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エスノメソドロジー・会話分析研究会: 活動の記録

秋の研究会大会と春の研究例会を中心とした、研究会のこれまでの活動の記録です。(なお掲載文言は、開催当時の告知文をもとにしています。)


2017年度研究例会
[開いて読む]

2017年度研究会大会



概要

EMCA研究会2017年度秋の研究大会を、2017年10月8日(日)に、関西学院大学梅田キャンパスで開催いたします。午後からの第2部では、Harold Garfinkelの Studies in Ethnomethodology 刊行50周年を記念する特別セッションを設けました。みなさまのご参加をお待ちしております。

(大会担当世話人:森本郁代・戸江哲理)


プログラム

10:10受付開始
10:30~12:00第1部 自由報告
10:30~11:00金青華(お茶の水女子大学大学院)
「応答発話の開始部分に用いられる一人称代名詞の相互行為上の働き」[→概要
11:00~11:30鈴木佳奈(広島国際大学)
「分析ツールとしての『成員カテゴリー化装置(MCD)』を再検討する」[→概要
11:30~12:00岡田光弘(国際基督教大学)
「エスノメソドロジストは『会話分析・相互行為分析』とどのように関わるのか?」[→概要
12:00~13:00ランチタイム
13:00~13:30総会
13:30~17:00 第2部 Studies in Ethnomethodology 刊行50周年記念企画「エスノメソドロジーのこれまでとこれから」
13:30~13:35趣旨説明
13:35~14:05樫村志郎(神戸大学)
Studies in Ethnomethodology に至る道程――1960-67年を中心にして」[→概要
14:05~14:35山崎敬一(埼玉大学)
「私はいかにしてエスノメソドロジストになったのか――社会学的・哲学的来歴」[→概要
14:35~15:05水川喜文(北星学園大学)
「「IIEMCAとエスノメソドロジー・会話分析の展開」(仮)[→概要
15:05~15:35南保輔(成城大学)
「シクレル・インタヴュー・アイデンティティ――『インタヴューのエスノメソドロジー(的研究)』に向けて」[→概要
15:35~15:50休憩
15:50~17:05総合討論
17:05閉会

第1部報告要旨

(1)「応答発話の開始部分に用いられる一人称代名詞の相互行為上の働き」(金青華・お茶の水女子大学大学院)
 一人称代名詞は非明示するのが一般的であるが、すべての一人称代名詞が現れないわけではない。実際の日本語母語話者の自然会話をみても、述語や談話の場面性により一人称代名詞が推測される状況でも明示される場合がしばしばみられる。本稿で取り上げる一人称代名詞は「質問―応答連鎖」の応答発話の開始部分という特定の位置に現れるもので、応答発話が応答者に関して語られているのが明確なため、明示しなくてもいい位置に現れるものである。しかし、あえて明示されるということは、一人称代名詞が主題としての機能だけでなく、会話を展開する上で何らかの機能を担っていることが推測できる。
 こういう点を踏まえて、本稿では発話の中の様々の位置で現れる一人称代名詞の相互行為上の働きを明らかにする一端として、ひとまず、応答発話の開始部分に用いられる一人称代名詞を取り上げ、日本語母語話者の自然会話データに即して分析を進める。
 その結果、応答発話の開始部分に現れる「私」は、「新規話題を導入」という機能よりは、相手が望んでいる答えがただちに産出できなく、自分のことを語らないと応答にはならないという答え方をプロジェクトするのに使われていることがわかった。そして、質問への理解と質問の要請に応えようとしているという協調的スタンスを示していることがわかった。

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(2)「分析ツールとしての『成員カテゴリー化装置(MCD)』を再検討する」(鈴木佳奈・広島国際大学)
 会話分析の諸概念のうち、「話者交替」や「行為連鎖」などは、相互行為データを分析するためのツールとしての有用性がある程度確立している。それは、ある発話や行為についての分析者の解釈が妥当かどうかが、その発話や行為の受け手自身の反応によって裏付けられうるためである。一方、「成員カテゴリー化装置(MCD)」を用いたデータ分析は、そのような裏付けが難しいことが多く、分析が恣意的になる危険性が指摘されている(cf. 串田・平本・林 2017, 257-8)。現段階で、成員カテゴリー化装置は、分析ツールとしてどの程度利用可能なものなのだろうか。
 本発表では、まず、国内外で近年刊行された5冊の会話分析関連の入門書・概説書・研究書(Fitzgerald and Housley 2015; Clift 2016; 高木・細田・森田 2016; 高梨 2016; 串田・平本・林 2017)で、「成員カテゴリー」や「成員カテゴリー化装置」といった概念がどのように紹介されているか、またそれらの概念がどのようにデータ分析に使用されているのかを比較する。さらに、父親が子どもに絵本の読み聞かせを行っているデータ断片を例にして、どうすれば「成員カテゴリー化装置の概念を用いたデータ分析の根拠を、参与者の指向に基づいて」(串田・平本・林 2017, 257)示すことができるかという問題を検討する。特に、参与者のさまざまな「属性」、例えば「質問者と応答者」といった行為連鎖レベルの属性、「読み聞かせをする者と聞く者」、「教える者と教えられる者」、「指示する者と指示される者」などの活動レベルでの属性、「父親」「母親」「子ども」というより一般的な属性、さらには「研究者と研究協力者」という暗黙の属性、を「成員カテゴリー」として重層的に分析に適用しうるか、フロアと議論したい。
引用文献
串田秀也・平本毅・林誠.2017.『会話分析入門』.勁草書房.
高木智世・細田由利・森田笑.2016.『会話分析の基礎』.ひつじ書房.
高梨克也.2016.『基礎から分かる会話コミュニケーションの分析法』.ナカニシヤ出版.
Clift, R. 2016. Conversation Analysis. Cambridge University Press.
Fitzgerald, R., and Housley, W. (Eds.) 2015. Advances in Membership Categorisation Analysis. Sage Publishing

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(3)「エスノメソドロジストは『会話分析・相互行為分析』とどのように関わるのか?」(岡田光弘・国際基督教大学)
 目的と方法 H.Garfinkelを学祖とするエスノメソドロジストが、H.Sacksが切り開きE.Schegloffが開花させた「会話分析」ないしは「相互行為分析」という研究手法とどのように関わってきたのかについて、会話分析(特に、Epistemics)に言及して書かれた論文から学史的、理論的に検討する。
 結論 前回の研究会で、Epistemicsを巡る論争が紹介された。会話分析(CA)内の重要な論争であることが理解できた。しかし、登場人物から考えると、その、いわば「コップの中の嵐」の外側に、Garfinkelに依拠した別の「コップ」の存在が見て取れる。またこの論争では、既存の社会学との距離を「最大化」することをよしとする前提が共有されていたように思われる。
 学史的には、「フォーマル・ストラクチャー」論文を巡って、Garfinkelを継承した、あるいはGarfinkelとSacks(G&S)を継承したEMCAとは、どのような研究なのかという論点がある。ちなみに、M. Lynchは、同論文を両者の共同作業とする。このG&Sを継承するCAと、Sacks(とSchegloff)に由来するCAとを区別している。また、これとは別に、彼は、1968年までのUCLA講義での、一事例を解明するCAとそれ以降のコーパスを経由するCAとを区別する。
 さらに、これと別の「マンチェスター・ランカスター派」によるCAの位置づけは、Garfinkelの業績を換骨奪胎し、CAをEMCAの中に位置づけつつ、EMCAと社会学との距離を「最小化」する路線であるように思われる。

