前田泰樹・水川喜文・岡田光弘 編、2007、ワードマップ エスノメソドロジー──人びとの実践から学ぶ

目次と書誌

「あたりまえ」から学ぶ社会学。おしゃべり、授業、TV視聴、科学実験……現場を生みだす日常の「実践の論理」を こまやかに記述するエスノメソドロジー。基本を34のキーワードで学ぶ待望の入門書。

執筆者(編者以外)
五十嵐 素子、池谷 のぞみ、小宮 友根、是永 論、酒井 信一郎、酒井 泰斗、鶴田 幸恵、中村 和生
はじめに
I エスノメソドロジーのアイデア──実践に学ぶ
  • 第1章 エスノメソドロジーのアイデア
    • 1-1 エスノメソドロジー=メンバーの方法
    • 1-2 説明可能性(アカウンタビリティ)
    • 1-3 インデックス性と相互反映性
    • 1-4 定式化実践と実践的行為
II エスノメソドロジーの論理──なぜ実践に着目しなければならないか
  • 第2章 行為を理解するとは、どのようなことか
    • 2-1 社会学的記述
    • 2-2 行為と規則
    • 2-3 概念の論理文法
  • 第3章 秩序があるとは、どのようなことか
    • 3-1 秩序があるということ
    • 3-2 秩序現象の再特定化
    • 3-3 道徳的な秩序
  • 第4章 合理的であるとは、どのようなことか
    • 4-1 実践のなかの合理性
    • 4-2 背後期待から自然言語の習熟へ
    • 4-3 科学のワークの研究
  • 第5章 規範があるとは、どのようなことか
    • 5-1 規範と行為
    • 5-2 成員カテゴリー化装置
    • 5-3 カテゴリーと結びついた活動
III エスノメソドロジーの記述──実践の記述に向けて
  • 第6章 会話をする
    • 6-1 会話における順番交代
    • 6-2 行為の連鎖
    • 6-3 修復
    • 6-4 優先性
  • 第7章 会話における実践
    • 7-1 議論をする/釈明をする
    • 7-2 ジョークを語る(物語をすること/理解の表示としての笑い)
    • 7-3 ニュースを伝える/受け取る
    • 7-4 教える/学ぶ(授業の会話)
  • 第8章 ワークの実践
    • 8-1 教える/学ぶ(授業のワーク)
    • 8-2 実験する
    • 8-3 比較する/測定する
    • 8-4 共同作業
  • 第9章 実践における理解
    • 9-1 見る
    • 9-2 映像を見る(1)「チラシの表」で社会学
    • 9-3 映像を見る(2)「CMの後」で社会学
    • 9-4 性別をみる
    • 9-5 感情
    • 9-6 記憶と想起
  • 小論 EMにおける実践理解の意味とその先にあるもの
  • コラム よくある質問と答え
  • 謝辞
  • 参考文献
  • 文献解題
  • 索引

本書から:「はじめに」から

この本では、「エスノ(”ethno”=人びとの)・メソドロジー(”methodology”=方法論)」、つまり「人びとの方法論」という、ちょっと変わった名前の学問分野の、基本的な考え方が示されています。その考え方の核になる構えは、次のようなものです。

日常会話からはじまって、テレビでCMを見る、教室で学ぶ(/教える)、病院で診察を受ける(/診察する)、実験室で科学実験をする、法廷で評決を行なう、といったさまざまな実践にいたるまで、そこに参加している人たちは、実際に何らかの方法論を用いて、それぞれの実践を行なっているはずだ。だったら、その「人びとの方法論」を研究して、実際にその方法論をとおして、さまざまな実践をみてみよう。

つまり、エスノメソドロジー(以下EM)とは、それぞれの実践に参加している人びと(メンバー)が使っている「人びとの方法論」の名前であると同時に、それをとおして実践を記述する研究の名前なのです…. (p.iii-iv)

編者に聞く ── 一問一答

本書を書こうと思った動機やきっかけがあれば教えてください。

新しい切り口から、エスノメソドロジーの基本的なアイディアを丁寧に解説する入門書を作りたい、というのが一番の動機でした。

日本でも優れた著作群が出版されてきましたし、方法論や研究領域に則った入門書は、今までにもありました。ですが、こうした入門書が、エスノメソドロジーの基本的なアイディアに焦点を当てて解説しているとはいえません。このため、基本文献の翻訳も少ない状況で、エスノメソドロジーは初学者からみて、まだまだ敷居が高い分野なのではないか、という危惧がありました。

