2016年8月8発売の、雑誌『PRESIDENT 2016年8.29号』「特集『実家』の大問題」に、中川敦会員(宇都宮大学)が「遠距離介護の会話分析」と関連したインタビューを受け、その内容がp.70-73に掲載されました。掲載にあたり中川会員から寄せられたコメントを掲載します.
これまでの私の研究の一つは、離れて暮らす子どもと福祉の支援者が参加する、高齢の親の介護に関するケアカンファレンスで、遠距離介護のジレンマへの対処が、どのような方法を通じて図られているのかを明らかにするものでした。そこでの知見の一つは、発話の順番構成単位の中で区切れを生じさせ、その機会を利用して発話の共同完了がなされることで、デリケートな事柄に関する意思決定の責任の分散を図るという手法でした。今回の記事の中のいくつかの箇所では、こうした研究成果に基づく私の見解が触れられております。
また、最近は、離れて暮らす子供、ケアマネジャーに加えて、高齢者ご本人も参加してのやりとりを見ているのですが、高齢者の方の意思を問う質問において、wh質問ではなく、yes-no質問の採用が、高齢者の方の答えやすさと結びついた形で提示されていることがありました。こうした点も記事の中で、紹介していただいております。
世界についての深い洞察を私たちに与えてくれる会話分析は、研究者のみならず、調査を通じて私たちがお世話になっている現場の人達にも、意味ある成果を提供できるのではないかと私は思っています。いつかそうした可能性を自らの研究を通じて現実のものにできるように、今後とも会話分析の学びを深めてければと考えております。
2016年9月2日