2013年度 秋の研究大会

概要

EMCA研究会2013年度研究大会のプログラムをお届けいたします。多くのみなさまのご参集をお待ちしております。

(大会担当世話人:浦野茂・川島理恵・串田秀也)

日程 12月21日(土)11:00-17:15
場所 立命館大学大阪梅田キャンパス5階多目的室[アクセスマップ]
大会参加費 無料(会員・非会員とも)

プログラム

10:30 受付開始
11:00-12:30 第一部:自由報告

11:00-11:35 「障害者を雇用する服飾製造業社のエスノグラフィ:障害者の雇用を可能にするデザイン」海老田大五朗(新潟青陵大学看護福祉心理学部)[→概要
11:40-12:15 「ファーストフード店での注文におけるメニュー表の使用」北野清晃(京都大学)・山内裕(京都大学)・平本毅(京都大学)[→概要
12:15-13:30 昼食&世話人会
13:30-14:00 総会
14:00-17:00 第二部:テーマセッション「若手研究者が語るエスノメソドロジー・会話分析研究の未来:現場還元の可能性」

14:00-14:05 主旨説明 川島理恵(関西外国語大学)
14:05-14:30 「遠隔操作ロボットを使ったコミュニケーションに関する研究報告」福島三穂子(埼玉大学)[→概要
14:30-14:55 「現場の実践者と研究者間で分析的知見を活用するための試み:科学コミュニケーション活動の分析をもとに」城綾実(国立情報学研究所)・坊農真弓(国立情報学研究所)・高梨克也(京都大学)[→概要
14:55-15:20 「会話分析のインプリケーションの可能性:救急医療の事例をもとに」黒嶋智美(明治学院大学)[→概要
15:20-15:45 「エスノメソドロジー・会話分析研究者と調査対象者との協働の可能性:ビジネスプランコンテスト調査を事例に」秋谷直矩(京都大学物質-細胞統合システム拠点科学コミュニケーショングループ特定研究員)[→概要
15:45-16:05 休憩(20分)
16:05-16:30 「サービスエンカウンターの現場と会話分析」平本毅(京都大学)・山内裕(京都大学)・泉博子(KCCSマネジメントコンサルティング株式会社)[→概要
16:30-16:45 コメント 田村直樹(関西外国語大学)
16:45-17:15 全体討論
17:15 閉会

発表概要

「障害者を雇用する服飾製造業社のエスノグラフィ:障害者の雇用を可能にするデザイン」海老田大五朗(新潟青陵大学看護福祉心理学部)

  1. 目的

    本研究の目的は、障害者の一般就労の促進や定着のために、雇用者側が障害者の特性や抱える困難に配慮する「労働のデザイン」に焦点を定めて分析し、
    障害者を生産者として積極的に位置づけるための創意工夫を記述することである。

  2. 方法

    障害者を雇用する服飾製造業者に直接足を運び、そこで観察などのフィールドワーク、雇用者・コーディネーター・事務担当などへのインタビュー調査を実施する。

  3. 結論

    調査協力いただいた企業では、採用から定着まで、障害者の困難に合わせた様々な創意工夫がなされていた。障害者の採用はどのように決定されているのか。まず、募集の仕方が特徴的であった。要は「公募しない」のである。採否の鍵を握るのは実習の評価であった。とりわけ配属された部署のリーダーの評価が重視され、その評価は採用後の責任と結び付けられていることが明らかになった。障害者の労働はどのようにデザインされているのか。ある作業(たとえばミシンで布を縫う作業など)が困難な人でも、いくつかの創意工夫を施すことでその作業が可能になることが明らかになった。対人関係が苦手である人に対する指示・命令系統は、徹底的に一本化することで、障害者が混乱をきたさないためのデザインがなされていた。

「ファーストフード店での注文におけるメニュー表の使用」北野清晃(京都大学)・山内裕(京都大学)・平本毅(京都大学)

サービスエンカウンター(サービス提供者と消費者の相互行為),とくにファーストフード店のような客の回転率を高めることにより売り上げを伸ばす業種のそれにおいては,店員と客とが役割に従って振る舞い,サービスのやり取りを標準化することによって互いの行為の予測可能性を高めて効率化に資する必要があることが指摘されてきた(Solomon, Surprenant, Czepiel & Gutman, 1985).だが,客がどういう客か(店のシステムに慣れている客か否か)を尋ねる明確なやり取りが体系的に用意されている場(たとえば店員が「当店のご利用は初めてでしょうか」と尋ねる店)と異なり,ファーストフード店では客がその場の役割に従って振る舞える人物かどうかを判断する機会が,少なくともはっきりとは与えられていない.本発表では,客がどういう客かを呈示する機会としてメニュー表の利用に着目し,ハンバーガー屋のサービスエンカウンターの会話分析を行う.メニュー表はただの情報媒体ではなく,少なくとも注文にかんしてその店でどう振る舞うべきかを記した文化的なオブジェクトである.分析の結果,客がこのことに志向してメニュー表を使って自己呈示を行い,これがその後の相互行為の展開を決める場合があることが示される。

「遠隔操作ロボットを使ったコミュニケーションに関する研究報告」福島三穂子(埼玉大学)

