2024年度 秋の研究大会

2024年11月24日(日)に、以下の通り、EMCA研究会秋の研究大会を開催します。
午前は自由報告、午後はテーマセッション「いま問い直す順番交替組織の諸相:Sacks, Schegloff, & Jefferson (1974)から50年の節目に」が行なわれます。
ふるってご参加ください。

【日程】2024年11月24日(日)10:45〜16:40(受付開始 10:15)

【会場】関西学院大学 大阪梅田キャンパス1405および1408(アプローズタワー14階)
(阪急「大阪梅田」駅茶屋町口から徒歩5分、大阪市営地下鉄御堂筋線「中津」駅から徒歩10分)
https://www.kwansei.ac.jp/access/umeda

【参加費】会員・非会員ともに無料です。

【懇親会】大阪梅田駅近辺で懇親会を17時30分ごろより予定しています。参加される方は事前にこちらの懇親会参加調査フォーム<https://forms.gle/dBV251vpLZdAEgRr7>から11月20日(水)までにお申し込み下さい。当日参加も受け付けますが、予約人数把握のため、なるべく事前申し込みにご協力をお願いできれば助かります。詳細は当日お知らせいたします。

【その他】
・抜き刷りコーナーを設置予定です。執筆された論文の抜き刷りや著作の見本など、ぜひご持参下さい。

【プログラム】

10:15

受付開始

10:45

開会

 

【第一部】自由報告

[1405教室]

【第一部】自由報告

[1408教室]

10:45-11:15

中馬隼人(中部大学)

「『わけの分からなさ』を示す方法の諸相:『どういうこと』を用いた他者開始修復とその境界例」

劉礫岩(NICT)

「活動の移行を担う行為連鎖の分析」

11:20-11:50

岡田光弘(成城大学)・南保輔(成城大学)・海老田大五朗(新潟青陵大学)・須永将史(小樽商科大学)・河村裕樹(松山大学)

「Aspects論文とSS&J論文と:EM的なCAとは何か?」

⽵⽥琢(⻘⼭学院⼤学/早稲⽥⼤学)

「グループワークにおける個々の学⽣が順番に意⾒を表明する活動において、順番はどのように移行されるのか:敬体の使⽤に注⽬して」

11:50-12:20

総会

12:20-13:20

昼休み

 

 <第二部>テーマセッション

「いま問い直す順番交替組織の諸相:Sacks, Schegloff, & Jefferson (1974)から50年の節目に」

13:20-13:30

趣旨説明(担当世話人:横森大輔)

13:30-14:10

西阪仰(千葉大学)「順番交替組織の使い方」

14:15-14:55

小宮友根(東北学院大学)「順番が先か行為が先か」

14:55-15:05

休憩

15:05-15:45 

坂井田瑠衣(公立はこだて未来大学)「活動に埋め込まれた順番交替」

15:45-16:40

総合討論(司会:黒嶋智美(玉川大学))

16:40 

閉会

自由報告要旨

中馬隼人氏
「『わけの分からなさ』を示す方法の諸相:「『どういうこと』を用いた他者開始修復とその境界例」

本報告は、他者の発話にかんする「わけの分からなさ」を示す方法の諸相につい
て、会話分析の手法を用いて明らかにすることを目的とする。具体的には、「どういうこと」という発話形式を用いて、他者の発話内容について理解できないことや、他者の言動が特定の規範から逸脱していることなどを示す現象に着目する。分析対象のデータは、日本語日常会話コーパス(小磯ほか, 2023)から収集した「どういうこと」を伴う発話 88 例である。これらのケースの大半は、他者開始修復として用いられる(n=46; 52.3%)。他者開始修復として「どういうこと」が用いられる場合、他者の発話の意図やその理由、語りにおける出来事の因果関係にかんする理解のトラブル、あるいは他者の発話における言葉足らず等に起因する理解のトラブルに対処していることがわかった。一方で、他者開始修復とは異なる形で「どういうこと」が用いられるケース(境界例; cf. Schegloff (1997))もあり、その中には、他者の言動が特定の規範から逸脱していることを示すもの(逸脱自体を咎めるもの(n=25; 28.4%)や、笑いの対象として扱うもの(n=14; 15.9%))や、途中段階にある他者の語りの続きを促すもの(n=3; 3.4%)などがあることがわかった。
 
