2024年度エスノメソドロジー・会話分析研究会入門セミナー:EMCA研究に着手する方法

2024年度エスノメソドロジー・会話分析研究会セミナー「EMCA研究に着手する方法」を8月10日(土)にオンライン開催いたします。
多くのご参加をお待ちしております。

今回のセミナーは、EMCAの考え方を学び具体的な研究に着手しようとしている(あるいは着手してみた)ものの、今後どのように研究を進めていけばよいかよくわからない、という方を主な対象としたものです。EMCAの入門者〜初学者が研究に着手する際に直面しうる問題として、例えば以下のようなものが考えられます。

・フィールドで観察やデータ収集を始め、断片的な発見は得られているものの、そこから分析につながる問いを絞り込めない
・会話データを収集して分析を始めたいが、「使える」データを適切かつ効率的に収集・整理・転記する方法がわからない
・研究のフィールドや扱いたい現象は何となく決まっているが、JSPS特別研究員や科研費などに応募するための研究計画として上手くまとめられない

そこで本セミナーでは、フィールドでの中長期的な調査、会話データの集め方や取り扱い、競争的資金の獲得などに関して豊富な経験をお持ちの講師の先生方に、以下3つのテーマでそれぞれ講義していただきます。個人ワークなども交えながら、教科書等を読むだけでは体得することが難しい具体的な研究の進め方について、実践的に学んでいただきます。

1. 研究の問いを立てる
2. 会話データを収集・整理・転記する
3. 研究計画書をまとめる

概要:
【日時】2024年8月10日(土)10:30~17:45
【実施形態】オンライン形式
【会場】Zoom
【参加費】下記の通り。いずれも1講座あたりの参加費になります。
・EMCA研究会会員(一般):1000円
・EMCA研究会会員(学生・院生):500円
・EMCA研究会非会員(一般):2000円
・EMCA研究会非会員(学生・院生):1000円
【定員】20名(セミナーごと)
【注意事項】
・お支払いはPeatixを通しての事前支払いのみとなります。当日の現金支払いは受け付けておりませんので、あらかじめお申し込み・お支払いをお願いいたします。
・準備の都合上、8月5日(月)24時までで申込みを締め切らせていただきます。
・申込み期間内でも、定員に達した時点で、予告なく申込みを終了させていただくことがあります。参加をお考えの方は、お早めにお申し込みください。

【プログラム】
(1)10:30~12:30「研究の問いを立てる」
講師:鈴木南音(JSPS/立教大学)
申込ページ:https://emca-question.peatix.com

(2)13:30~15:30「会話データを収集・整理・転記する」
講師:居關友里子(国立国語研究所)
申込ページ:https://emca-data.peatix.com

(3)15:45~17:45「研究計画書をまとめる」
講師:河村裕樹(松山大学)
申込ページ:https://emca-plan.peatix.com

【セミナー詳細】

「研究の問いを立てる」
講師:鈴木南音(JSPS/立教大学)

エスノメソドロジー・会話分析の研究はじめ、質的調査においては、最初に具体的な「リサーチクエスチョン」を立ててトップダウンに研究を進めていくというやり方ではなく、資料や会話データをまず収集し、ボトムアップな分析に基づいて、徐々に「問い」を磨いていった結果として、研究の最終段階ではじめて「問い」が明確になる、ということが一般的かと思われます。
このようなボトムアップ型の研究を試みるとき、しばしば直面しがちな困難な状況として、「とりあえずデータは取ってみたけれど、どう論文にしたらいいのか分からない」ということがあるでしょう。そこで、本セミナーでは、収集した調査データを整理・分析し、先行研究を検討するといった研究の流れを概観しながら、どのように最終的な問いを形作るのかということについて、会話分析の実際の研究を例としながら検討したいと思います。

【講師代表業績】
鈴木南音,2021,「アスペクトの転換と凝結 舞台制作場面の相互行為におけるアスペクト知覚の会話分析」『フィルカル』vol.6. No.3, 248-267.
鈴木南音,2022,「絵を描いて見せることの会話分析」『社会学評論』73巻1号, pp.19-36.
鈴木南音,2023,「演劇の稽古場面における演技の相互行為的構成――現代演劇の会話分析」『年報社会学論集』36号,pp.52-63.

「会話データを収集・整理・転記する」
講師:居關友里子(国立国語研究所)

会話データを収集し分析しようとしたとき、実際の分析に入る前に、データ収集し、整え、分析に用いることができる形にする必要があります。これらの作業は分析に入る以前の作業でありながら、どのような分析や議論を可能にするのかに大きく関わる重要な作業といえます。本セミナーでは、これから会話データを収集し分析を始めようと考えている方に向け、会話データの収集(音声・映像収録の方法や既存データベースの活用)、整理(音声・映像データの編集や管理)、転記(作業方法や使用記号)を中心に、その手続きの具体的な方法について学びます。複数の選択肢がある場合には、それらの長所や短所についてもあわせて学ぶことによって、自身の研究にあった方法を選択できるようになることを目指します。

【講師代表業績】
小磯花絵・天谷晴香・居關友里子ほか(2023)「『日本語日常会話コーパス』設計と構築」『国立国語研究所論集』24, pp.153-168.
居關友里子・小磯花絵(2023)「幼児と保護者によるごっこ遊びの相互行為―日常場面に関する知識の利用に着目して―」『言語資源ワークショップ発表論文集』1, pp.253-261.

「研究計画書をまとめる」
講師:河村裕樹(松山大学)

本セミナーでは、自身の今後のキャリアを見据えながら、遂行していくことの意義を認めてもらえるような、実現可能性のある研究計画を立てるにはどうすればよいかを、講師の経験を踏まえてレクチャーしていきます。具体的には、JSPS特別研究員や科研費などの競争的資金に応募する際に必要な研究計画書の作成を中心に、EMCA研究の意義を専門外の審査員にも伝わるよう説得的に書く際のコツなどを、講師の実例を題材に検討していきます。特にEMCA研究に向けられる「そんな細かいことをやってどんな意義があるのか」という疑念などをあらかじめ想定し、それに対する答えを事前に盛り込むやり方や、EMCA以外の研究領域とのつながりの持たせ方などを取り上げます。また、参加者との質疑応答の時間を設け、共通する課題について話し合い、気づきやヒントを共有できればと思います。

【講師代表業績】
河村裕樹, 2022, 『心の臨床実践――精神医療の社会学』ナカニシヤ出版.
ダーク・フォン・レーン(荒野侑輔・秋谷直矩・河村裕樹・松永伸太朗訳), 2024, 『ハロルド・ガーフィンケル――エスノメソドロジーの誕生と社会学のあゆみ』新曜社.
河村裕樹, 2021, 「精神医学的診断と病いの語り――専門的概念と日常的概念の連関に着目して」『年報社会学論集』34: 143-154.