2020年度 春の研究例会

概要

2021年3月20日(土)に、以下の通り、2020年度EMCA研究会春の研究例会をオンラインで開催します。
午前は自由報告です。報告と報告の間の時間を少し長めにとりました。Zoomを開いておきますので、自由に質疑応答と討論ができるようになっています。
午後はテーマセッション「コロナ禍とEMCA」です。
みなさん、ふるってご参加ください。お待ちしております。

事前の参加登録が必要となります。期日は【3月18日(木)】まで延長します。
以下のURLから申し込みをされますと、当日の情報がお申し込みのアドレスに送信されます。

<ご参加登録先>
https://zoom.us/meeting/register/tJwqceihpzMpHNNzzSNHNWFZYYNeexVZDTHH
参加登録された際の氏名が当日表示されます。


プログラム

9:30 受付開始
10:05-12:05
  • 【第一部】自由報告
    • 10:05-10:35 安井永子氏(名古屋大学)
      「第三者からの呼びかけに対する参与枠組みの調整—親の会話が子どもからの介入を受けるとき—」[→要旨
    • 10:50-11:20 中川敦氏(宇都宮大学)
      「遠距離介護のEメールにおける離れて暮らす子供とケアマネジャーの意思決定過程の解明」[→要旨
    • 11:35-12:05 平本毅氏(京都府立大学)
      「冗長な買い物の合理的な理由」[→要旨
13:30-16:30
  • 【第二部】テーマセッション「コロナ禍とEMCA」
    • 13:30-13:50 趣旨説明と「コロナ禍とEMCA」に関するレビュー
    • 13:50-14:10 吉川侑輝氏(立教大学)
      「遠隔による音楽活動にかかわるエスノメソドロジー—研究文献のレビューとその含意」
    • 14:15-14:35 團康晃氏(大阪経済大学)
      「コロナ禍の趣味実践へのEMCAからのアプローチ」
    • 休憩
    • 14:45-15:05 是永論氏(立教大学)
      「『選択の人類学』としてのエスノメソドロジー:コロナ禍における『行動と意志』」
    • 15:10-15:30 細馬宏通氏(早稲田大学)
      「子供はCovid-19禍の生活をいかに組織化しうるか—BBCインタビューの事例を手がかりに—」
    • 15:35-15:55 ブレイクアウトルームでのディスカッション
    • 休憩
    • 16:05-16:30 総合討論
16:30-16:35 閉会

自由報告概要

安井永子氏「第三者からの呼びかけに対する参与枠組みの調整—親の会話が子どもからの介入を受けるとき—」

本研究では、家族の家庭での相互行為に焦点を当て、居間という共有スペースで行われる両親の会話が、同じく居間に共在する子ども(小学校低学年)からの介入を受けるケースを取り挙げる。特に、子どもが両親の会話連鎖の進行中に、親に対して呼びかけと質問とを産出する場面に注目し、進行中の連鎖と、子どもにより新たに開始された連鎖との二つの競合する連鎖への参与を、親がどのように調整するかについて、相互行為分析により検討する。
分析により、子どもからの呼びかけと質問を受けた親が、発話と身体動作を用いて、進行中の会話における連鎖の収束と、子どもに対する受け手性(recipiency)の提示(Heath,1984)との両方を同時に行うことで、子どもへの応答を開始するための参与枠組みの構築を達成させることが明らかになった。発表では、進行中の両親間の会話と、子どもによって開始された会話とに同時に参与するマルチアクティビティの達成が、いかに進行中の会話の連鎖組織に敏感な形で、マルチモーダルに行われるかを示す。そして、日常の家族間の相互行為において、子どもとのやり取りが、大人同士の相互行為の中でどのように扱われ、位置付けられるのかについても考察する。

中川敦氏 「遠距離介護のEメールにおける離れて暮らす子供とケアマネジャーの意思決定過程の解明」

目的:介護が必要な親と離れて暮らす子供(DC)とケアマネジャー(CM)の間のEメールでは、遠距離介護をめぐる様々な意思決定が行なわれる。そこでDCとCMは何に志向しながらそうした意思決定を行なっているのか。
方法と対象: DCとCMの間で取り交わされた遠距離介護に関する約50通のEメールの分析を、特にEメールの中でなされる行為へのアカウントに注目しながら分析を行なう。
分析:DCは、時間的な幅を伴う親やサービスの個別的な状況に関するアカウントを行なうことが多かった。他方CMは、福祉・医療的ケアに関する一般的な性質をアカウントとするという特徴があった。ただしCMもまた、親の個別性に志向することがある。それは、実際に親と直接会うCMが、親本人の意向をアカウントの中で用いるというものであった。親本人の意向についてのアカウントは、特に、意思決定に一定のジレンマが想定される場合に持ち出されるという特徴が見られた。
結論:時間的な幅を伴う個別性への志向は、離れて暮らしていても、過去から未来へと人生全体をともにする家族であることを、福祉・医療的ケアの一般的な知識を持って、現時点の親の意向に志向するという特徴は専門職者であることと結びつている。DCとCMの間のEメールからは高齢者の過去・現在・未来が一続きのものになる可能性が見いだせる。

平本毅氏 「冗長な買い物の合理的な理由」

コロナ禍の日常において生活者は、「新しい生活様式」を実行することが求められている。この要請により、それ以前から行われてきた日常生活者の実践のうち一定の部分が、望ましくないものとしてみられるようになった(たとえば「集団で買い物に出かけてはいけない」)。さて、エスノメソドロジーを特徴づける表現のひとつに、実践のなかの合理性を記述するプログラムである、というものがある。「新しい生活様式」の要請により望ましくないものとみられるようになった行いのなかにも、なぜ、そのようなことが行われてきたのか、実践を詳細に分析することにより、それなりの合理性を記述できるものが存在するだろう。本発表では、家族がスーパーマーケットで買い物を行う場面を分析する。家族はしばしば一塊となって買い物を行うが、そのなかで、陳列された商品の中から購買候補となる品を見つけて意思決定の俎上に乗せ、購買の判断を仰ぐというチームワークと分業が観察された。家族が集団で買い物を行うという実践のなかに、このような合理性が(部分的にせよ)存在する。こうした実践のなかの合理性の記述は、コロナ禍において、人びとの生活に介入しようとするなんらかの施策やデザインが、どんな帰結をもたらしうるか、あるいはどうすれば効果的にはたらくかといった点の予測や提言に貢献しうると考える。