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第2部報告要旨

(1)「Studies in Ethnomethodology に至る道程――1960-67年を中心にして」(樫村志郎・神戸大学)
 本報告では、Studies in Ethnomethodology(Garfinkel 1967)(以下、Studies と略称する。)の出版に至るまでの間にエスノメソドロジーがどのような研究として理解され実践されてきたのかを、素描する。  今日の研究事情における一般的理解では、エスノメソドロジーはStudies において、宣言された研究プログラムである。たしかに、そのプログラムの研究すべき課題と研究方針が、たとえばインデクシカリティ等のような独特の用語やそれを用いた標語に集約された形でそこでは宣言された(とりわけ、Preface, Chapter 1)。この事情から専門的にせよ非専門的にせよエスノメソドロジーはその用語の理解と解釈を中心として再理解・再解釈される傾向がある。しかし、こうした理解は、エスノメソドロジー成立に関係していたいくつかの事情を見逃す傾向をもっている。
 Studies 自体がエスノメソドロジー活動の実践的説明たるアカウントであり、それは、どんな問題へのどのような探求を通じてエスノメソドロジーの課題、対象、方針が把握されつつ達成されたのかにかかわるいくつかの事情を必然的に省略するか背景化している。そこで、そのいくつかの事情をあきらかにすることは、エスノメソドロジーをその産出の道程において理解するということの今日的価値を検証するための方法だといえる(なお、1970年代までのGarfinkelの研究はウェブページ Formative Steps of Ethnomethodology で時系列的に整理してある)。
 Garfinkelと共同研究者が1960年代に従事してきた研究プロジェクトには、
  • (1)1962年にGarfinkelがUCLAで開始したエスノメソドロジーセミナー、
  • (2)1963年にコロラド大学で Garfinkel, Sacks, Bittner, Rose が行った「適切なアカウント」または「社会の理解/産出」に関する研究会、
  • (3)1967年にASAで GarfinkelとSacks が共同報告した「会話の場面について」
が含まれる。
著者は2016年にUCLA研究図書館の調査によってこれらに関する資料を入手した。本報告では、それに基づいて、部分的ではあるが、エスノメソドロジーという研究プログラムがいかにして成立してきたのかに光をあてたい。

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(2)「私はいかにしてエスノメソドロジストになったのか――社会学的・哲学的来歴」(山崎敬一・埼玉大学)
 修士論文で二つの研究を行った。一つは『常識的カテゴリーと科学的カテゴリー』として後に出版した研究で科学論・科学哲学の問題からエスノメソドロジーへの発展を扱ったものである。もう一つは現象学的社会学、特にA. シュッツの反省的意味論の批判的検討である。この研究の中で我々が一緒に会話をしているという反省以前的な経験に着目し、会話分析の研究に着手することになった。
 エスノメソドロジーとの出会いは、学部時代に遡る。大学に入学したときは哲学に関心を持っていたが、やがて哲学的探求よりも日常的に私たちが当たり前に考えていることの重要性に気づき、社会学に関心を持つようになった。しかし日本で当時出版されていた教科書や著作はすべて構造機能主義に基づいており、私の関心に見合うものではなかった。高田馬場にビブロスという書店があり、ペンギン文庫や言語学を中心に洋書を扱っていた。そこでバーガーの Invitation to Sociology を買って読み、社会学の魅力を知った。さらにバーガー・バーガーの Sociology: A Biographical Approach を読み、社会学の勉強をした。翻訳にはついていないが、英語版ではエスノメソドロジーの文献紹介があり、そこでエスノメソドロジーの存在を知った。また、ペンギンの Introducing Sociology (Second Edition)の中のシャロックの The Problem of Order の章を読み、エスノメソドロジーの重要性を認識した。さらにロイ・ターナーのペンギン版の Ethnomethodology を読み、ガーフィンケルやサックスの研究を始めたのである。ガーフィンケルやサックスの研究の重要性については口頭で報告する。

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(3)「IIEMCAとエスノメソドロジー・会話分析の展開(仮)」(水川喜文・北星学園大学)
 To be announced
(4)「シクレル・インタヴュー・アイデンティティ――『インタヴューのエスノメソドロジー(的研究)』に向けて」(南保輔・成城大学)
 マイケル・リンチによって,ハロルド・ガーフィンケルとともに「プロトエスノメソドロジー」の担い手とされたアアロン・シクレルは,UCLAでガーフィンケルのRA(調査助手)として『Studies』のいくつかの実験的調査を遂行した。1970年代以降は「認知社会学」をキイワードとして認知科学の領域で活躍した。本報告前半では,1986年からUCSDでシクレルの指導を受けてPh.D.研究を行った南の経験をもとに,シクレルの教えを整理する。それを踏まえて後半では,インタヴュー法に基づくアイデンティティ研究にEMCAを活用する試みの端緒を紹介する。『インタヴューのエスノメソドロジー(的研究)』をまとめる企図の第一歩としたい。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 森本郁代
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2016年度研究例会
[開いて読む]



→短信:報告と写真を掲載しました [2017/07/27]

EMCA研究会2016年度春の研究例会のプログラムをお送りいたします。 今回は Harvey Sacks の Lectures on Conversation 発刊25周年特別企画もございますので、お誘い合わせの上、奮ってご参加いただければ幸いです。

(大会担当世話人:黒嶋智美・森一平)
(最終更新: 2017年03月08日)

  • 日時: 2017年3月26日(日)9:00-17:00
  • 場所: 成城大学3号館1階 311教室 [地図
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 事前参加申込: 不要

プログラム

09:00 受付開始
09:30-12:00 第1部 自由報告 (司会 森一平(帝京大学))
09:30-10:00 坂井愛理(東京大学大学院)
「訪問マッサージにおけるアカウントの実践――「情報の釣り出し装置」ならびに「訂正誘引装置」の使用に注目して」 [→要旨
10:00-10:30 團 康晃(公益財団法人たばこ総合研究センター)
「会話の組織と嗜好品摂取の関係についての研究」 [→要旨
10:30-11:00 畑和樹(Newcastle University)
「一般会話における終助詞butとtrailoffの会話構造」 [→要旨
11:00-11:30 岡田光弘(国際基督教大学)
「観察社会学にとって、「概念分析」とはいかなるものなのか?――P.Winchを正確に「誤読する」試み?」 [→要旨
11:30-12:00 中川敦(宇都宮大学)
「遠距離介護のコミュニケーションにおける高齢者の本人参加――高齢者への次話者選択時の離れて暮らす子供の自己選択順番取得」 [→要旨
12:00-13:30 昼食
13:30-17:00 第二部:実践のなかの経験と知識――研究動向と展望
(Harvey Sacks, Lectures on Conversation 発刊25周年特別企画シンポジウム)
13:30-13:45 主旨説明 司会 黒嶋智美(日本学術振興会・千葉大学)・森一平(帝京大学)(15分)
13:45-14:15 報告1(30分):早野薫(日本女子大学)
14:15-14:45 報告2(30分):西阪仰(千葉大学)
14:45-15:15 報告3(30分):前田泰樹(東海大学)
15:15-15:45 報告4(30分):中村和生(青森大学)
15:45-16:00 休憩(15分)
16:00-16:30 パネルディスカッション(30分)
16:30-17:00 全体討論(30分)
17:00 閉会

