2018年度 春の研究例会 短信

概要

EMCA研究会2018年度春の研究例会のプログラムをお送りいたします。午前中の自由報告に合わせ、午後は 書評セッションがあります。お誘い合わせの上、奮ってご参加いただければ幸いです。

(大会担当世話人:森本郁代・團 康晃)(最終更新: 2019年3月1日)

日時 2019年3月21日(木祝)10:30-17:30
場所 関西学院大学大阪梅田キャンパス14階1405教室[地図
大会参加費 無料(会員・非会員とも)
事前参加申込 不要

プログラム

10:15 受付開始
10:30-13:05
  • 第1部 自由報告 1405教室 (司会 團 康晃(大阪経済大学))
    • 10:30-11:15 樫村志郎(神戸大学)「Garfinkel は Parsons をいかに読んだか?」 [→要旨
    • 11:20-12:05 太田博三(放送大学)「縦断的調査データによる条件付き相互行為の実証研究」 [→要旨
    • 12:10-12:55 黒嶋智美(玉川大学)・鶴田幸恵(千葉大学)・針間克己(はりまメンタルクリニック)「経験について問うこと――性同一性障害のカウンセリング場面における身体と質問デザイン」 [→要旨
13:05-14:30 昼食
14:30-17:30
17:30 閉会

自由報告概要

1.「Garfinkel は Parsons をいかに読んだか?」樫村志郎(神戸大学法学研究科)

1959年から1960年(一部は1963年執筆)にかけて Harold Garfinkel は、講義にもとづき、Parsons Primer: ‘Ad Hoc’ Uses『パーソンズ入門?アドホックな利用』.と題する未完の原稿を書いていることが知られている。Garfinkelは、この原稿を書物として出版する計画をもっていた。このなかでは、Garfinkelは文献的典拠をほとんど示さずに、 Parsons理論を独特の仕方で解説している。この原稿は、Parsons 理論と Garfinkel のEthnomethodologyの間の関係を探る上で重要な文書であると思われるが、未公刊のためもあり解説が存在していない。本報告では、この原稿の内容の一部の検討結果を報告し、つぎの点をあきらかにしたい。
第1に、Parsons Primer には、Garfinkel によるEthnomethodologyの構想に先行的かつ決定的に関連するつぎのような構想がすでに含まれていたこと?具体的には、(1)規範的社会構造が集合体メンバーにより協調的に産出されるという構想、(2)集合体メンバーによる社会構造の産出が具体的な個人の行為を媒介とするという構想、(3)社会構造の産出が現実的な時間と空間からなる場面の中で行われるという構想、等。
第2に、Parsons Primer で解説されている Parsons理論は、Garfinkelが大きな影響を受けたという(Rawls,2006)The Structure of Social Action『社会的行為の構造』(1937年初版、1949年改訂版)だけではなく、むしろ1960年ごろまでのその発展の結果を含むものである(たとえば、もっとも年代の新しい原稿の部分は、1960年のParsons の論文“Pattern Variables Revisited”「パターン変数再考」へのGarfinkelによる寄与を機縁として書かれたものである)ことから、Garfinkel のEthnomethodologyには、『社会的行為の構造』から1960年代に至るまでのParsons 理論の批判(たとえば、Formal Analytic Sociology 批判)ないし継受(たとえば、membeship や collectivity 等の概念)が含まれていること。
以上の検討に基づき、Garfinkel の Ethnomethodologyが、既存の社会学(ここではParsons社会学)との根源的断絶としてのみならず、その継承発展としての解釈が可能であることを示したい。

2.「縦断的調査データによる条件付き相互行為の実証研究」太田博三(放送大学)

本稿では,OPIの口頭試験(インタビュー)の1回目と2回目,2回目と3回目最大5回目までの発話を事前・事後の事象とみなし,ベイズ論的アプローチを用いて,発話の省略と反復・繰り返しの相互作用を考察したものである.昨今,頻度主義の統計学からベイズ統計が主流となったのと同じく,相互行為も,実は条件付き相互行為で説明できることが少なくない.人は事前の事象を踏まえて,事後の事象が発生するからである.国立国語研究所の提供する日本語学習者会話データベースの縦断調査では,同一人物を最大で5回,口頭試験し追及したものである.本考察のユニークな点は,発話連鎖は一度は完結し,本来的には異なるものだが,事前(1回目)と事後(2回目)とで完結しているにも関わらず,「はいはいはい」や「そうそうそう」など強い同意と供に,くだけた表現になり,礼儀作法の変化が見受けられる点である.
2回目以降でも,同じ事を繰り返して言うのは,前回のことを覚えていないなど,失礼に当たるなどがある.
ここで,非言語のフィラーなどは実際的なものであり,人工知能(AI)やロボットなどの対話システムに適用可能であり,より実践的なものである.

3.「経験について問うこと――性同一性障害のカウンセリング場面における身体と質問デザイン」黒嶋智美(玉川大学)・鶴田幸恵(千葉大学)・針間克己(はりまメンタルクリニック)

この発表では、性同一性障害のカウンセリングにおいて、精神科医が次の治療段階(性ホルモン投与や性別適合手術)に進むためのオピニオン(意見書)のための聞き取りを行っている場面を分析する.この活動において,精神科医は,臨床心理士による患者の「自分史をやる活動」(鶴田2010)で得たカルテの情報にもとづいて、身体,視線,音韻,発話など様々な資源を用いて質問をデザインしている.まず,カルテを読みながらその内容について確認を要する際は,画面上のカルテに対する志向性を身体的に示すことで質問が組み立てられ,臨床心理士の聞き取った内容を自分も今ここで受け止めたことをデモンストレートする.いっぽう,カルテに記載するべき情報について問う場合は,カルテから視線を外し,身体的志向性を患者に向けることによって質問がデザインされる.これらの実践によって,精神科医が当該の活動において,そのまま受け止めるべきことがらと,新たな情報を要するべきことがらを区別していることが患者に対して示されている.すなわち,前者のタイプの質問は
記録のために行われるいっぽう,後者のタイプの質問は特定化の必要な有標なことがらとして扱うためになされる.特に本発表では,有標なことがらについての質問において,「ふつう」という言い方が、精神科医と患者の間でどのような異なる理解にもとづいて用いられているのかを質問応答連鎖の分析によって示し,性同一性障害のカウンセリング場面の理解に資するかを議論する.

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 森本郁代
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人)まで
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