本発表では、埼玉大学の山崎研究室を中心とした、ハワイと福島を繋ぐ社会的絆プロジェクトにおける、2012年8月から2013年10月までに行なわれたいくつかの調査実験の報告を行なう。1つには震災後ハワイに招かれ数ヶ月暮らした家族と彼らのホストファミリーを繋ぐ実験があり、もう1つには、ホノルルの学校と福島の学校を繋ぐ実験がある。これは社会学者と工学者が共同で行なう、人間とロボットのコミュニケーション研究の一環でもあり、肩乗せ遠隔操作アバターロボットを使うことで可能になる、日本語と英語を使ってのバーチャルコミュニケーションを分析の対照としている。人間とロボット間のコミュニケーションのメカニズムを解明すると共に、その分析をロボット開発に還元することを目的の1つとしている。また、アバターロボットを自分の分身として、遠隔にいる人間の肩に乗せることで、まるで自分があちらにいるような感覚が味わえ、国境や文化を超えた遠隔コミュニケーションの新たな方法をユーザーに提供しているが、実験ではその限界も見えてきている。実用化というレベルでのテクノロジー開発者への、またユーザーへの還元をどう研究の中でとらえるべきなのか、考えていきたい。

「現場の実践者と研究者間で分析的知見を活用するための試み:科学コミュニケーション活動の分析をもとに」城綾実(国立情報学研究所)・坊農真弓(国立情報学研究所)・高梨克也(京都大学)

本発表では,日本科学未来館(未来館)の科学コミュニケーター(SC)の対話スキルの解明および向上を目的としたSCと研究者の共同研究(代表:坊農真弓「インタラクション理解プロジェクト」)の一端を報告する.SCの重要な仕事のひとつである展示フロアにおける来館者との対話は,展示物の解説だけでなく,来館者自身が科学技術の現状および未来について考え,新たな気づきを得ることを目的としている.他方,来館者側の来館理由は多様であるが,SCが目的とする「対話」のために未来館の展示フロアを訪れる来館者は少数といえる.本発表ではまず,豊穣の海と呼ばれる未来の科学技術にかんする具体的なアイディアを書く場において,来館者にアイディアを書いてもらうためのSCの実践について分析した結果を報告する.次に,相互行為分析の知見が現場のSCにどのように捉えられるのかについて,研究者からSCへ報告する様子を紹介する.分析例と分析の報告例を示すことによって,現場の実践者と研究者双方にとって有益な知見を得るための方法および有効な知見の提示・共有方法を探るための端緒を開きたい.

「会話分析のインプリケーションの可能性:救急医療の事例をもとに」黒嶋智美(明治学院大学)

本発表では、救急医療における初期診療場面と、シミュレーション医学教育場面の会話分析で得られた知見を、医学者、工学者を含む共同研究者らだけでなく、現場の実践者に還元していく取り組みについて報告する。会話分析が明らかにするのは、具体的な相互行為の展開において何が行なわれているかであり、インプリケーションを得ることは、現場知に対して非専門家である分析者にとっては、そもそも容易ではない。にもかかわらず、そういった還元はしばしば求められる。報告者は、医療系学会での発表、医学者への分析結果報告、初期研修医との振り返りセッションなどを通して、そういった期待に応える取り組みを行なってきている。本発表では、分析で得られた知見の提示と、それに対する医学者や実践者の反応・意見にはどういったものがあったのか、またそうした取り組みの中で見えてきた、求められる知識にはどういったものがあるのかについて、具体的事例を交えながら議論する。

「エスノメソドロジー・会話分析研究者と調査対象者との協働の可能性:ビジネスプランコンテスト調査を事例に」秋谷直矩(京都大学物質-細胞統合システム拠点科学コミュニケーショングループ特定研究員)

本報告は、ビジネスプランコンテストを運営する起業コンサルタントの業務調査と、その成果に基づいた調査先との共同実践についての事例報告である。調査は2010・2011年に実施された。調査終了後は、複数回の「成果報告」および「データセッション」を、調査対象者を含む関係者間で実施した。それを経て現在は、報告者らが提供する「ビデオデータを用いたやり取りの分析及びそれ用いた実践の振り返り技法」と調査対象者らの専門的実践である「ファシリテーション、ワークショップのデザイン・実践」を組み合わせた共同研究(代表:高梨克也「当事者を交えたデータセッションを支援するビデオ再生分析ツールを利用したコミュニケーション実践知の解明」(平成25年度国立情報学研究所共同研究))が展開中である。今回は、「調査対象者」から「共同研究者」へとゆるやかに関係性が移行していくなかで、報告者らから提供した分析的知見がどのような働きをしたのかを振り返ってみたい。それを踏まえて、エスノメソドロジー・会話分析的知見の現場還元の可能性について検討したい。

「サービスエンカウンターの現場と会話分析」平本毅(京都大学)・山内裕(京都大学)・泉博子(KCCSマネジメントコンサルティング株式会社)

この発表では著者を含むグループが行ったいくつかのサービスエンカウンター(サービス提供者と消費者の相互行為)現場の調査の概要と,その結果得られた知見の現場への還元について報告する.近年,経営学や人間工学,心理学などの領域横断的な試みとして,サービスのあり方を固有の研究領域と捉えるサービス学serviceologyが脚光を浴びるようになっている.このサービス学においては,サービスが生産と同時に消費される等の特性をもつがゆえに,サービスエンカウンターの性質を調べることが課題になる.エンカウンターencounterという語は,サービスのやり取りが相互行為の場(Goffman,1963)で行われることをあらわしている.だがこのサービスエンカウンターの相互行為としての性質を調べる方法論は,いまだ確立されていない.そこで著者を含むグループは,会話分析を使って接客場面を調べる試みをいくつか行い,そこで得られた知見を現場に還元している.本発表では,この試みの事例をいくつか紹介することを通じて,会話分析のサービスの現場への応用可能性について論じたいと考えている.

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 串田秀也
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先:エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局(EMCA研事務局)