自由報告概要

1.訪問マッサージにおけるアカウントの実践:「情報の釣り出し装置」ならびに「訂正誘引装置」の使用に注目して
坂井愛理(東京大学大学院)
 本報告では,訪問マッサージサービスのビデオデータを資料に,患者の身体にアカウントが与えられるやり方について検討する.
 訪問マッサージとは,脳梗塞後の麻痺等を持ち自宅や施設で療養中の者に対して継続的に行われる,運動機能維持・苦痛緩和サービスである.
 本報告が注目するのは,20分の全身マッサージを行う中で,施術者が身体の「いつもとは違う」様子を,患者のうえに発見し,その発生理由について患者に説明機会を与える,というやりとりである.このとき施術者は,(1) 情報の釣り出し装置(Pomerantz 1980)を用いて,患者にアカウントの機会を与えることが出来る.あるいは,(2)理由の候補を挙げながら尋ねることによって(Sacks 1992, Pomerantz 1988),患者にアカウントを求めることができる.患者はこれらの機会を利用して,身体のいつもとは違う様子にアカウントを与え,身体を「正常化(normalize, Jefferson 2004)」することができる.本報告では具体的な会話断片を示しながら,(1)や(2)の装置がどのように使用されているのかについて検討する.
2.会話の組織と嗜好品摂取の関係についての研究
團康晃(公益財団法人たばこ総合研究センター)
 日常的なおしゃべりや仕事の会議など、様々な活動場面において会話が進行する中で嗜好品が摂取されるということがある。そこには嗜好品を端的にノドが渇いたから飲む、おなかが空いたから食べる、といった生理的な側面だけではなく、嗜好品摂取による進行している活動への影響関係という社会的な側面もあると考えられる。これまでも会話分析の研究の蓄積において、そこで扱われているデータの中には嗜好品の摂取がなされているものも少なくなかったが(Goodwin1979, 西阪2008など)、会話の組織と嗜好品摂取との関係について焦点をあてる研究は少ない。本報告では、会話の組織と嗜好品摂取の関係についてエスノメソドロジー・会話分析の立場から明らかにすることを目的としている。
 本報告では、三名によるおしゃべり、読書会、懇親会などの場面のビデオデータ(2016年に撮影、6ケース、約10時間分)を対象に、参加者の参加の枠組みや発話と嗜好品摂取の関係に焦点をあてて分析を行う。
 報告当日は、特に話し手であることと嗜好品の摂取に焦点をあてた個別事例の分析をいくつか示したい。
3.一般会話における終助詞butとtrailoffの会話構造
畑和樹(Newcastle University)
 我々は様々な装置を駆使することで対話行為を履行しており、文法もそれらの一つである。本発表では会話分析の観点から、終助詞butを伴うtrailoff現象の再記述を試みる。具体的な事例として、以下のような会話構造に焦点を当てる。
Excerpt (1): Tape_026602
1     NIN:   did you see, you ↑know ↓this ↑last gardener's;
2            (1.2)
3     CLA:   gardener's ↑world.=
4     NIN:   =gar:dener's world.
5            (1.7)
6     CLA:   I ↑haven't >really looked at it,<=
7  →         =no I ↑glanced (.) very briefly↓ at it;=but_
8            (1.2)
9  >  NIN:   where it had er↓ a broom ↑garden.   
10           (0.4)
11    CLA:   no↓ I didn't see that
12    NIN:   oh_=let's have a look and see if
13           I can find it.
 BNC(British National Corpus)から得た音声サンプルを基に、終助詞butを伴う順番完了の指標や、話者の認識、その後の行為における対話構造等に焦点を当て、これまで見過ごされてきたtrailoffにおける「行為連鎖」を明らかにしたい。
 先行研究で述べられている通り、trailoff butは話者らに会話構造の情報を与えることで語順の統語的・文法的な完了を待つことなく話者交代を引き起こすことが見られる。つまりtrailoffにおけるbutは新情報導入のために置かれるのではなく、これまで構築された対比を話者らに再認識させることを示している。しかし、(終助詞としての)butの順番内機能に対し、trailoffを伴う行為連鎖や会話構造にはあまり焦点が当てられていない。
 本発表では、trailoff butの「受け手」が起こす行動形式に注目し、当現象における行為連鎖、実践された異なる構造形式を考察する。まず先行研究で記述された通り、受け手の行為が(butで完了された)直前の順番に関連付けられることで、会話の継続と目的の履行を行うことが今回の分析においても確認された。この場合、受け手はbut後の沈黙に順番移行に関する適切な場所を見出し、行為の連鎖を継続したことが示唆される。一方、受け手はbut後の沈黙を語順完結可能な場所としてのみではなく行為連鎖そのものを完結可能とみなし、関連する順番を産出することなく新たな連鎖をはじめる現象も見られた。これらの異なる会話構造や話者らの実践を読み解くことでtrailoffの複雑さを示し、また行為連鎖の観点から当現象を分析する重要性を論じたい。
4.観察社会学にとって、「概念分析」とはいかなるものなのか?――P.Winchを正確に「誤読する」試み?
岡田光弘(国際基督教大学)
 Peter Winch のThe Idea of Social Science (1958)とUnderstanding a primitive society(1964)の刊行と、そこでのWinchの立論は、特に、マンチェスター学派のエスノメソドロジー研究に大きな影響を与えた。
 Winch の論点は、「ルールを理解して身につけることと、それに従うこと」と「観察と推論を介して法則のような規則性を確立する」こととの違いである。現実の社会学者の多くは、「言語ゲーム」に参加することで、研究対象となっている社会生活の規則性を観察することはせず、法則を求めて、仮説と検証の過程へと進む。これへの批判とそれに代わる具体的な研究方針がEMであると考えられる。
 Winchの論点に、「『社会関係』は『規則に従う』ことの論理的な前提となっている。」というものがある。ここでの問題は、「社会関係」の内実である。「社会関係」は「会話における概念の交換」に例えられており、Sacksは、「概念の交換」を可視化する手だてを産み出した。
 「『規則』という語の用法は、『同じ』という語の用法と織り合わされている」とい論点について言うと、ここでの「同じ」という秩序は、「可視性」によって担保される。Garfinkelらは、Winchに「可視性」への感受性が欠けていることを指摘した。概念が作動することによって得られる「可視性」に注目することで、EMは、Winchを乗り越えて歩みを進めることができた。
5.遠距離介護のコミュニケーションにおける高齢者の本人参加――高齢者への次話者選択時の離れて暮らす子供の自己選択順番取得
中川敦(宇都宮大学)
 遠距離介護の研究においては高齢者本人の意思を尊重することの重要性が指摘されることがある。高齢者の意思を尊重するための一つの方法は、高齢者本人が、離れて暮らす家族、福祉の専門職者とのコミュニケーション中で、発話を行なう機会を作り出すことであると考えられる。ところが、実際の遠距離介護におけるコミュニケーションを観察すると、時に、高齢者本人がそうしたコミュニケーションに参与する機会が生じていても、高齢者本人ではなく、離れて暮らす子供がその機会を利用して発話を行なうことがある。本研究の目的はこうした場面に焦点を当て、そのような現象が、なぜ(why)、そのような形で(that)、その時に(now)生じているのかを、会話分析の方法を用いて明らかにすることにある。具体的に分析の対象とするのは、ケアマネジャーによって高齢者が次話者として選択されているときに、(次話者として選択されていない)離れて暮らす子供が順番取得を行なうという現象である。分析の結果、次話者選択順番と自己選択順番との間の沈黙の有無、次話者選択順番、および自己選択順番における行為の位相に、高齢者が次話者選択されているにもかかわらず、離れて暮らす子供が自己選択を行なう理由が示されていることが明らかになった。

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせは、森 一平()まで
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人 )まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは、EMCA研事務局(エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 )まで

2016年度研究会大会



→短信:報告と写真を掲載しました [2016/12/21]

EMCA研究会2016年度研究大会のプログラムをお送りいたします。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

(大会担当世話人:黒嶋智美・森一平)


  • 日時: 日時:2016年10月23日(日)10:00-17:00
  • 場所: 成城大学3号館1階 311教室・312教室  [地図]
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)

プログラム

10:00 受付開始
10:30-12:00 第一部:自由報告
セッション1 (司会 森一平(帝京大学)) 311教室
10:30-11:00 小室允人(千葉大学大学院)
「対話システムらしさ」とは何か?:WOZ法におけるシステム役の相互行為実践[→概要
11:00-11:30 浦野茂(三重県立看護大学)
社会生活技能訓練におけるロールプレイについて:その実践的特徴[→概要
11:30-12:00 大石真澄(総合研究大学院大学)
テレビCMで「おいしさ」を示すことの作用について [→概要
セッション2 (司会 黒嶋智美(日本学術振興会・千葉大学)) 312教室
10:30-11:00 フルルバト(専修大学大学院)
協力的質問[→概要
11:00-11:30 荒野侑甫(千葉大学大学院)
異文化間相互行為における第二言語の訂正活動:他者訂正のあとの繰り返し[→概要
11:30-12:00 山本真理(早稲田大学)・張承姫(関西学院大学)
一人称代名詞「私」を用いた聞き返し [→概要
12:00-13:30 昼食
13:30-14:00 総会 311教室
14:00-17:00 第二部:書評セッション
酒井泰斗、浦野茂、前田泰樹、中村和生、小宮友根(編)2016、『概念分析の社会学2』(ナカニシヤ出版) 311教室
14:00-14:05 主旨説明:司会 黒嶋智美(千葉大学)
14:05-14:45 書評1(40分):評者 池谷のぞみ(慶応義塾大学)
14:45-15:25 書評2(40分):評者 平本毅(京都大学)
15:25-15:40 休憩(15分)
15:40-16:30 編者・著者リプライ(50分)
16:30-17:00 全体討論(30分)
17:00 閉会

