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エスノメソドロジー・会話分析研究会:会員の活動

掲載:2014年10月02日

  研究会員である 團 康晃さん の論文「学校の中の物語作者たち―大学ノートを用いた協同での物語制作を事例に」が 日本子ども社会学会の「日本子ども社会学会創立20周年記念論文」最優秀論文に選ばれました。
  この論文の内容と今後の展開について、團さんからコメントをいただいたので掲載します。

團 康晃「子ども社会学会20周年記念論文最優秀賞受賞に寄せて」

  この度、拙稿「学校の中の物語作者たち―大学ノートを用いた協同での物語制作を事例に」が子ども社会学会の20周年記念論文において最優秀論文となりました。論文は『子ども社会研究』No.20の巻頭に掲載されています。

  本論文は、学校での長期フィールドワークでの参与観察と聞き取りをもとに、学校の中で大学ノートを回しながら一つの創作小説を書くという、数名の生徒の実践の構造に着目したものです。物語作者となる中学生達は、「ライトノベル」や「アニメ」のファンであることをきっかけに物語制作に参加し、四人で一つの物語を作っていました。そのメディアは一冊の「大学ノート」でした。執筆担当者は家で担当分の文章を書き、次の日の休み時間に担当分を書きこんだ大学ノートを持って廊下に集い、次の書き手に大学ノートを手渡し、そのままおしゃべりをする。これが一連の流れです。大学ノートに物語を書くとき、この活動に参加していない生徒はそのノートで何をしているのか一目にはわかりません。物語作者にとって大学ノートは、他の生徒から「おたく」というスティグマ化されたカテゴリーを付与されないよう、パスするための道具であり、学校の中では口にできない、物語に関する感想や書き手どうしのやり取りを行う環境であり、休み時間に受け渡すことで物語作者達どうしがおしゃべりをする為のきっかけとなっていました。

  このような分析を通して、様々な者が集う学校の中で、大学ノートというメディアを用い、廊下という空間、休み時間という時間を、「おたく」として「物語作者」として生きる人々の方法を描きました。

  賞の選評では、「おたく」であること「腐女子」であることを他の生徒には隠ぺいしつつ共有し、その中である文化を共有する過程を画いた点を、「子ども文化」の新たな形式とそのありようを描いたとして評価していただきました。

  先行研究の多くは、ある特定のサブカルチャーグループを調査者が措定しており、彼/彼女等が何者として、どのような活動をどのような文脈の中で織りなしているのかという点について、触れられませんでした。本論文の目標はエスノメソドロジーの立場からそういった点を射程に入れて分析することでしたので、この点を評価していただいたことをとても嬉しく思います。

  また、今後の研究の展開としては、大きく二つのことを考えています。一つは、まだ分析が出来ていない生徒達の休み時間の様々な遊びや創作実践を今回行ったような相互行為として分析するというものです。そしてもう一つは、こういった生徒達の実践が織り成される環境が歴史的にどのようにして形成されてきたのか、ある活動の可能性はどのように準備されてきたのか、幾つかの制度に着目して整理したいと考えています。

  最後になりますが、フィールドの学校、校長先生はじめ先生方、何より物語作者である生徒たちに感謝いたします。また、分析に際しては、社会言語研究会、本郷概念分析研究会のメンバーの方々には幾度かデータセッションをしていただき、分析について多くのコメントをいただきました。ありがとうございました。今後もがんばります。

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