2025年度 春の研究例会

2026年3月28日(土)にEMCA研究会2025年度春の研究例会を開催します。
午前は自由報告、午後はテーマセッション「遠隔コミュニケーション/非対面環境における相互行為」が行なわれます。
ふるってご参加ください。

【日程】
2026年3月28日(土)11:00〜17:10(受付開始 10:30)
【会場】
同志社大学今出川キャンパス
良心館3階RY305およびRY306
京都市営地下鉄烏丸線「今出川」駅から徒歩1分程度
※地下鉄今出川駅ご利用の場合、1番出口または3番出口から「西門」を目指してお越しくださいませ(その他の通用門は春休み期間中のため閉鎖している可能性がございます)。
今出川駅から会場までの経路図:会場案内図
【参加費】
会員・非会員ともに無料です。
【懇親会】
閉会後、同志社大学今出川キャンパス近辺で懇親会を予定しています(17時半より2時間程度を予定)。参加希望者は3月21日(土)までに懇親会申し込みフォーム〈https://forms.gle/hLb1KgGnhLns8HWS8からお申し込み下さい。なお、定員に達した場合はそれより早く受付を終了することがありますのでご了承ください。申し込みいただいた方には前日までに詳細をメールでご連絡いたします。
【その他】
・抜き刷りコーナーを設置予定です。執筆された論文の抜き刷りや著作の見本など、ぜひご持参下さい。
【プログラム】
10:30 受付開始
11:00 開会の辞
11:00-12:40 【第一部】自由報告セッション1

11:00-11:30

[RY305教室]シュウ カイセイ(京都大学)

「先制的な発話構築の相互行為分析: 発話順番の完了可能点における後続発話の即時産出をめぐって」

11:35-12:05

[RY305教室]鯨井健斗(東京大学)

「授業における子どもの発話の共同構築: 先取り完了に着目して」

12:10-12:40

[RY305教室]岡田光弘(成城大学)・南保輔(成城大学)・西澤弘行(成城大学)・坂井田瑠衣(公立はこだて未来大学)

「『反応の叫び』にみる歩行のゲシュタルト・チェンジの可視性」

【第一部】自由報告セッション2

11:00-11:30

[RY306教室]リュウ ガクカン(京都先端科学大学)

「説明の受け手による実演に関する提案による受け止めの分析」

11:35-12:05

[RY306教室]リュウ ゲイメイ(立教大学)

「他人のスマホをいかに操作するのか: 操作領域の展開と『公的』性質の付与」

12:40-14:00 昼休み
14:00-17:10 〈第二部〉テーマセッション

「遠隔コミュニケーション/非対面環境における相互行為」

[RY305教室]

※テーマセッションの発表タイトルは変更される可能性があります。

14:00-14:10 趣旨説明(担当世話人:粕谷圭佑)

14:10-15:00 吉川侑輝(跡見学園女子大学)

「遠隔コミュニケーションと音楽活動に関する経験的研究(仮)」

15:00-15:10   休憩

15:10-16:00 中川敦(宇都宮大学)

「遠距離介護で 「ケアする子ども」をすること: メッセージングアプリを用いた離れて暮らす子どもと専門職者との遠隔相互行為」

16:00-16:10 休憩

16:10-16:40 指定討論 是永論(立教大学)

16:40-17:10 総合討論

17:10 閉会

【自由報告要旨】

周 匯声(シュウカイセイ)氏

「先制的な発話構築の相互行為分析: 発話順番の完了可能点における後続発話の即時産出をめぐって」

本研究では、日本語日常会話において、話者が順番構成単位(TCU)の完了可能点に到達した直後に、新しいTCUを間髪入れずに付加する実践(immediate TCU addition, 以下ITAと略す)に注目し、その相互行為的機能を会話分析の方法論にもとづいて記述する。具体的には、ITAは、予期される後続展開の性質に応じて、少なくとも三つの仕方で用いられている。第一に、先行TCUが相手に応答を要請しており、その応答が相手にとって負担になりうると話者が見越す場面では、話者はITAを利用し、応答を求める関連性を弱めることで、やり取りがそれ以上展開していく可能性を抑制することができる。第二に、不同意の立ち上がりが強く予見される場面では、話者は順番交替を待たずに後続発話を付加し、先行発話の選好性構造を組み替えることで、より選好的な応答が可能となる枠組みをその場で再設計することができる。第三に、先行TCUが複数の解釈可能性を残し、話者にとって好ましくない理解へ進むリスクがある場面では、相手の次の発話によって誤解が公然化する前に後続発話を差し挟むことで、曖昧性を解消し、「間主観性」を維持することができる。以上の記述により、ITAは偶発的に生じる発話の延長ではなく、連鎖の展開を見越しながら、発話順番の行為解釈をその場で調整するために体系的に用いられていることを主張する。

劉礫岩(リュウガクガン)氏

「説明の受け手による実演に関する提案による受け止めの分析」

本研究は、会話参加者が話題管理に関わるプラクティスを記述する。対象のプラクティスは、ほかの参加者による自身の近況や、過去に行っていた出来事などに関するひとまとまりの説明の後になされる。それに対して話し手は、たとえば説明者が部活でずっと野球をやっていた、と報告したならば、「バッティングセンターに行こうか」というふうに、先行の説明の実演や理解に関わる提案を行う。ただしこの提案はしばしば笑いを伴ったり、すぐに撤回されるなど、真剣なものではなく、ノンシリアスなものである。また3人による対面会話の場合、この提案は視線などによって、説明者以外の会話参加者を巻き込んで行われ、そのあと説明の受け手たちによる連携もしくは協力が生じることが観察される。説明者がこうした説明の受け手たちによる提案を受け入れることは稀であり、基本的に明示的に、「きっぱり」拒否し、そしてその後に複数の参加者による笑いが観察される。収集された事例に共通するのは、説明の受け止めが問題である一方で、説明の受け手が説明の対象に直接なアクセスを持たないという問題である。そして上記のやり方は、いわばジョークや笑いによって、この問題に対処していると考えられる。