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自由報告発表概要

「対話システムらしさ」とは何か?:WOZ法におけるシステム役の相互行為実践
小室允人(千葉大学大学院)
本報告ではWOZ法を用いた対話システムとの会話場面を取り上げ、「対話システムらしさ」を支えるやり方について検討する。WOZ法とは、システム側の発話をコンピュータが生成するのではなく、実際はシステムのふりをした人間が発話を生成することで、あたかもシステム自体が全自動で会話をしているように見せかけるシュミレーション手法である。システムと対話する被験者には、その背後でwizard(人間)が操作しているということが隠されており、wizardはできるだけシステムが全自動で動いているということを被験者に信じ込ませる為に、いかにもシステムが言いそうな発話をあえて産出したりする。このような「対話システムらしさ」は、被験者らによってしばしば不適切な発話として理解されているが、単に不適切であるだけではなく、いかにも対話システムがやりかねない特有の不適切さとして、特定の手続きに則って成し遂げられていると考えられる。発表では、wizardが被験者との相互行為の中で実践している、システムらしく振る舞うためのやり方を明らかにすると共に、WOZ法を用いたシュミレーション実験とは、一体どのような活動として達成されているのかについても考察したい。

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浦野茂(三重県立看護大学)
この報告は、自閉症児を対象とした社会生活技能訓練について、とくにロールプレイによる練習場面を対象とし、この場面を構成している実践上の諸前提を明らかにする。社会生活技能訓練とは、精神障害者をおもな対象とし、社会生活の模擬的場面において生活技能の回復と改善を促す治療法である。ここで重視されているのは、訓練の対象者が各自の生活ニーズに沿った社会的技能を、それに即したロールプレイを通じて習得することである。このため各セッションの実施においては、実際のロールプレイを行うなかで利用者の障害特性を特定し、改善のためのフィードバックを与えることが求められている。このことを踏まえてこの報告では、ロールプレイを構成する各局面、すなわち参加者のニーズの特定と場面設定、実演の各局面を検討する。これにより、社会生活技能訓練のもつ諸特徴、すなわち訓練における評価対象となる振る舞いの水準と訓練のレリヴァンスの可視化方法、そして訓練の眼目を、実践の組み立てられ方のなかに特定することになる。

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テレビCMで「おいしさ」を示すことの作用について
大石真澄(総合研究大学院大学)
テレビCMが「モノを売る」ために行われる広告の一形式である、という定義を一旦とるとすれば、そこで対象となる食品や近辺の商品について、その「おいしさ」を示すことは、味を伝え、売り上げにつなげるための活動であると考えることができる。しかし、このことには問題が含まれているように見える。多くの相互行為研究が明らかにしてきたように、「おいしい」ことの提示は、その場の中で実際に味を伝える以外の機能をさまざまに持っているからだ。これを踏まえると、テレビCMにも「味を伝える」以上に別のことに「おいしさ」が機能している可能性がある。  この点に着目して、「おいしさ」への言及やその提示が、テレビCMの中でどのような機能を持っているかという点についての分析を行った。分析の結果、テレビCMにおいては「おいしい」という発話そのものは味の伝達に関してほぼ意味を持たず、かわりに実際の味の想起は、何らかのオブジェクトの提示によって行われていた。ここからは、わたしたちがすでに手元に持っている情報を適切に引き出すための検索のような能力をテレビCMが有していることが見えてくる。

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協力的質問
フルルバト(専修大学大学院)
本研究では英語の日常会話における相互行為とイントネーション(主に音調パターン)の役割を考察する。会話分析(CA)の方法論を用いて、語りの受け手が語り手の先行発話から復元できる情報を提示する平板調による「追加疑問文」(appendor question)を用いることで、その情報を明らかにすることを求めると同時に、その情報に関する語りの詳細に関心を持つことを示す。追加疑問文が一定の沈黙の後に提示されることは語り手に語りを継続するための時間を与えていることを示している。語り手が語りを継続して、その中で受け手の理解が解決されれば、受け手が理解候補を提示する必要がなくなるからである。追加疑問文が提示された後、語り手がその情報に関して詳細に語ることから見ると、語り手と受け手が語りの進行性に志向し、語りを協同的に進行させていることが観察できる。したがって、受け手が語りに関する理解の問題を提示するために用いた追加疑問文が受け手として語りの進行性に貢献するための協力的質問として働いていることと、そこに、追加疑問文に一般的に用いられる上昇調、あるいは、下降調ではなく、平板調が用いられることが大きく関わっていることが明らかになる。

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異文化間相互行為における第二言語の訂正活動:他者訂正のあとの繰り返し
荒野侑甫(千葉大学大学院)
 異文化間相互行為において「言語規則に正しく従うこと」に会話の参加者はいかに志向するのだろうか。この疑問に対して、第二言語の言語規則が焦点となっている訂正連鎖を観察し、そのプラクティス(やり方)を記述することで応えたい。
 本発表では、会話分析の手法を用い、日常的な異文化間相互行為における訂正連鎖にて行われる「他者訂正のあとの繰り返し」という現象について報告する。この現象は、次のように展開される。まず第二言語として日本語や英語を話す参加者(第二言語話者)が、第二言語のある表現候補を産出する。次いで、その発言の受け手が正しい発音や形式でその表現を繰り返し、訂正を行う。そして第三の順番で、最初の話者が訂正された表現をさらに繰り返す。
 本発表は、まず会話の参加者は、言語規則に正しく従うための基準をどのように提示するのか、そしてその言語に習熟した受け手はいかに提示された基準に従おうとするのかについて議論を展開する。第二に、「他者訂正のあとの繰り返し」というプラクティスによって、相互行為において何が達成されているのかについての分析を報告する。 最後に、これらのやりとりによって、いかなる活動が参加者たちによって経験されるのかについて検討をしたい。

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一人称代名詞「私」を用いた聞き返し
山本真理(早稲田大学)・張承姫(関西学院大学)
本発表では一人の参与者(話者 A)が質問を行うときに、次の応答すべき受け手(話者 B)が「私 ですか?」のような一人称代名詞を用いた形で聞き返す現象を対象とする。本研究では1)受け手 はなぜ質問の次の位置で応答をすぐに産出せずに一人称代名詞による聞き返しを行うのか、(2) それによってどのような行為がなされているのかを会話分析の立場から明らかにする。分析の結果、 いくつかの特徴がデータに観察された。まず、本稿で用いる事例は基本的には二人の会話場面であ るため、話者 B は一人称代名詞を用いて聞き返さなくとも、話者 A の質問が話者 B 自身に向けら れた発話であることが明白である。また、話者 B は「私ですか」に対する承認を待たずに応答を開 始する事例が複数あり、話者 B は必ずしも直前になされた質問の聞き取りや理解の問題には志向し ていないことがうかがえる。更に、話者 B が開始する応答は「即答できなかった」何らかの理由説 明を含んだものになっている。例えば、話者 A によって職業を問う質問がなされた場合、一般的に は「医者です」「教員です」のように一言で答えることが期待される。しかし、実際には一言では 説明しにくい職業であることが語られ、それ自体がなぜ即答できなかったのかの理由にもなってい る。以上から、本発表では次のことを主張する。話者 B は一人称代名詞による聞き返しを行うこと で、あえて「私」をハイライトした形で応答を遅らせ、応答に何らかの躊躇があることを示す。そ れにより、これから開始される私自身に関わる事柄の開示が、話者 A の質問に対する応答として一 般的に期待されるものとは何らかの形で異なっていることを事前に示す役割を果たしている。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 前田泰樹akiya0427[atmark]gmail.com
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2015年度研究例会
[開いて読む]



概 要

EMCA研究会2015年度春の研究例会を下記のとおり開催いたします。第2部では、先日刊行された、高田明・嶋田容子・川島理恵編,2016,『子育ての会話分析――おとなと子どもの「責任」はどう育つか』の書評セッションを設けました。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

大会担当世話人:戸江哲理・森本郁代
(最終更新: 2016年2月15日)

  • 日時: 3月6日(日) 10:30-17:10
  • 場所: 関西学院大学梅田キャンパス 10階1004教室 [地図
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 事前参加申込: 不要

