去る2025年8月20日・21日に標題の研究会を北海道大学(学生交流ステーション)で開催しました。研究会の運営補助者への謝金について、日本エスノメソドロジー・会話分析研究会から「会員主催の研究会開催支援」を受けましたので、以下のように研究会の様子を報告します。
1日目(8月20日)の研究発表は以下の5件でした。
細田由利氏(神奈川大学)/亀井恵里子氏(神奈川大学)/デビッド・アリン氏(神奈川大学)
「自閉スペクトラム症の青年との相互行為における療育者による反応の追求」
李雅琪氏(名古屋大学)
「限定的知識の提示は何をしているのか―『聞いたことある』に注目して」
新保冴弥氏(無所属)・坂井田瑠衣氏(公立はこだて未来大学)
「遊園地のスタッフによる遊具の操作と子どもとの会話への関与の調整」
畑和樹氏(東京都市大学)・増田将伸氏(京都産業大学)
「『不確かさ』をめぐる学習者の言語選択―母語を利用した『脇道』への一時的逸脱」
藤杏子氏(立教大学)
「『良い』パンチの評価実践―ボクシングジムでの練習場面より」
2日目(8月21日)の研究発表は以下の4件でした。
劉礫岩氏(NICT)
「『んだ/なんだ』で締めくくられる反応発話の分析―受け取りつつ質問を求めること」
村上萌子氏(北海道大学)
「接触場面の話し合いにおいて参加者が『議論の枠組み』を形成する手法」
初田絢奈氏(国際教養大学)
「『〜た⽅がいい』の形式を⽤いてなされる助⾔について」
是永論氏(立教大学)
「食事場面における規範とその参照による行為の社会的組織化―『ごちそうさま』に着目して」
発表内容は、TalkBankやCEJCといったコーパスを用いたものから、発表者自身が収録した様々な場面のデータまで、また日常会話を扱ったものから制度的な場面の相互行為を扱ったものまで、バラエティに富んでいました。また発表者の専門分野も社会学はもちろん、言語学、日本語教育、コミュニケーション研究など多様で、その意味でも会話分析の裾野の広がりを改めて感じられる集まりとなりました。聴衆も同様に、幅広い専門分野から、そして学部生・大学院生から現役の大学教員、大学を定年退職されたかたまで、幅広いキャリアステージの研究者が集まりました。参加人数についても、北海道開催ということで当初、本研究発表会の世話人の間では心配する声もあったのですが、両日ともに40名を超え、たいへん盛況だったと思います。
この会話分析研究発表会は、今回で8回目を迎えますが、開始当時からの理念のひとつとして、通常の学会報告よりも多くの議論の時間を用意することがありました。今回も各報告には30分間の発表時間に対して、同じ30分間の質疑応答の時間が設けられましたが、9報告のいずれに対してもその30分間、途切れることなく質問が上がり、白熱した議論がくり広げられました。マイク回しや受付業務などでそのサポートに当たってくれたのが運営補助者の4人の大学院生であり、その謝金を援助していただけたことは、発表者と聴衆のいずれにとっても議論により集中しやすい環境が可能になったという意味でたいへん有益でした。本研究発表会の世話人のなかで、今回の助成の申請を担当した者として、改めて厚くお礼を申し上げます。
戸江哲理(神戸女学院大学)
第8回会話分析研究発表会世話人を代表して
2025/09/09