2023年度エスノメソドロジー・会話分析研究会入門セミナー:分析ワークショップ

エスノメソドロジー・会話分析研究会入門セミナー:分析ワークショップの開催についてお知らせいたします。プログラムの詳細をご確認のうえ、奮ってご参加ください。今回のセミナーは、EMCAの分析に関心がありながら、実際にどのように分析をしたらよいかわからない、分析について学ぶ機会がないという方に向けて、講師によるインストラクションを受けつつワークショップ形式で実際にEMCAの分析に触れていただく内容になっております。

参加希望者は以下プログラムにございます、リンク先のフォームより申込をお願いいたします。セッションごとの申し込みになりますので、受講されるセッションを選んでそれぞれのリンクよりお申し込みください。先着順ですので、お早めの申込を推奨いたします。

【日時】2023年11月26日(日)10:30~17:45(予定)
【実施形態】対面形式
【会場】キャンパスプラザ京都(https://www.consortium.or.jp/about-cp-kyoto/access
【参加費】下記の通り。いずれも1講座あたりの参加費になります。
・EMCA研究会会員(一般):1000円
・EMCA研究会会員(学生・院生):500円
・EMCA研究会非会員(一般):2000円
・EMCA研究会非会員(学生・院生):1000円
【定員】20名(セミナーごと)
【注意事項】
・お支払いはPeatixを通しての事前支払いのみとなります。当日の現金支払いは受け付けておりませんので、あらかじめお申し込み・お支払いをお願いいたします。
・資料の準備の都合上、11月22日(水)24時までで申込みを締め切らせていただきます。
・申込み期間内でも、定員に達した時点で、予告なく申込みを終了させていただくことがあります。参加をお考えの方は、お早めにお申し込みください。

【プログラム】
(1)10:30~12:30「順番交替の組織」(詳細
講師:吉川侑輝(立教大学)・三部光太郎(明治学院大学ほか)
申込ページ: https://emcaworkshop2023-01.peatix.com/

(2)13:30~15:30「行為連鎖の組織」(詳細) 
講師:黒嶋智美(玉川大学)
申込ページ: https://emcaworkshop2023-02.peatix.com/

(3)15:45~17:45「成員カテゴリー化装置」(詳細) 
講師: 鈴木雅博 (明治大学)
申込ページ: https://emcaworkshop2023-03.peatix.com/

【セミナー詳細】

「順番交替の組織」 
講師: 吉川侑輝(立教大学)・三部光太郎(明治学院大学ほか)

このセミナーは、初学者のみなさんが、順番交替という観点からEMCA的なデータ分析に体験的に入門することを目的とします。会話における順番交替の組織は、日常的な会話(おしゃべり)をはじめとした、人びとが共に話す(ことを通じて成し遂げられる)日常活動の基盤をなしているという意味で、EMCA的な日常活動の分析を行う際には広範な重要性を持っています。セミナーは前後半の2つの部門からなる予定です。まず前半では「なぜ順番交替(が重要)か?」を簡単に説明したうえで、順番割り当ての技法、順番交替のルール群、順番における「投射」と「移行適切場」といった基本概念や、会話のトランスクリプトの読み方を導入します。後半では、講師が用意した実際の会話データを題材に、受講者のみなさんに順番交替のルールが適用されている様子を観察してもらうワークショップを予定しています。それを通じて、日常活動のなかで構造的に用意される可能性を参加者たちが実現するとはどのようなことかという分析の基本的なポイントを、体験的に理解できるようにしたいと考えています。自分が持っているデータの分析を視野に入れている方はもちろん、このセミナーでは、たとえばEMCAの本を読んでも(とくに分析部分がとっつきづらくて)今ひとつ理解が進まないという方の参加も歓迎します。

【講師代表業績】
吉川侑輝. (2021). 「歌いたい曲がない!」: カラオケにおいてトラブルを伝えること. In 秋谷直矩, 團康晃 & 松井広志 (Eds.), 楽しみの技法: 趣味実践の社会学 (pp. 149–169). ナカニシヤ出版.
吉川侑輝. (2022). 「個別的なもの」の日常的編成: 楽器をめぐる「迷い」と「決断」の自己エスノグラフィー. 文化人類学, 87(3), 461–479.
吉川侑輝. (2023). 音楽の方法誌: 練習場面のエスノメソドロジー. 晃洋書房.