プログラム

10:10 受付開始
10:30-12:10 第1部 自由報告
10:30-11:00 吉陽(筑波大学大学院)
「ヒア・レスポンスにおける学習者の修正やりとりの構造――問題点を指摘する連鎖に着目して」 [→要旨
11:05-11:35 平本毅(京都大学)
「会話分析におけるマルチモーダル概念再考」 [→要旨
11:40-12:10 岡田光弘(国際基督教大学)
「観察社会学(エスノメソドロジー研究)によるワーク研究の中心は教育の研究でした。」 [→要旨
13:30-17:10 第2部 書評セッション
高田明・嶋田容子・川島理恵編,2016,『子育ての会話分析――おとなと子どもの「責任」はどう育つか』昭和堂.
13:30-13:55 高田明(京都大学)
本全体についての概説
13:55-14:10 遠藤智子(日本学術振興会特別研究員RPD)・高田明
第2章「言うことを聞きなさい――行為指示における反応の追求と責任の形成」
14:10-14:35 黒嶋智美(日本学術振興会特別研究員PD)
第3章「ん?なあに?――言い直しによる責任の形成」
14:35-14:50 川島理恵(関西外国語大学短期大学部)・高田明
第7章「家族をなすこと――胎児とのコミュニケーションにおける応答責任」
14:50-15:00 休憩
15:00-15:15 コメント:橋彌和秀(九州大学)
15:15-15:30 コメント:西澤弘行(常磐大学)
15:30-15:45 コメント:五十嵐素子(北海学園大学)
15:45-15:55 休憩
15:55-16:25 執筆者陣のリプライ
16:25-17:10 総合討論
17:10 閉会

自由報告要旨

(1)「ヒア・レスポンスにおける学習者の修正やりとりの構造: 問題点を指摘する連鎖に着目して」(吉陽・筑波大学大学院)
  本研究は会話分析の研究手法を使用し、作文活動であるピア・レスポンスにおける学習者のやりとりを考察する。ピア・レスポンス(以下PR)とは学習者同士がお互いに書いた作文をもとに書き手と読み手の立場を交換しながら、インターアクションを通して作文を検討する活動である(池田2003)。PRにおいて、読み手は相手の作文について、自分のコメントや意見を述べる役割を持っており、さらに、相手の作文を改善するために、肯定的なコメントより、作文における問題点を指摘することは主要な行為だと言える。しかし、PRのような相手の作文に問題点を指摘する行為は正当な場においても、相手のファイスを脅かす危険性が存在しており、同じく学習者である相手の作文に対して、問題点指摘は容易なことではないと考えられる。
  したがって、本研究は会話分析という研究手法を用いて、PRにおいて、読み手はどのように相手の作文について問題点を指摘するのかを明らかにすることを目的とする。
  分析結果として、読み手は主に?問題点指摘の連鎖に入る前に、書き手の意図を確認するプレ的な連鎖を用いること、?問題点に対して、可能な改善案を提示する、という2つの方法を用いることがわかった。
(2)「会話分析におけるマルチモーダル概念再考」(平本毅・京都大学)
  会話分析研究の最近の潮流の一つに、身振りや視線、道具使用などの、相互行為における非音声言語的資源のはたらきを解明するマルチモーダル(Multi-modal)分析(Stivers & Sidnell, 2005; Streeck, Goodwin & LeBaron, 2011)がある。
  本発表では会話分析研究の歴史の中での非音声言語的資源の扱いをレビューし、また現在の研究事例の中でマルチモーダル概念がどう使われているかを概観したうえで、会話分析者がこの概念をどう位置づけるべきかを論じる。その結果、マルチモーダル分析の主導者たるGoodwin夫妻に加えSacksSchegloffらも早い時期から身体資源の分析を行ってきたこと、マルチモーダル概念が社会記号論など外部の分野から持ち込まれたものであること、この輸入にはGoodwin夫妻の2000年前後の研究動向が密接に関わっていること、現在マルチモーダル概念が使用される際に、しばしば既存の音声言語資源中心の会話分析研究との対比が行われることなどが明らかになる。
  以上をふまえたうえでの報告者の暫定的な結論は、マルチモーダル概念は研究のポジショニングを行う際や議論を整理する際に便利なものなのでその点において有用性がみとめられるが、それが会話分析研究の志向性とどれだけ整合的かは認識しながら使うべきであり、とりわけ分析上の記述に用いる際には細心の注意が必要だというものである。
(3)「観察社会学(エスノメソドロジー研究)によるワーク研究の中心は教育の研究でした。」(岡田光弘・国際基督教大学)
目的:EMCA,特に、ワークのエスノメソドロジー研究(ESW)における教育研究の意義を明らかにすること
方法:ESWにおける教育研究の伝統を学史において示すこと
結論:観察社会学(エスノメソドロジー研究)においては、ワークは、何らかの「方法による達成」を指す言葉である。研究史をひもとくならば、ワーク研究(ESW)は、Sacksらによる会話の達成をモデルに、GarfinkelSudnowによる大学での化学の講義を研究したのがその嚆矢であった。この流れは、Garfinkelと、その弟子であるBurnsによる研究に引き継がれた。彼女とGarfinkelとの研究は、大学での社会学の講義をフィールドに行なわれたものだった。その後、師の教えに遵いイエール大学のロースクールに進んだBurnsは、自らの経験に基づき、法曹教育を題材にして教育のワーク研究を行なうことになる。
  観察社会学は、メンバーの(Ethno)方法に学ぶ営み(Methodology)である。そこには、身体で学んだ適格な能力(Vulgar Competence)に基づき、その場で起こっている「固有の方法に寄り添うべしという要請(Unique Adequacy Requirement)」がある。そのためは、必ず、研究対象である活動の実践者でもあることが必要なのであろうか。それは、いわゆるオート・エスノグラフィとは何が違うのだろうか。
  先に挙げた Garfinkel - Sudnow - Burns という流れ以外の、Garfinkel - Lynch & Macbeth、また Garfinkel - Livingstone という教育のワーク研究の流れにも触れ、こういったことについて考えたい。

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせは、森本()まで
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人 )まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは、EMCA研事務局(エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 )まで

2015年度研究会大会



→短信:報告と写真を掲載しました [2016/02/26]

概要

EMCA研究会2015年度研究大会を下記のとおり開催いたします。第二部では、翻訳書『診療場面のコミュニケーション:会話分析からわかること』が出版されたばかりの、ジョン・ヘリテージ先生およびダグラス・メイナード先生に、ご講演いただきます。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

(大会担当世話人:前田泰樹・黒嶋智美)


  • 日時: 10月24日(土)10:00-17:00
  • 場所: 東海大学高輪キャンパス 4201・4202教室  [地図]
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)

プログラム

10:00 受付開始
10:30-12:00 第一部:自由報告
10:30-11:00 鈴木雅博(大同大学)
教師間相互行為における成員カテゴリーの諸相[→概要
11:00-11:30 三部光太郎(千葉大学大学院)
クライアントの応答を組み換える―キャリア形成支援カウンセリングにおける、意志、動機、責任の帰属実践についての会話分析[→概要
11:30-12:00 海老田大五朗(新潟青陵大学)
T学園/C社の組織デザインと商品開発 [→概要
12:00-13:30 昼食
13:30-14:00 総会
14:00-17:00 第二部:特別講演 (講演は英語で行われます)
14:00-14:05 主旨説明:司会 黒嶋智美(千葉大学)
14:05-14:50 John Heritage(University of California, Los Angeles)
Are explicit apologies proportional to the offenses they address? [→概要
14:50-14:55 指定討論:串田秀也(大阪教育大学)
14:55-15:05 リプライおよび質疑応答
15:05-15:10 休憩(5分)
15:10-15:55 Doug Maynard(University of Wisconsin-Madison)
Directing & assessing children during Autism diagnosis: An EMCA perspective →概要
15:55-16:00 指定討論:浦野 茂(三重県立看護大学)
16:00-16:10 リプライおよび質疑応答
16:10-16:15 休憩(5分)
16:15-17:00 全体討論
17:00 閉会

