概要
以下の要領で、エスノメソドロジー・会話分析研究会2011年秋の研究大会を開催いたします。午前は自由報告3件、そして午後にはガーフィンケル追悼シンポジウムを予定しています。2011年4月末日,エスノメソドロジーの創始者であるハロルド・ガーフィンケルの訃報が伝えられました。主著『エスノメソドロジー研究』が出版されてから,すでに40年を超す年月がたち,エスノメソドロジー・会話分析も一つの研究分野として確立してきましたが,他方で,ガーフィンケルの議論の射程については,いまだ十分には明らかにされていないように思われます。ガーフィンケル自身は,みずからの思考に影響を与えた現象学のテクストを,エスノメソドロジー研究のために「誤読」することを勧めていたことが知られています。それでは,私たちは,ガーフィンケルのテクストを,どのように生産的に読み解いていくことができるでしょうか。本シンポジウムでは,ガーフィンケルと知的交流のあった山田富秋氏をお迎えし,ガーフィンケルの議論の広がりと可能性についてお話いただくことで,この偉大な先人への追悼の意を表する機会とさせていただきたく思います。併せてIIEMCAやUCLAで相次いで実現されている追悼のプログラムのご紹介もいたします。エスノメソドロジーに関心を持たれる多くのみなさまに,当日の議論にご参加いただければ幸いです。
(担当世話人:前田 泰樹、池谷 のぞみ、南 保輔)
日程 | 2011年10月16日(日) |
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場所 | 成城大学3号館 大会議室 |
大会参加費 | 無料(会員・非会員とも) |
プログラム
司会:前田 泰樹(午前)、池谷 のぞみ(午後)
11:00-11:10 | 開会のことば | ||||||||||
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11:10-11:55 | 自由報告1 團 康晃 「生徒間の「いじり」の分析:グループインタビューを題材に」[→要旨] | ||||||||||
11:55-12:40 | 自由報告2 海老田 大五朗 「身体を固定する:柔道整復師による保存療法について」[→要旨] | ||||||||||
12:40-13:40 | 昼休み(世話人会) | ||||||||||
13:40-14:10 | 総会(3号館大会議室) | ||||||||||
14:15-15:00 | 自由報告3 原田 幸一 「同じ順番内での誤り訂正について」 [→要旨] | ||||||||||
15:10-17:10 | ガーフィンケル追悼シンポジウム
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17:10-17:20 | 閉会のことば | ||||||||||
17:30-19:30 | 懇親会(成城大学本部棟地下学生喫茶にて) ※懇親会参加費 一般 3,000円 院生(学生) 2,000円 |
自由報告:〔報告要旨〕
自由報告1:團 康晃「生徒間の「いじり」の分析:グループインタビューを題材に」
報告要旨
本報告は、地方公立中学校におけるグループインタビューの音声データとエスノグラフィックなデータを題材に、「いじり」という相互行為を分析的に解明する。
休み時間や放課後といった生徒たちが比較的自由に活動できる時間に参与観察していると、彼/彼女らが「グループ」を成しているように見えることがある。しかし、その「グループ」に見える活動を具に観察すると、その「グループ」の境界は明確で客観的なものではなく、むしろ、活動の度に達成される共成員性によるものだったといえる。そしてその活動には、包摂や排除をめぐるある種の構造が確認できた。そして、その構造は、教師が調査者に「いじり」として報告するような、ある種のトラブルであった。
その構造は、グループインタビューにおいても見られた。それは、次のようなものである。(1)グループインタビューにおいて、調査者が行う質問は、グループ成員によって、再配分され、その配分方法には、明確な構造が見られた。(2)この構造において、特定の成員が最終的な回答を期待されるものとして位置づけられていた。(3)この回答の「オチ」を語ることを期待されるものは、時に成員資格の不適切さを他のグループ成員から言い渡され(彼らとは異なるグループのカテゴリーを執行され)、グループの境界に置かれていた。