劉礫岩氏 
「活動の移行を担う行為連鎖の分析」

会話において物語り、愚痴、説明などの活動が可能な完了に達した後に、特徴的な行為連鎖がなされることがしばしば観察される。この行為連鎖は、たとえばある参加者が自身の体験したトラブルに関する愚痴について語った後に、自身の体験を教訓に語りの受け手に対して注意喚起を行うといった具合に、先行の活動に対する受け手の関わり方を刷新し、話題対象に対する受け手の直接的な関わりを要する行為から始まる。先行の活動では、参加者たちの関与が非対称的で、話題上の話し手が自身の悩みや経験について独占的に述べるという特徴が見られる。参加者たちが対象の行為連鎖を通じて、先行の活動に関連させつつ、その話題について話す、もしくは聞く立場から「降り」、漸進的に話題からの離脱を始める。こうした開始行為は、先行の活動からの離脱に動機づけられたものとして、その効力が弱められたり、ノンシリアスなものとして扱われたりする。その一方で、こうした行為連鎖の後に接線的にしか繋がっていない話題や、繋がりを全く持たない話題が開始されることが観察される。また、先行活動中の話題上の話し手だけでなく、話題上の受け手もこの行為連鎖を開始することができる。話題上の話し手が連鎖を開始する場合は、それまでの話し手がその話題について独占的に語る立場から離脱するのに対して、受け手が連鎖を開始する場合、話題対象に対するアクセスの欠如による「一方的な受け手」という立場から離脱する。
 
岡田光弘氏・南保輔氏・海老田大五朗氏・須永将史氏・河村裕樹氏
Aspects論文とSS&J論文と:EM的なCAとは何か?

目的:
CA はEMという王冠の宝石と称されることがある(Sharrock & Button 2016)。現在、CAがGarfinkelのEMを引き継いでいる面を強調する主張(Maynard & Heritage 2022)と断絶を強調する主張(Button, Lynch & Sharrock 2022)がある。本報告では、それぞれの論点を明確にして「EM的なCA」(Carlin et.al f.c.)とは何かを考える。
方法:
Sacksには「Aspects of the Sequential Organization of Conversation」(以下、Aspects論文)と題された草稿(1970)があり、この論文、および周辺的な文献とSS&J論文とを比較する。
知見:
SacksによるAspects論文は、
・Turnという概念が用いられていない。
・「一つの会話での話し手は、一人で、それより多くも少なくもない(at least and not more than one)」といった書き方である
・「oriented to」という視点から会話の組織の特徴を分析することを提案し、会話において「ないこと」がわかるという「noticeable」な「不在」という概念を利用している。
結論:
・S S&J論文は、Sacksの著作群のなかで読まれるべきである。この論文は、会話を進めるという問題への解決策をルールの形式で提示したものであり、言語現象を社会的行為として扱うための規範のセットを提供していると読まれるべきではない。これは、会話の研究に限定的なモデルであり、社会学への適用範囲については限定的である。
・SacksのAspects論文とこれに関連する講義は、社会学としての「E M的CA」と呼ぶものの姿をより明確に示している。
 
竹田琢氏
「グループワークにおける個々の学生が順番に意見を表明する活動において、順番はどのように移行するのか:敬体の使用に注目して」

近年、高等教育ではグループワークを用いて学生の振り返りを支援する実践が多数行われている。本研究の目的は、授業内グループワークにおいて、個々の学生が順番に意見を表明するという活動がどのように移行するのかを、会話分析の方法を用いて明らかにすることである。本研究の分析対象は、関東のA短期大学で行われた授業内グループワークである。このグループワークは授業の最終回で実施され、授業の取り組みに関して振り返ることを目的として行われたものである。参与者である学生には、グループワークの前に、個人で授業内容を振り返るためのワークシートの記入が課されていた。グループワークの開始時における教員の指示は、①個々人がワークシートに記入した内容を共有すること、②議論を行うこと、③必要があればワークシートにメモをすることであった。分析の結果、参与者が意見の表明を終えたことを示す際には「思いました」「良かったです」「以上です」などの敬体トークンが頻繁に使用されていることが明らかになった発表ではこうしたトークンがどのように用いられているかに焦点を当て、参与者がいかにして意見表明のターンを終了し、次の参与者のターンまたは次の活動への移行を達成しているのかを検討する。