構想・執筆期間はどれくらいですか? 実質の作業は一年くらいで集中的に行いました。
編集作業中のエピソード(苦労した点・楽しかったこと・思いがけないことなど)があれば教えてください。 多数の執筆者間で短期間に集中的に議論を重ねたことが、(当時はとても苦労しましたが)出版された今となっては、良い想い出です。これらの作業を通じて、中堅から若手の研究者が、現在のエスノメソドロジーをどのように理解し、それぞれの研究分野にどのように生かそうとしているのかを、確認することができました。
社会学的(EMCA的でも可)にみて、本書の「売り」はなんだと思いますか?

この『ワードマップ』は、他者理解や社会秩序の問いから入って、「会話をする」「教える/学ぶ」「見る」など、さまざまな実践の記述へといたる、という方針でまとめてあります。そのことによって、

  1. EMが「他者理解」や「社会秩序」といった社会学的な問いを考え抜くことによって生まれてきたこと(エスノメソドロジーの社会学的背景)
  2. EMの基本概念間の関係(エスノメソドロジーの基本的考え方の見取り)
  3. EMでは具体的な実践をどのように捉えるのか(実践同士の関係性や、実践研究としての様々な領域への示唆)

の3点をコンパクトに見渡すことができると思います。

EMCAの初学者は、どこから読むのが分かりやすいと思いますか?また、読むときに参考になる本や、読む際の留意点があれば、教えてください。

まず、第I部(第1章)を読み、次に、第II部(第2~5章)のどれか一章を、次に、第III部(第6~9章)のどれか一章を読んでいただければ、全体のイメージがしやすいと思います。
編者には、すぐれたEMの入門書は、それ自体、すぐれた概念分析の書でもあるはずだ、という思いがあります。
概念や活動の結びつきをたどっていくような感覚で、先に読み進すめていただくことができるような本になっていることを期待しています。
また、EMの基礎知識のある初級者は、FAQ(よくある質問と答え)や「小論(EMにおける実践理解の意味とその先にあるもの)」からお読みいただいても、おもしろいかも知れません。
言語学者に特に読んで欲しい箇所はありますか? 第6章(会話をする)、第7章(会話における実践)です。
認知科学者に特に読んで欲しい箇所はありますか? 第8章(ワークの実践)、第9章(実践における理解)です。
実践家に特に読んで欲しい箇所はありますか? 第III部(エスノメソドロジーの記述)です。
社会学者に特に読んで欲しい箇所はありますか? FAQ(よくある質問と答え)と「小論(EMにおける実践理解の意味とその先にあるもの)」、それに 第II部(エスノメソドロジーの論理)です。

書評情報

山田富秋(書評)
『週刊読書人』 2007年10月26日 第4面
紹介『臨牀看護』
第33巻第13号 2007年 11月号 へるす出版 1981ページ
好井裕明
『週刊読書人』12月28日号 2007年回顧総特集

本書で扱われていること ── キーワード集

実践、論理、実践の論理、人々の方法論、説明可能性、活動、達成、行為、社会的行為、推論、理解可能性、行為の理解、行為の記述、論理文法、概念の文法、概念の使用、記述のもとでの行為。行為を記述のもとで理解する。行為を記述する概念を 文法に則って使用する。行為の技術が概念の文法に則っている。文法は記述の結びつきの中に示される。規範、可能な記述、装置。行為や光景などについての可能な記述を同定できる。行為や光景などが装置を使って理解される。秩序、社会秩序、社会的秩序、可視性、場面の可視性、組織化、場面の組織化。場面が組織されている。場面に可視性がある。可視性によって場面の組織化が可能になる。組織化が場面の可視性を与える。合理性、合理的、科学的合理性、ワーク、自然言語の習熟。動・推論・行為などがワークにおいて/として成し遂げられている。活動・推論・行為などが自然言語の習熟のもとで説明可能である。プラン、状況的行為