鯨井健斗 氏

「授業における子どもの発話の共同構築: 先取り完了に着目して」

本報告では、小学校の一斉授業場面という制度的な場面において、子どもたちがどのように発話を共同構築しているのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、教師の発問に対する子どもの応答(R)に他の子どもが参与をする場面を分析対象とし、子どもたちが授業特有の順番交替規則のなかでいかにターンの組織化を達成しているのかを考察する。一斉授業に見られる典型的なIRE連鎖の研究においては、子どものRがどのように組み立てられているかについての研究は少ない。そこで、子どものRに着目して分析をすると、ある子どものRに他の子どもが「先取り完了」を用いて参与している現象が繰り返し観察された。さらに詳細な分析を行うと、この「先取り完了」に対して、多くの場合、第一発話者の子どもが「反復を埋め込んだ遅れた完了」を行っていた。つまり、他の子どもの「先取り完了」を自身の順番の完了とは認めず、あくまで第一発話者の発話を完了させるためのサポートとして取り扱っていた。以上の分析を通して、子どもどうしが互いの発話を共同構築し、授業内での発言機会をどのように捉えているかについての議論を行い、示唆を得たい。

劉 芸明(リュウゲイメイ)氏

「他人のスマホをいかに操作するのか: 操作領域の展開と『公的』性質の付与」

本研究は、多人数によるQRコード注文という協働活動において、「他者のスマホを操作する」という行為に着目する。この場面では、相手のスマホを操作する出来事がしばしば観察される。スマホ操作は本来個人的な動きであり、その進行は他者にも理解可能な仕方で組織され、通常は互いに干渉しないように配慮されている。つまり、他人の私物であるスマホを操作するのは、やはり何らかの理由づけが必要である。重要なのは、参加者が「相手が何をしているか」を内的に推測してスマホに接近するのではなく、相手のスマホが相互行為のなかで一時的に「操作してよいもの」として立ち上がる条件があることだ。分析対象としたのは、中国における友人同士の食事場面を収録したビデオデータである。会話・視線・身体志向・道具操作といったマルチモーダルな資源を検討し、操作領域(Kendon 1990)や参与フレーム(西阪 1992)などの概念を用いて、「他者スマホがいつ・どの条件で操作可能になるのか」を分析した。結果として、次の点が示唆された。1. 介入に先立つ操作の「差し控え」の有無によって、「操作領域の場当たり的な展開」と「事前の展開」とを区別できる。2. スマホ所有者が自分の操作領域を開くのに伴い、スマホはその場で一時的に「公的」性質を付与され、「触れてよい資源」として立ち上がる。3. また、その「公的」性質はダイナミックであり、誤操作などの行為によって私物性が再び立ち上がり、操作が回収されうる。

岡田光弘 氏・南保輔 氏・西澤弘行 氏・坂井田瑠衣 氏

「『反応の叫び』にみる歩行のゲシュタルト・チェンジの可視性」

『ゲシュタルト心理学の原理』でK.コフカは「雪の積もった湖上を渡る旅人」を題材に、地理的な環境と行動上の環境との齟齬のリスクを示した。本報告で扱う、視覚障害者(40代後半、一人で歩くスキルも高い)による雪の残る道での歩行においては、地理的な環境として困難となりうる厚みのある雪上に歩みを進めており、その時、雪の「奥行き」を感じて、「あれ」と発話した視覚障害者に身体的な「ゲシュタルト・チェンジ」が生じている。発話するまでの最初の1、2歩には白杖や傘を駆使する通常の歩行ゲシュタルトが見られ、「あれ」を伴う3歩目から雪を「踏み抜く」ゲシュタルトが見られる。その時に共在していた訓練士による「あ」という発話は、地理的な環境に基づいた予期と実際の行為とのずれを示す発話であるのに対して、視覚障害者の「あれ」は、動き、動かされる(というメルロ=ポンティの)「キアスム」の中での「ゲシュタルト・チェンジ」が「反応の叫び」によって前景化されている発話である。本報告が扱う場面は、ゲシュタルト心理学や現象学の「ゲシュタルト」という用語を、実験によらずに実践に差し戻す「ヘテロ現象学」のための「明快さをもたらす場」となると思われる。

【テーマセッション企画趣旨】

私たちは、日常活動からビジネス・教育・医療・福祉などあらゆる領域で、「いま目の前にいない相手」とやりとりを日々行っています。Webネットワークとデジタルデバイスがインフラ化した現代においては、こうした非対面環境での相互行為は、もはや特別な状況とはみなされなくなっています。しかし、身体が共在しない状況では、参加者は通信環境や媒体固有の特性など、相互行為の資源の制約を踏まえて、さまざまな実践を組み立てなければなりません。そこでの社会秩序の産出は、対面状況の相互行為の代替物ではなく、それ自体固有の秩序であるといえるでしょう。本テーマセッションでは、非対面環境における相互行為の組織化と、その多様な実践に関するご研究を報告いただき、現代における相互行為の新たな諸相に切り込む視座を得ることを目指します。

【関連イベント】
前日の3/27(金)には同じく同志社大学今出川キャンパスにて、「2025年度エスノメソドロジー・会話分析研究会セミナー: 多様なデータタイプの分析入門」の開催を予定しております。セミナーの詳細については、別便でのご案内をご覧ください。
(大会担当世話人:粕谷圭佑・石野未架)