究を先行研究上に位置づけ、その意義を説得的に示すやり方を共有していきます。その際具体例として、インタビューデータをEMCAの方法
論的態度において分析した河村(2020)の投稿プロセスを取り上げます(※事前に読んでおいてください)。また、受講者には事前課題として、投稿プロセスにおいて感じる課題や疑問点を挙げてもらい、当日はそれらに関する対処法について、簡単なグループワーク形式で考えていく予定です。

河村裕樹, 2020, 「『摂食障害者』であることの説明実践――相互行為としてのイ
ンタビューにおける自己呈示」『保健医療社会学論集』30(2): 74-84.

(2)社会学(言語学)の外で論文を通すにはどうしたらよいか:主に経営学の場合

※申込URL:http://ptix.at/Wb8Wul
日時:2022年9月24日(土) 13時00分~14時30分
定員:20人
参加費:500円(会員)、1000円(非会員)
講師:平本毅(京都府立大学)
講義概要:
このセミナーでは経営学(など)のジャーナルに論文を載せてきた登壇者の経験に基づき、社会学(言語学)の外側の、EMCAに親和的でないジャーナルへの投稿という舞台で、どうやってEMCAで渡りあえばよいかを考える。EMCA者が扱うデータを収集する現場は社会生活のほとんどありとあらゆるところに存在し、EMCA者の活躍の場は、多種多様な分野・領域に広がっている。しかし、当然のことながら、データを分析できるだけでは、その分野・領域のトップジャーナルで論文を書けるようにはならない。あくまで当該の分野・領域における知見の蓄積に内在的な形で学術的な貢献を行わなければならないからである。社会学(言語学)の外側に出ると、EMCAに親和的でないジャーナルが多々存在し、論文を査読に通す際に多くの困難を抱えることになる。いかにしてそのような場でEMCAの論文を書き、査読を通すことができるか。『組織科学』への投稿経験(平本・山内, 2019)などを題材に、気づきとヒントを参加者と共有したい。

平本毅, & 山内裕. (2019). 認識実践の再特定化: 透析治療場面のエスノメソドロジー研究. 組織科学, 52(4), 61-72.

(3)国際誌にEMCAの論文を掲載する: 研究の位置づけ方と投稿査読プロセス

※申込URL:http://ptix.at/vzQd4o
日時:2022年9月24日(土) 15時00分~16時30分
定員:20人
参加費:500円(会員)、1000円(非会員)
講師:岡沢亮(立教大学)
講義概要:
一定の読者数と権威を獲得している国際誌(英文誌)にEMCAの査読論文を掲載するためには、何がポイントになるのでしょうか。もちろん英語の運用能力もある程度必要かもしれませんが、自らの研究を英語圏の研究蓄積の中に位置づけ、EMCA内部における新規性を主張するとともに、外部に向けたEMCAの意義を示すことがより重要になるでしょう。しかしこれは、日本において日本語で研究してきた研究者にとって、しばしば難しい課題になります。

本セミナーでは、「国際誌にEMCAの論文を掲載する」をテーマとして、私自身の投稿・査読対応経験を踏まえながら、以下の3点について相互に関連づけつつお話しします。

1. なぜ英語で論文を書くのか、そのメリットは何か
2. 投稿先の学術誌をどのように選定するか
3. 自身の研究を英語圏の研究の中でどのように位置づけるのか(投稿時と査読対応時それぞれの段階における工夫)

・取り上げる論文
参加者は、少なくとも「◎」がついている文献については事前に読んでおいてください。
◎Okazawa, Ryo, (2021). Resisting categorization in interaction: Membership categorization analysis of sitcom humor. Journal of Pragmatics 186, 33–44. https://doi.org/10.1016/j.pragma.2021.09.011

Okazawa, Ryo, (2022). Membership categorization, humor, and moral order in sitcom interactions. Discourse, Context & Media 46, 1-8 [100593]. https://doi.org/10.1016/j.dcm.2022.100593

Zhang, Tianhao, & Okazawa, Ryo, (2022). Managing Neutrality, Rapport, and Anti-racism in Qualitative Interviews. Qualitative Research (online first). https://doi.org/10.1177/14687941221110183