2024年度エスノメソドロジー・会話分析研究会セミナー:EMCA研究の広がり

エスノメソドロジー・会話分析にかかわる研究の問題意識やアプローチは、近年ますます多様な広がりを見せています。そうした研究分野としての広がりを的確に捉えつつ、研究者それぞれの専門性や関心を焦点化していくことは、実りある研究活動につながるだけでなく、研究者としてのキャリア形成においても重要であると考えられます。今回のセミナーでは、近年のEMCAにおいて注目されている「相互行為の複感覚性」と「長期的データを用いたEMCA研究」という2つの研究動向について、それぞれに通じておられる講師の先生方にセミナーをご担当いただきます。近年の関連研究やご自身の分析事例を交えながら講義をしていただくとともに、参加者のみなさまとのインタラクティブな議論によって、それぞれの研究動向に対する理解を深めたいと思います。

概要:
【日時】2025年3月10日(月)10:30~16:00
【実施形態】対面形式
【会場】同志社大学 今出川キャンパス 良心館1階 RY101教室
【参加費】下記の通り。いずれも1テーマあたりの参加費になります。
・EMCA研究会会員:500円
・EMCA研究会非会員:1000円
【定員】30名(セミナーごと)
【注意事項】
・お支払いはPeatixを通しての事前支払いのみとなります。当日の現金支払いは受け付けておりませんので、あらかじめお申し込み・お支払いをお願いいたします。
・準備の都合上、3月7日(金)24時までで申込みを締め切らせていただきます。
・申込み期間内でも、定員に達した時点で、予告なく申込みを終了させていただくことがあります。参加をお考えの方は、お早めにお申し込みください。

【プログラム】
(1)10:30~12:30「相互行為の複感覚性」
講師:坂井愛理(追手門学院大学)
申込ページ:https://emca-ms.peatix.com

(2)14:00~16:00「長期的データを用いたEMCA研究」
講師:粕谷圭佑(奈良教育大学)
申込ページ:https://emca-lca.peatix.com

【セミナー詳細】

「相互行為の複感覚性」
講師:坂井愛理(追手門学院大学)

近年、さまざまな領域で感覚性をめぐる研究が進められています。感覚性と知覚、メディア、自己、情動等のトピックがある中で、エスノメソドロジー・会話分析は「行為の編成」との関係から感覚性について探究してきました。本セミナーでは、先行研究の主たる知見と主張を振り返りながら、とくに複感覚性(multisensoriality)をめぐるエスノメソドロジー・会話分析について解説します。
さらに本セミナーでは、実際のビデオデータを資料としながら、相互行為内の感覚資源(視覚や触覚など)をトランスクリプトに書き起こすワークも行います。分析のデモンストレーションと議論を通して、エスノメソドロジー・会話分析の視点が何であって/何でないのか、議論したいと思います。
※本テーマに参加される方は、セミナー当日に各自のノートPCをご持参ください。トランスクリプトの作成練習を含みますので、Word、Pagesなどの文書作成ソフトをインストールしておいてください。

【講師代表業績】
坂井愛理,2021,「『社会参加』の会話分析––––習字教室における会話の開始を題材に」ライフ・レジリエンス学1,(2025年2月4日取得, https://www.life-resilience.jp/wp-content/uploads/2021/03/6坂井_社会参加の会話分析.pdf ).
坂井愛理,2020,「訪問ケアにおける医療コミュニケーション––––マッサージ治療場面において患者の説明はどのように引き出されるのか」『社会学評論』71(1) : 119-136.
坂井愛理,2019,「訪問マッサージにおけるままならなさの訴え––––患者によって自己開始される問題の訴えを例に」『現代社会学理論研究』13 : 111-124.

「長期的データを用いたEMCA研究」
講師:粕谷圭佑(奈良教育大学)

本セミナーでは、相互行為における変化を捉える手法として近年注目されている、いわゆる「長期的会話分析(longitudinal conversation analysis)」の動向と、その実際の分析事例を紹介します。会話分析やエスノメソドロジーは、日常やさまざまな制度的場面などで人びとが行う実践が、いかに成り立っているのかを描き出してきましたが、そこに「変化」の記述を組み込むことには理論的・方法的にさまざまな注意が必要になります。しかし、教育現場での「学習」や参与者の「成長」は、その実践の参与者自身の関心でもあります。では、長期的なデータの収集と分析によって実践の変化を取り扱うにはどうしたら良いのでしょうか。本セミナーでは、長期的会話分析の方法論と問題意識を概観するとともに、講師がエスノメソドロジーや教育社会学の文脈で取り組んできた研究事例を踏まえながら、こうした長期的なデータを用いた分析を行う際に生じる課題や、研究の展開可能性について、受講者のみなさんと意見交換を行いながら深めていきたいと思います。実践の変化や成長・学習といった概念に関心をお持ちの方、特に教育の場面での相互行為を扱っている方のご参加をお待ちしています。

【講師代表業績】
粕谷圭佑, 2024, 「園児集団に向けた『一言の指示』の成立過程:幼稚園年少級における『列になる』練習の経時的分析」『社会学評論』 297, 2-19.
粕谷圭佑, 2023, 「一斉指導における教示理解の確認:幼稚園の製作場面で用いられる否定誘発質問に着目して」『教育社会学研究』 113, 49-69.
粕谷圭佑, 2019, 「『社会化』過程の再特定化:幼稚園年少級におけるルーティン活動の相互行為分析」『教育社会学研究』 105, 115-135.