- 目次と書誌
- 本書から
- 著者に聞く ── 一問一答
- 書評情報
- 本書で扱われていること ── キーワード集
目次と書誌
- 2004年 発行
- 定価 4,935円(税込)
- A5判/240頁
- ISBN 978-4-491-01950-5
- 東洋館出版 |
本書は、中学校の保健室における養護教諭の教育実践ならびに相談実践の構造、機能、意味について、学校の制度的・組織的文脈を考慮しつつ、エスノメソドロジー研究の観点から考察・解明し、さらに教育現場に臨床的示唆と資料を提供することを期す。
序章 | 保健室への臨床エスノメソドロジー的アプローチに向けて | |
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第1節 | 問題関心 | |
第2節 | 本書の構成 | |
第1章 | エスノメソドロジー類型学と「教育の臨床エスノメソドロジー研究」の可能性 | |
第1節 | 議論の手順 | |
第2節 | エスノメソドロジー理論の基本的特徴 | |
第3節 | エスノメソドロジー研究の現在 | |
第4節 | エスノメソドロジー類型学と「教育の臨床エスノメソドロジー研究」の可能性 | |
第5節 | 教育の臨床エスノメソドロジー研究におけるデータ作成の技術と“事例”の考え方 | |
第2章 | 保健室の日常風景──生態学的考察── | |
第1節 | はじめに | |
第2節 | 調査のプロフィール | |
第3節 | 保健室の日常風景──生態学的観察 | |
第3章 | 保健室のエスノメソドロジーと悩み相談──養護教諭と生徒のやりとりの構造・機能・意味── | |
第1節 | はじめに | |
第2節 | 基本的プロセスの構造──来室時から問診・診断・処置へと至る局面を中心に | |
第3節 | 悩みを打ち明ける来室──やりとりの中の在庫知識の使用法 | |
第4節 | 来室の通常化作用──《用紙記入活動》の機能・意味 | |
第5節 | 悩み相談のやりとりの展開過程と保健室内の空間移動 | |
第4章 | やりとりの中で志向される制度的特徴──教師と子どもの心との出会い方── | |
第1節 | はじめに | |
第2節 | 制度的特徴の比較分析──心の扱われ方に着目して | |
第3節 | 「つらなる来室」と悩み相談の横のひろがり | |
第5章 | 保健室における「対応の順番」の問題 | |
第1節 | はじめに | |
第2節 | 事例場面の概要 | |
第3節 | 対応の順番形成・移行上の問題点 | |
第4節 | 保健室内のやりとりにおける《通常期待》と対応の順番 | |
第5節 | マニュアル知から臨床知へ──臨床エスノメソドロジー的転換 | |
終章 | 教育の臨床エスノメソドロジー研究の意義 | |
第1節 | 本研究のまとめ | |
第2節 | 考察──新たな知見 | |
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本書から:
本書では、[養護教諭の先生方にしてみれば]日ごろあまり気にも留めないで行っている[保健室の]やりとりの中の[保健室来室児童生徒との]志向の織りなし合いに隠されている、反省的実践のヒントに着目していきた(p.60; 「5-3 教育臨床的研究と“事例”の見方、捉え方」より。ただし[ ]内は補った)
著者に聞く ── 一問一答
本書を書こうと思った動機やきっかけがあれば教えてください。 | 本書は、既発表の論考を再構成し、書き下ろしの章を加えた内容から構成されています。主な読者対象は、エスノメソドロジー研究者というよりも、むしろ研究志向の強い養護教諭、養護教諭養成課程の教員、学校関係者、教育学・教育社会学の研究者を想定しており、そうした方々に、あらためてこれまでの研究成果をまとまった形でお示しすることに、幾許かの意義があるものと考え出版をすることとした。 |
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構想・執筆期間はどれくらいですか? | 全プロセスを含めると、特定することは難しいです。 |
これまで出された著書(あるいは論文)との関係を教えてください。 | Q1のとおりです。 |
執筆中のエピソード(執筆に苦労した箇所・楽しかった出来事・思いがけない経験など、どんなことでも可)があれば教えてください。 | ただただ淡々と進めておりました。 |
執筆において特に影響を受けていると思う研究者(あるいは著作)は? | 教育社会学の領域でいえば、山村賢明先生、藤田英典先生、加藤隆雄先生、志水宏吉先生に、またエスノメソドロジーの領域では、山田富秋先生、好井裕明先生、西阪仰先生、山崎敬一先生、樫村志郎先生、椎野信雄先生ほか、多くの先生に直接的・間接的に教えを受けました。その領域をリードする先生方がいらっしゃる研究コミュニティに参加できたことが、何よりも幸運であったと思いますし、研究を進める上で大きな力となったと感謝しております。 |
社会学的(EMCA的でも可)にみて、本書の「売り」はなんだと思いますか? | 意図としては、教育臨床的研究の可能性、実践家コミュニティに対する応答可能性とでもいうべきことを念頭に、エスノメソドロジー「的」研究の成果を発信する際の、ひとつのたたき台にはなるかと考えます。 |
実践家に特に読んで欲しい箇所はありますか?その理由は? | 教育の現場に携わっておられる様々な立場の方々(とりわけ養護教諭の方)に、まずもってトランスクリプトをお読みいただければ、と願っております。養護教諭の方々にとっては、自分たちの日常がそこにあると思われるからであり、それ以外の実践家の方々には、子どもたちの、保健室ならではのありようなどに接する機会になるだろうと思われるからです。 |
EMCAの初学者は、どこから読むのが分かりやすいと思いますか?また、読むときに参考になる本や、読む際の留意点があれば、教えてください。 | EMCA的にど真ん中の研究書ではないものと、自覚しております。ただ、少なくとも掲載してあるトランスクリプトを声に出して読んでみて下さい。人数をそろえて、場面を想像しながら再演していただくのが、初学者にとってのEMCA入門としては良いのでは、と思うからです。 |
出版以降にどのような反響がありましたか? またすでに書評などが出ているようであれば、教えてください。 | 私が知るかぎりでは、たとえば清矢良崇先生による書評が『教育社会学研究』誌において掲載されました。また、本書に接してくださったことをきっかけに、実践家の方々や学校保健の専門家の方々からお声をかけていただき、その後のさまざまなやりとりを経て、養護教諭の方々をはじめとする学校教員の方々と民衆演劇/応用演劇のワークショップを重ねるようになりました。そうした試みも、私なりのエスノメソドロジー研究のつもりです。 |
本書の出版以降に取り組んでいるテーマについて教えてください。 | 上述のとおり、主として養護教諭の先生らと演劇ワークショップを共催し、実践研究としてのエスノメソドロジーの探究をすすめ、国内外の応用演劇研究者らとの学際的な交流の中で理論化作業を進めつつあります。 |
書評情報
- 清矢良崇
- 「書評:秋葉昌樹[著]『教育の臨床エスノメソドロジー研究─保健室の構造・機能・意味─』」『教育社会学研究』76集, pp.304-306, 2005年
本書で扱われていること ── キーワード集
教育臨床、保健室の会話、養護教諭