講演概要

Are explicit apologies proportional to the offenses they address?
John Heritage University of California, Los Angeles, USA
In this paper, we consider Goffman's proposal of proportionality between virtual offenses and remedial actions, based on the examination of 102 cases of explicit apologies. To this end, we offer a typology of the primary apology formats within the dataset, together with a broad categorization of the types of virtual offenses to which these apologies are addressed. We find a broad proportionality between apologies and the offenses they remediate when the offenses to be remediated are minor, however this relationship is not sustained among larger apologies and offenses. In the latter cases, relational and contextual contingencies are important intervening factors influencing apology construction.
Directing & assessing children during Autism diagnosis: An EMCA perspective
Doug Maynard University of Wisconsin-Madison, USA
This presentation is labeled “notes” because it is an outline of research in progress. This project, funded by the U.S. National Science Foundation, involves field research entitled, “The Sociology of Testing and Diagnosis for Autism Spectrum Disorder (ASD).” From this project, I aim to identify three phenomena. First, I show the relationship between ASD and the avenue it carves into the ethnomethodological world of everyday practices. Original definitions of autism in the work of Kanner (1943) and Asperger (1944) basically describe breaches of commonsense order, and thereby suggest how ASD may give access to what commonsense consists of. Second, in clinical testing, breaches of commonsense often show up as violations of “directive-response” sequences. After being asked for a particular answer or performance, the child appears to be willfully noncompliant. Third, clinicians make sense of such conduct by depicting the agency of a child separate from the interactional contexts in which violations occur. Clinical sense making also includes “anecdotal optimism,” which is putting a positive twist on the child’s otherwise violative behavior. Once again, commonsense works toward providing for the appearance of a benign social world. To demonstrate the robustness of these phenomena, I will show two examples from different eras in the diagnosis of autism.

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自由報告発表概要

教師間相互行為における成員カテゴリーの諸相
鈴木雅博(大同大学)
本発表は,教師が相互行為のなかで種々の成員カテゴリーへと自他を定式化しながら,成員カテゴリーに関連する諸規範を参照することで自らの仕事の有り様を規定していくワークを記述することを目的とする。調査は2009年から2年間にわたり公立中学校において実施されたものであり,本発表では,下校時刻の繰上げをめぐる運営委員会での議論を対象とする。記録はフィールドノーツによるものである。運営委員会は職員会議への提出原案を先議する場であり,管理職のほか学年主任・校務分掌部長等が参加する。ここでの議論は,条例改正による勤務時間短縮にともなって下校時刻の繰上げが提案されたことを契機としている。原案は繰上げ期間を一部に限定していたため,より一層の繰上げを求める者と原案を擁護する者との間で論争となった。そこでは,教師たちが〈労働〉/〈教育〉/〈リスク〉といった各カテゴリー集合を枠組みとして論じることで,また,各カテゴリー集合に付随する諸規範を参照することで,原案の擁護/対抗を成し遂げていた。本発表ではこのワークを対象とした検討を行う。
クライアントの応答を組み換える―キャリア形成支援カウンセリングにおける、意志、動機、責任の帰属実践についての会話分析
三部光太郎(千葉大学大学院)
本報告が取り上げる活動は、ハローワークや各種学校、企業や就労支援を行うNPOなどで行われている、キャリア形成を支援する相談活動(キャリア・カウンセリング)である。相談活動の序盤において、カウンセラーはクライアントの過去や現在、将来の展望についての情報を収集する活動に従事する。その過程は基本的に、「カウンセラーによる質問‐クライアントによる応答」という行為連鎖として進行するが、時としてカウンセラーは、クライアントの応答の直後(あるいは最中)に、それまでのクライアントの応答の発話を、言葉の付け足し、削除、置き換えなどを行いながら繰り返し、クライアントに対して確認を求める。本報告が明らかにするのは、そうした確認質問を通じて、カウンセラーがクライアントに意志や動機、責任などを帰属(しようと)する実践の編成である。報告当日は、個別事例の分析をいくつか示したうえで、報告の後半において、どのような仕方で個別事例の分析を相互に関連付けるべきかについて、検討を行うことを予定している。

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T学園/C社の組織デザインと商品開発
海老田大五朗(新潟青陵大学)
障害のおもさを総合的に判断する基準の一つに、「就労の可否」がある。つまり、「働くことができる」障害者は軽度、「働くことができない」障害者は重度と分類されうる。したがって、一般に重度障害者を受け入れる生活介護施設/施設入所支援では、軽作業などの訓練がなされることはあるが、その軽作業が経済的な見返りをもたらすことはない。しかしながら、作業訓練として農業を取り入れ、山の斜面で葡萄をつくり、その葡萄でワインをつくる会社を立ち上げ、そこで作られたワインの売り上げで、重度障害者を受け入れる生活介護施設/施設入所支援施設に一般企業が支払う、給与でもなければ就労支援施設が支払う工賃でもない、「作業収益の分配」として分配金をもたらす仕組みをつくった組織がある。しかもその組織は30年以上も継続している。本報告の目的は、そのような仕組みを持つ、T学園/C社がどのように組織されているかを明らかにすることである。そして、組織運営の継続の鍵となる、商品としてのワインの商品開発やその歴史について、当時の経営者や技術開発に携わったアドバイザーの証言をもとに再構成することを目的とする。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 前田泰樹akiya0427[atmark]gmail.com
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2014年度研究例会
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→短信:報告と写真を掲載しました [2016/02/19]

概 要

EMCA研究会2014年度研究例会のプログラムをお送りいたします。本年は樫村志郎先生先生(神戸大学)にご講演いただきます。また、書評セッション、自由報告を企画しております。多くのみなさまのご参加をお待 ちしております。

大会担当世話人:平本毅、秋谷直矩
(最終更新: 2015年2月13日)

  • 日時: 2015年3月8日(日)9:30-17:45
  • 場所: 立命館大学梅田キャンパス(大阪富国生命ビル)14階多目的室・演習室2 [キャンパスマップ
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 事前参加申込: 不要

プログラム

9:30 受付開始
09:30-12:25 第一部:書評セッション(多目的室)
09:30-10:25 山本真理(早稲田大学)「物語の受け手によるセリフ発話:物語の相互行為的展開」
書評者:黒嶋智美(日本学術振興会)須賀あゆみ(奈良女子大学)
10:30-11:25 池上賢(立教大学)「メディア経験とオーディエンス・アイデンティティ:語り・パフォーマンス・エスノメソドロジー」
書評者:岡田光弘(国際基督教大学)南保輔(成城大学)
11:30-12:25 團康晃(東京大学)「学校の中の物語作者たち─大学ノートを用いた協同での物語制作を事例に」
書評者:戸江哲理(神戸女学院大学)森一平(東京大学)
12:30-14:00 昼食
14:00-16:30 第二部:自由報告(多目的室)
14:00-14:45 荒野侑甫(ニューカッスル大学)
「第一言語話者と第二言語話者による相互行為における協力的方法」 [→要旨
14:45-15:30 重吉知美(短歌結社水甕)・是永論(立教大学)
「短歌の歌会における「批評」の実践」 [→要旨
15:30-16:15 梅村弥生(筑波大学)
「2つのドキュメントを繋げる会話─蘇州日系プラスチック工場における日本人社員と中国人社員との会話から─」 [→要旨
16:15-16:25 休憩
16:25-17:45 第三部:講演(多目的室)
16:20-17:05 樫村志郎先生(神戸大学)
「「相互反映性の原則」の学説的起源 ─1920年~40年代の質的方法論とエスノメソドロジーの原構想─」 [→要旨
17:05-17:20 指定討論者:中村和生(青森大学)
17:20-17:45 総合討論
17:45 閉会

