概要
2008年度のEMCA研究会大会は、9/4(木)に関西学院大学梅田 キャンパスにて開催される予定です。言語学者である定延利之先生(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)による招待講演をはじめ,テーマセッション,研究報告など,「日々の生活の中のことばとその周辺」について多角的に考えるプログラムになっております。ぜひとも多くのみなさんに議論に参加していただければと思う次第です。(企画担当世話人:細馬宏通・鈴木佳奈)
開催日 | 2008年9月4日木曜日 |
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会場 | 関西学院大学梅田キャンパス 1405教室(14階) |
参加費 | 会員* 1000円/一般 1500円 |
*入会申込については →入会のご案内 をご参照ください。
プログラム
10:30 | 受付開始 |
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11:00-13:00 |
招待講演 「『た』の発話をおこなう権利と義務」 講演者 定延利之氏(神戸大学大学院国際文化学研究科) 司 会 細馬宏通(滋賀県立大学人間文化学部) |
13:00-14:00 | 昼食休憩/世話人会(1404教室) |
14:00-14:30 | 総会 |
14:30-16:00 |
テーマセッション 「『敵意のある話し方』とは:会話の中の『感情』の発露とその読み取り」 話題提供 鈴木佳奈((株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所) |
16:10-17:10 |
研究報告I 「行為指示発話に対する応答とその応答」 報告者 牧野由紀子(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程) |
17:15-18:15 |
研究報告II 報告者 吉村雅樹(京都工芸繊維大学 工芸科学研究科博士後期課程) |
18:30 | 撤収 |
報告要旨
招待講演
定延利之氏(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)「『た』の発話をおこなう権利と義務」
要旨:この発表は、「権利」と「義務」という観点から、コミュニケーション研究やそれに近い文法研究と、「伝統的な」文法研究との接点をさぐろうとする試みの一つである。中心的に扱われるのは現代日本語共通語の、主節末尾に語尾「た」が現れている文である。コミュニケーションの中でこの文を発することには、さまざまな権利と義務が伴う。この発表ではそれらの観察が、「た」に関するこれまでの文法研究の争点(いわゆるムードの「た」の意味に関するムード説 vs. 過去説の対立)の解決に役立つことを示す。得られる結論は過去説を支持するものであり、「「た」の文に伴う権利と義務を説明するには、この文を、相手の前でやってみせる過去時点の体験や知識に関わる心身行動ととらえる考えが有効だ」というものである。
テーマセッション
話題提供 鈴木佳奈((株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所)「『敵意のある話し方』とは:会話の中の『感情』の発露とその読み取り」
要旨:会話分析のこれまでの知見によって会話の中のさまざまな秩序や仕掛けが明らかになってきているが,同じ方法論を援用することで,会話の中に発露される(と考えられている)「感情」を読み解くことはできるだろうか。
本セッションでは,あるラジオの人生相談で,相談者が「逆ギレ」したやりとりをデータとして提示する。番組のパーソナリティに対する相談者の「感情」がどのように発露されていくのか,また逆に,当のパーソナリティが相談者の「感情」をどのように読み取り,ラベル付けをしているのか。いわゆるデータセッションの形式で進める中で,会話分析の手法で会話の中の感情を扱う可能性を探る。
研究報告
牧野由紀子(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)「行為指示発話に対する応答とその応答」
要旨: 本発表は、「対称的関係における行為指示の諸相」として準備中の博士論文の一環であり、使用するデータは、大阪のニュータウン自治会で、新自治会館竣工式の準備作業における会長とメンバーの会話を収録したものである。通常、「命令」はたとえば上司から部下へなど上から下へなされるものとされるが、ニュータウンの自治会活動のような、いわば対称的な関係においても会長による行為指示がしばしば行われており、命令形の使用も見られる。
本発表は、自治会長の行為指示発話に対してメンバーがどのように応答し、それに対して会長がどのような応答を返しているか、に注目するものである。聞き手の応答に注目することで、メンバーと会長がお互いの関係性をどのようなものとして作り上げようとしているか、その様相に迫れるのではないか、と考える。本発表ではいくつかの事例からその分析を試みる。
吉村雅樹(京都工芸繊維大学 工芸科 学研究科博士後期課程)「介護ワークにおける相互行為ー認知症高齢者グループホームの或る咀嚼指導場面からー」
要旨:咀嚼指導においては、介護者は期待するような咀嚼行為を利用者が実現しない困難に直面する。期待するような咀嚼行為を介護者と利用者は共同して達成することができない。特に、介護現場では利用者の特徴的な応答によって違背状況が頻繁にもたらされる。介護ワークを頻発する違背状況に対する介護者の方策や挑戦として考察を試みる。介護ワークを観察する第三者と実践する当事者が共有できる評価視点を見いだす一助としたい。