山崎敬一、2004、実践エスノメソドロジー入門

目次と書誌

  • 2004年5月 発行
  • 定価 2940円(税込)
  • A5判/278頁
  • ISBN 4-641-07682-0
  • 有斐閣 |

エスノメソドロジーは,人間の相互行為の研究法として,社会学のみならず情報科学や言語学など様々な分野で注目されている。本書は,その入門から実際の調査・研究の展開まで包括的に扱う。付録CD-ROMでトランスクリプトの書き方や分析法を実践的に学べるよう工夫。

第1部 基礎編
  • 1.エスノメソドロジーの発見=浜日出夫
  • 2.エスノメソドロジーの方法(1)=山崎敬一
  • 3.エスノメソドロジーの方法(2)=水川喜文・池谷のぞみ
第2部 実践編
  • 4.エスノメソドロジーとフィールドワーク=池谷
  • 5.調査の準備とビデオデータの分析法:博物館調査を例として=山崎晶子・菅靖子・葛岡英明
  • 6.会話分析の方法と会話データの記述法=田中博子
  • 7.調査実習としてのエスノメソドロジー=樫田美雄
第3部 展開編
  • テーマセッション(1)制度と会話:エスノメソドロジー研究による会話分析=岡田光弘
    • 8.電話の会話分析:日本語の電話の開始=西阪仰
    • 9.子どもの分析:大人が子どもを理解するということ=山田富秋
    • 10.法現象の分析=樫村志郎
  • テーマセッション(2)実践の中の視覚:身体的行為と見ることの分析=浦野茂
    • 11.メディア分析=是永論
    • 12.博物館研究=山崎・菅
    • 13.病院組織のフィールドワーク=池谷・岡田・藤守義光
  • テーマセッション(3)認知科学・情報科学とエスノメソドロジー=水川
    • 14.学校・教育工学・CSCL:コンピュータを通した協同の学び=加藤浩・鈴木栄幸
    • 15.コンピュータ支援の協同作業研究=葛岡・山崎晶子・山崎敬一

編者に聞く ── 一問一答

本書を書こうと思った動機やきっかけがあれば教えてください。

この本は、3つのモチーフをもっています。

  1. オーソドックスなエスノメソドロジーと会話分析の考え方を示すこと。
  2. フィールドワークやビデオ分析や会話分析の実践的な入門となること。
  3. 情報工学にまで広がった、エスノメソドロジー、会話分析的な研究の多様性を示すこと。

1については、今までのエスノメソドロジーの日本語で書かれたテキストが、現在のエスノメソドロジー・会話分析研究の標準からみて、あまりにオーソドックスでないという不満を持っていました。第1部はオーソドックスな紹介として成功していると思います。2については田中先生の会話分析のトランスクリプトの書き方(音声データを含めて)の章を入れたのが、非常に大きいと思います。3については、現在のエスノメソドロジー・会話分析にとって、社会学と並んで情報工学の分野の研究は非常に重要だと思っています。もう一つの重要な分野、言語学的の問題も少し取り上げたかったのですが、それは会話分析入門というテキストで、誰かに行っていただければと思っています。

構想・執筆期間はどれくらいですか? 1年くらいだと思います。
これまで出された著書(あるいは論文)との関係を教えてください。

『社会理論としてのエスノメソドロジー』を執筆中でした。これ以降、2冊同時に出版するという計画をいだき、『モバイルコミュニケーション』『ジェンダーと社会理論』 の2つの編著をだしました。

執筆中のエピソード(執筆に苦労した箇所・楽しかった出来事・思いがけない経験など、どんなことでも可)があれば教えてください。

個人的には2冊の本を同時に出すのは大変でした。ただ出版は相乗効果もあるので、時期を重ねることも重要だと思います。CDをつけて、会話やビデオデータを入れたことは、非常によかったと思っています。自分が授業で使うときも重宝しています。値段が少し高くなってしまったという問題もありますが、CDを含めて、買って損はないと思います。特に、エスノメソドロジーを学びたい学生の方はぜひ自分で買ってください。

執筆において特に影響を受けていると思う研究者(あるいは著作)は? 著者の皆さんに、編者として大変感謝しています。
社会学的(EMCA的でも可)にみて、本書の「売り」はなんだと思いますか?

オーソドックスなエスノメソドロジー・会話分析の解説です。もう一つは、会話分析が自習できるということです。エスノメソドロジー・会話分析の本で、いま1冊だけ買うのだったらこの本だと思います。

情報工学や言語学などの分野の研究者に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は?

情報工学者や言語学者にとっても、エスノメソドロジー・会話分析のもっともよい入門書になっていると思います。エスノメソドロジー・会話分析の本で、いま1冊だけ買うのだったらこの本だと思います。

EMCAの初学者は、どこから読むのが分かりやすいと思いますか?また、読むときに参考になる本や、読む際の留意点があれば、教えてください。 第1章の浜さんと第2章の私(山崎)章を読むのがいいと思います。実践編はCDと一緒に使うと、勉学効果があがると思います。
出版以降にどのような反響がありましたか?またすでに書評などが出ているようであれば、教えてください。

書評ではありませんが、有斐閣の『新しい社会学のあゆみ』 の、好井裕明先生の「エスノメソドロジー」の章には驚かされました。あんなことを言う人がいるとは、思ってもいませんでした。これについては、きちんと対応しないといけないかもしれません。ただ、私には、そういうことをする時間はありませんが。

次に書きたいと思っていることはありますか? 『社会理論としてのエスノメソドロジー』のところで答えている通りです。

書評情報

本書で扱われていること ── キーワード集