講演

「「相互反映性の原則」の学説的起源 ─1920年~40年代の質的方法論とエスノメソドロジーの原構想─」
樫村志郎(神戸大学)
Garfinkel の『エスノメソドロジー研究』(1967年、viiページ)によれば、エスノメソドロジーのプログラムは、メンバーの方法論に着目することで、日常的活動とその説明可能性の間の「相互反映性」を観察し検討可能にすることを通じて、社会的活動の組織を研究するものと主張される。メンバーの方法はその日常的活動の様相であるとともに、その同一の活動を説明可能にするものであるから、「相互反映性」の現象とは、日常的活動とその説明可能性の間に同一性があることである。この主張──「相互反映性の原則」とよぶ──は、この同一性がメンバーの諸方法の行使の達成として見て取られ、検討され、研究されることができるという主張である。いわゆる「ドキュメンタリー解釈法」や「会話の展開と発話の解釈」や「陪審員の方法」等の事例は、メンバーの諸方法の行使の達成として分析された相互反映性の現象の例である。だが、その方法論的基礎-とくにそれがどのような方法論的意義や学説史的由来をもつものか-はなお十分に明らかになっていない。本報告では、「相互反映性の原則」が「エスノメソドロジー以前」の Garfinkel によるアメリカ社会学の批判的理解から生み出されたという一般的な考え方を示唆したい。とくに Thomas と Znaniecki の『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』(1918-20) と Garfinkel の初期研究、および Mannheim の「世界観の解釈について」(1923=1952)の方法論を検討することを通じ、その構想が、他の源泉-とりわけ重要なのは、Schutz と Gurwitsch の現象学、Burke と Parsons の行為理論-とともに、1920年代から40年代における「行為者の視点」または「状況の定義」の尊重という主観主義的社会学方法論に由来するという解釈を提示する。
なお、本報告は、2014年5月、2014年10月、2014年11月に行った報告をもとにしている。これらの報告原稿およびスライドのいくつかはつぎのURLで入手できる。

自由報告発表概要

(1)第一言語話者と第二言語話者による相互行為における協力的方法
荒野侑甫(ニューカッスル大学)
本発表では、高等教育における英語の第一言語話者と第二言語話者による相互行為(L2相互行為)、複数人による会話、制度的会話への理解をこれまでより深めることを目的とし、学生同士によるグループ・ミーティング──とくに外国語教育の教室以外における言語活動の実践──を会話分析の観点から観察・分析する。本発表の目的を遂行させるために、まず (1)その場面による会話参加者による相互理解を保つためのユニークな方法について探求する。ここでは、参与者同士が行う協力的なシークエンスの例、とくに特異的な修復、コール・アンド・レスポンスなどをいくつか提示する。次いで本研究の観察・分析の結果を (2) 先行研究などと比較し議論を展開したい。そこでは (3) まず学生同士によるミーティングの「制度的」な要素について触れ、(4) 次いで分析にて明らかになった協力的な方法について考察する。なお、本発表で使用するデータは、2013年から2014年までにイングランドの国立大学のコンピュータ・サイエンスの授業のグループ・ミーティング(学部および修士)の様子をビデオで録画したものである。
(2)「自短歌の歌会における「批評」の実践」
重吉知美(短歌結社水甕)・是永論(立教大学)
短歌の創作者はグループとして「歌会」を催す。参加者は自作の短歌を持ち寄り、相互に批評を行う。歌会で「優れた歌人の批評を聞いたり、彼らの実作の現場に立ち会ったりする体験」(穂村 2000)は短歌創作にとって重要とされている。
本研究はエスノメソドロジーの視点から、あるグループの歌会における相互行為の中で「批評」が組織化される実践の分析を行う。分析においては、参加者が他者の作品について質問や対話を通じて解釈を行い、言葉の選択について改善点を述べるといった相互行為上の実践を通じて「批評」をどのように構成しているのかが焦点となる。さらに、多くの場合、作者自身の体験が短歌のモチーフとなっている点から、人々が「経験に対する資格」(Sacks 1992)をどのように参照しながら、作品そのものを理解可能なものとしているのかという点にも注目する。
以上の分析を通じて、観察された歌会において特有の批評の場が構成される過程があることとともに、その体験を通じて参加者が作歌の技術を向上させていることを、分析者自身による歌人としてのエスノグラフィーを踏まえて確認する。
(3)「2つのドキュメントを繋げる会話─蘇州日系プラスチック工場における日本人社員と中国人社員との会話から─」
梅村弥生(筑波大学)
本研究の目的は、職場の情報交換における社員同士の相互行為を詳細に記述することである。とりわけ、社員らの手元にあるドキュメントを「見る」行為と、ドキュメントに記載されていない情報の開示がどのように進行し、発話にどのように埋め込まれているかという問いに焦点を当てる。
本研究のフィールドは、中国蘇州にある日系のプラスチック部品製造工場である。日本人社員 A は、プラスチック部品の金型の製造と修理を受け持つ技術部の社員である。一方、現地社員 B は、社内の全ての金型修理を管理する部署の課長である。 A は自分が作成したドキュメントの金型修理以降の情報覧(試作中・大量生産中・保留中など)を埋めるために、B に質問する。しかし、修理に関わる全ての履歴が記載されたドキュメントが B の手元に無いため、B は情報の記憶を辿りながら答える。2人の会話には、2つのドキュメントを統合する行為が埋め込まれている。会話の途中で、双方の行為のすれ違いが観察され、AB間の質疑応答が不自然に引き延ばされる。しかし、社員Bが修復を開始し解決に至る。
 

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせは、秋谷()まで
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人 )まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは、EMCA研事務局(エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 )まで

2014年度研究会大会



→短信:報告と写真を掲載しました [2016/03/02]

概要

EMCA研究会2014年度研究大会のプログラムをお送りいたします。本年は、林誠先生(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)にご講演いただきます。また、自由報告のほか、新たな取り組みとして、若手研究者のキャリアパスを考えるためのセッションを設けました。最近就職された方々に話題提供をいただき、エスノメソドロジー・会話分析研究(者)の来し方行く末について議論・情報交換をする予定です。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

(大会担当世話人:平本毅、秋谷直矩)


  • 日時: 10月12日(日)10:00-17:30
  • 場所: 立命館大学梅田キャンパス(大阪富国生命ビル)14階多目的室・演習室2 [地図]
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)

プログラム

9:30 受付開始
10:00-11:30 第一部:自由報告 【多目的室】
10:00-10:45 森本郁代(関西学院大学)
過去の出来事についての語りにおける指さしと認識性[→概要
10:45-11:30 中川敦(島根県立大学)
遠距離介護の意思決定過程の会話分析――統語的未完結発話とその統語的続きによる発話に注目して[→概要
11:30-12:40 第二部:キャリアパスセッション 【多目的室】
  11:30-11:40 主旨説明:司会 秋谷直矩・平本毅(京都大学)
  11:40-12:00 話題提供1:小宮友根(東北学院大学)
  12:00-12:20 話題提供2:海老田大五朗(新潟青陵大学)
  12:20-12:40 話題提供3:川島理恵(関西外語大学)
12:40-13:50 昼食
※なお、この時間はキャリアパスセッション後話題提供者を含めた参加者らとのフリートークセッションとしても位置付けておりますので、こちらに参加する方はあらかじめお昼を持参してください
13:50-14:20 総会
14:20-15:50 第三部:自由報告(多目的室・演習室2のパラレルセッションになります) 
  【多目的室】
14:20-15:05 リュウガクカン(滋賀県立大学)
カーレースの実況中継における新旧活動のマネジメント [→概要
15:05-15:50 藤原信行(立命館大学)
自死遺族らによる自殺動機付与・責任帰属活動と動機の語彙・成員カテゴリー [→概要
  【演習室2】
14:20-15:05 張承姫(関西学院大学)
褒めと褒めに対する焦点ずらしの応答について [→概要
15:05-15:50 杜長俊(筑波大学)
「プレプレ」と「プレデリケート」が交差する瞬間――指示表現で発話順番を完結させる現象をめぐって [→概要
15:50-16:00 休憩
16:00-17:30 第四部:講演 【多目的室】
16:00-16:35 林誠先生(イリノイ大学 アーバナ・シャンペーン校)
Collateral effects(付随効果)と相互行為言語学の展望 [→概要
16:35-16:55 指定討論者:鈴木佳奈(広島国際大学)
16:55-17:30 総合討論
17:30  閉会

講演概要

Collateral effects(付随効果)と相互行為言語学の展望
林誠先生(イリノイ大学 アーバナ・シャンペーン校)
この発表では、Sidnell & Enfield (2012)によって提唱された collateral effects (付随効果)という概念を紹介しつつ、相互行為言語学・会話分析からみた文法研究の近年の動向、今後の展開について議論する。「言語相対論研究の第3の領域」として提案された collateral effects という概念は、示唆に富むものではあるものの同時に批判の余地もある概念である。この発表を機に、EMCA研の方々と大いに議論できることを期待する。
参考文献
Sidnell, J. & Enfield, N. J. (2012). Language diversity and social action : A third locus of linguistic relativity. Current Anthropology 53, 302-333.