自由報告2:海老田 大五朗「身体を固定する~柔道整復師による保存療法について~」
報告要旨
柔道整復師は、患者の症状によっては身体の一部を固定することがある。この施術は一般に保存療法と呼ばれる。『柔道整復学 理論編』(2003:92)によれば、保存療法(固定法)は、「一定期間患部をある肢位に保持して、運動を制限することによる外傷の治癒」、「損傷組織の良好な治癒環境の確保」、「変形・再転位の防止や矯正」を目的としている。
本研究の目的は、柔道整復師が患者の身体を固定するときの、その方法を明らかにすることである。分析対象として焦点化したい問題は主に二つある。一つは、柔道整復師が患者の身体を固定するときの、「固定材料の選択」についてである。固定材料は主にギプスや副木などの硬性材料と、包帯やテープ(絆創膏)などの軟性材料の二つに大別される。どの材料を選択するかは、患者の症状によって異なるのだが、その固定材料の選択の仕方について考察したい。二つ目は、実際に柔道整復師が患者の身体の一部を固定するときの、その「固定の仕方」である。たとえば柔道整復師は患者の身体に包帯を巻くことがあるが、ただ巻くわけではない。「強く(弱く)巻きすぎてはいないか」、「すぐにほどけないようになっているか」、「適切な肢位で固定されているか」といったように、そこには適切とされる包帯の巻き方のための規準がある。さらにいえば、このような適切とされる包帯の巻き方というものは、柔道整復師と患者との相互行為によって達成される。本研究では、実際に柔道整復師が患者へ包帯を巻く場面を撮影したデータやインタビューによって得られた知見を検討することで、柔道整復師が患者の身体を固定する方法を明らかにする。
自由報告3原田 幸一「同じ順番内での誤り訂正について」
報告要旨
本研究は、誤りと同じ順番内での誤り訂正(Same-turn Self-correction、以下STSC)に焦点を当て、その実態を調査し分析することを目的とする。特に訂正開始部にいかなる表現が使用されるのかに注目し、表現の使い分けなどの秩序が見られることを主張する。使用するデータは、大学生の日常会話データ約11時間半である。以下、調査・分析の結果、明らかになったことを述べる。
訂正開始の位置に注目すると、誤りの語を産出途中で中断して訂正を開始する場合、語の中断だけで訂正開始の標識になり、一方、誤りの語を完全に産出した後に訂正を開始する場合、「ていうか」や「あ」、「じゃない」、「違う」などの表現が使用されることが分かった。
訂正開始部に使用される表現の用法に注目すると [1]「あ」と「じゃない」と「違う」は互いに重ねて使用されるが、「ていうか」は他の三つと重ねて使用されることがないこと、[2] 重ねて使用される場合、「あ、じゃない」かまたは「あ、違う」が典型であること、[3] 誤りの語が活用語の場合、「あ」と「違う」、「じゃない」が使用されることはなく、「ていうか」が使用されることが分かった。
非秩序的とされてきた誤り訂正にも一定の秩序が見られ、それは相互行為的に構成される秩序であることも主張したい。
ガーフィンケル追悼シンポジウム:〔報告要旨〕
山田富秋「ガーフィンケルとハイデッガー」
報告要旨
ガーフィンケルの Ethnomethodology’s Program における道具性の議論を踏まえながら、それをハイデッガーの『存在と時間』の道具的存在の議論に照らすと、 エスノメソドロジーは「技術獲得の現象学」として位置づけられる。それはウィトゲンシュタイン=ハイデッガー的な「通常の行為の仕方によって端的に可能になる理解可能性」(ドレイファス『世界内存在』 産業図書 2000, 24頁)である。
ハイデッガーは道具的存在のもとでの配慮(Besorgen)と世界内部的に出会われるような他者の共現存在(人間)と共にある時の顧慮(Fursorge)とを区別していたが、それは気遣い(Sorge, caring)という概念において統一される。この発表では、端的に可能になる理解可能性の次元の他に、気遣いによって可能になる理解可能性の次元を考察したい。
お問い合わせ
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