三部光太郎(2020)「「製品の身分」と作業状況の可視化 ―空間編成の方法と共同作業への参加可能性」社会学評論 71(3): 466-481.
三部光太郎(2017)「発話デザインに敏感な語りの継続促進―キャリア形成支援カウンセリングにおける情報収集局面の分析から」『社会的なるものの基盤としての相互行為:千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書』 314: 50-62.
三部光太郎(2015)『キャリア・カウンセリングの会話分析』明治学院大学大学院社会学研究科(修士学位論文).

「行為連鎖の組織」
講師: 黒嶋智美(玉川大学)

本セミナーでは,相互行為を分析し始める際に足がかりとなる,「行為連鎖組織」について,じっさいの会話データをもとに演習形式で考えてみたいと思います.会話の中で,私たちは文脈を参照する形で様々な行為を達成し,またそのことによって新たに文脈を形成しています.つまり,一つ一つの発話順番は,独立に存在するのではなく,積み木のように「連なり」を編成しているといえます.そうした相互行為における「連なり」の構造について,その形式的特徴に着目しながら,じっさいに分析を行うことで,会話データの「見方」を実践的に学んでいきます.演習を通して,会話データを収集してみたが,どのように分析に着手したらいいのかわからない,参与者の理解にもとづく行為の記述の仕方がわからない,などの疑問に答えていきたいと思います.

【講師代表業績】
Kuroshima, S. (2023). When a request turn is segmented: Managing the deontic authority via early compliance. Discourse Studies, 25(1), 114–136. https://doi.org/10.1177/14614456221136975
黒嶋智美.(2023). 「第3章 合意形成における経験,知識,権利─住民座談会の事例をもとにして」『実践の論理を描く 相互行為のなかの知識・身体・こころ』 勁草書房,pp. 59-76.
黒嶋智美 (2023). 「第14章 行為連鎖組織」『エスノメソドロジー・会話分析ハンドブック』新曜社, pp. 173-188.

「成員カテゴリー化装置」
講師: 鈴木雅博(明治大学)

成員カテゴリー化装置(MCD)とは,私たちが自他の行為をある特定の成員性と関連づけて理解するしくみのことです。例えば,教室における次のやりとりを見てみましょう。
01 A:そのスカート,ちょっと短いんじゃない?
02 B:すいません。
私たちは本人に真意を訊いてみなくても,これを「教師が注意し,生徒が謝罪した」場面として理解できます。しかし,字句だけを取り出してみると,01は事実の確認に過ぎず,02は「呼びかけ/感謝」としても使えます。にも拘わらず,私たちはMCDの作動によって01を「注意」,02を「謝罪」と理解しています。他方で,Bが「えーっ,いやらしい。なに見てんの?」と返したら,それは「注意」への「拒絶」に聞こえるでしょう。そして,この「拒絶」は01を(Aの真意とは関係なく)遡及的に「セクハラ」と同定し,A・B間の成員カテゴリーを{教師・生徒}から{男・女}へと転換することで試みられています。
この講義では,上記のようなMCDのはたらきについて解説します。受講者の皆様には具体的な場面の分析に取り組むことで,MCDに着目した研究の可能性を感じていただきたいと思います。

【講師代表業績】
鈴木雅博(2022)『学校組織の解剖学 : 実践のなかの制度と文化』勁草書房.
鈴木雅博(2021)「学校研究における組織エスノグラフィーの現在」『社会と調査』26: 28-35.
鈴木雅博(2019)「下校時刻は何の問題として語られたか : 時間外の仕事に規範を結びつけて解釈すること」『教育社会学研究』105: 27-47.