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自由報告発表概要

過去の出来事についての語りにおける指さしと認識性
森本郁代(関西学院大学)
本報告では、3人以上の参与者による会話において、話し手が受け手の一人が関わる過去の出来事を語る時に、その受け手に対して指さし(pointing)を行うというふるまいを記述し、指さしが、語られている出来事に関する受け手の「認識的優位(epistemic primacy)」(Hayano, 2013)を示す手段として用いられていることを明らかにする。
指さしというふるまいは、物理的な空間における人や物、場所、方向だけでなく、その場に存在しない抽象的な対象を指し示す手段としても用いられている(Kita, 2003; Kendon,2004)。従来、指さしが何を指し示しているかは自明であるかのように考えられてきた。しかし、近年の研究で、指さしの対象は、指さしが埋め込まれている活動や行為を参照することによってはじめて理解可能になることが明らかにされてきている(Goodwin, 2003; Mondada, 2007)。本報告の分析は、指さしの対象が理解可能になる過程だけでなく、話し手が語っている過去の出来事の帰属先として受け手を指示していることを明らかにするとともに、受け手の認識的優位を示すことによって、話し手がどのような行為を達成しているのかを記述する。
引用文献
Goodwin, Charles. 2003. Pointing as situated practice. In Sotaro Kita (ed.) Pointing: Where language, culture, and cognition meet, 217-215. New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates, Inc.
Hayano, Kaoru. 2013. Territories of Knowledge in Japanese Conversation. Unpublished PhD dissertation, Radboud Universiteit, Nijmengen. Kendon, Adam. 2004. Gesture: Visible action as utterance. Cambridge: Cambridge University Press.
Kita, Sotaro. 2003. Pointing: A foundation building block of human communication. In Sotaro Kita (ed.) Pointing: Where language, culture, and cognition meet, 1-8. New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates, Inc.
Mondada, Lozenza. 2007. Multimodal resources for turn-taking: pointing and the emergence of possible next speakers. Discourse Studies, 9(2):194-225.
遠距離介護の意思決定過程の会話分析――統語的未完結発話とその統語的続きによる発話に注目して
中川敦(島根県立大学)
本報告では、遠距離介護者、福祉・医療の支援者が参加して行なわれたケア会議のビデオデータ分析を通じて、遠距離介護の意思決定を実現していく過程で利用される1つのプラクティスを明らかにしたい。具体的に注目するのは、①先行発話が統語的に完結していないが、相手に言いたいことが伝わるようにデザインされており、②その時点でターンが区切られ、③先行発話とは異なる話者による後方発話において、統語的に未完結であった先行発話の統語的な続きが発せられるケースである。こうしたケースのコレクションの検討からは、先行発話については、(ⅰ)発話の中で最も言いたことが述べられた部分で止めるパターン、(ⅱ)デリケートな事柄を最後まで言わないパターンがあることが観察された。後方発話については、聞き手の立場からの先行発話に対する「同調」などを明確に示しながら発話を組み立てているケースが多いことが観察された。報告では、こうした観察を精緻化しながら、発話が成し遂げている行為の宛先などにも注意を払い、そうしたプラクティスが遠距離介護の意思決定過程について持つインプリケーションについても言及したい。

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カーレースの実況中継における新旧活動のマネジメント
リュウガクカン(滋賀県立大学)
実況中継という活動は、参加者たちが絶えず変化する状況にアクセスしながら、相互行為的に行われる。本研究は、カーレースの実況中継において、参加者たち(アナウンサー1人、解説者2人)は、いかに現在進行中の活動とは別に、画面内の状況を手がかりに、新たな活動を開始するかを分析する。具体的には、進行中のコメント活動が行われている最中に、しばしば画面内では、新たな出来事の兆候が現れる。この時、進行中のコメントの話者は、自らその兆候に志向し、発話を中断し、新たなコメントを開始する場合と、話者以外の参加者が兆候に志向し、発語をすることで、進行中のコメントを提案する場合がある。本研究では、主に後者のほうに注目し、参加者はどんな方法を使って、特定の活動を提案するかを分析する。
自死遺族らによる自殺動機付与・責任帰属活動と動機の語彙・成員カテゴリー
藤原信行(立命館大学)
自死遺族たちが直面するさまざまな困難の一つとして,近親者の自殺の動機付与と責任帰属をめぐる問題がある.この自死遺族らが直面させられている困難は,死生学等では自殺や自死遺族にたいする人びとの偏見,すなわち〈こころ〉の問題として理解され,かつそのような偏見の持ち主を〈遺族らのこころを傷つける者〉だとして非難している.しかし,当該問題をそのように心理内在的なこととして記述し非難することは,その経験的記述(と問題解決)を困難たらしめる.そこで本発表では,1980年代後半に自ら命を絶ったAさんの自殺動機と死の責任をめぐって争いつづけてきた遺族BさんとCさん(くわえて,Aさんの職場関係者Dさん)へのインタビューデータをもとに,自殺の動機付与と責任帰属をめぐる問題を,彼女/彼らによる自殺動機(動機の語彙)の付与と成員カテゴリーの執行,そして責任帰属の(未)達成にいたる過程として記述していく.またその記述をつうじて,自死遺族らを自殺の責任をめぐる〈対立・自責・葛藤・逡巡〉か,さもなくば原因/動機にかんする〈わけのわからなさ〉に佇みつづけるかの〈二者択一〉へと否応なしに直面させるものとしての,われわれの家族的紐帯の組織化の論理にも言及できればと考えている.

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褒めと褒めに対する焦点ずらしの応答について
張承姫(関西学院大学)
本研究で注目するほめに対する焦点ずらしの応答とは、ほめられた側が自画自賛を回避するため、ポジティブな評価の対象を別の側面にずらして応答するやり方である。本研究では、会話分析の手法を用いて以下の点を分析・記述したい。第一に、従来の日本語におけるほめの研究は、ほめ手の発話の評価対象のタイプを区別せずにほめの応答を分析してきた。それに対し、本研究は、ほめの発話の評価対象のタイプを「聞き手自身」と「聞き手が属するもの」とに区別し、異なる評価対象のタイプによってほめられた側の応答が異なって行くことを提示する。第二に、評価対象によって異なる応答が行われても、焦点ずらしの応答というやり方が見られることを示し、第三に、この焦点のずらし方も、「聞き手自身」あるいは「聞き手が属するもの」という評価対象のタイプによって異なって行くことを提示する。この分析を通して、ほめられた側の応答は話し手の評価対象のタイプと密接にかかわっていることを明らかにする。
「プレプレ」と「プレデリケート」が交差する瞬間――指示表現で発話順番を完結させる現象をめぐって
杜長俊(筑波大学)
本発表は、「1つ聞こうとおもってたけど」「お願いがあるんだけど」のような、質問または依頼という行為を予示させる発話の直後に、「お祝い.」「プリンターのインク.」というように、それらの行為に関わる指示対象を指し示す表現(以下、指示表現とする)を産出し、指示表現の産出とともに順番を完結させる現象を取り扱う。本題行為を予示させる現象は、しばしば指示表現の認識に関する確認のやりとりのような、本題行為に向けた準備を差し挟むことから、「プレプレ」と呼ばれる。本発表では、指示表現で発話順番を終えるという特徴的な現象に注目し、これまでの研究で解明されていない現象の分析を試みる。
分析対象の発話は、下降調のイントネーションで指示表現を産出し、指示表現に関して相手が認識できる、つまり認識の問題がないという想定を示している。この一方で、認識の問題がないと想定しているにもかかわらず、「依頼」「質問」という行為に移ることをしていない。むしろ、発話順番を完結させ、相手に順番を取らせる。これにより、本題行為に移ることに慎重であるという態度を示すとともに、指示表現を認識できるという想定に対する相手の反応を求めることが可能となる。こうして本題の行為の産出に向け、話者が慎重な態度を示し、指示表現の共有認識の想定を焦点化している。このことから、このような発話は、本題行為の産出が話者にとってデリケートなものであることを示すと同時に、「相手との生活史」という水準において、指示表現の認識を喚起していると言えよう。最終的に本発表では、相手の反応及び後続の会話の展開から、これらの発話が相互行為上何を達成しようとしているのかについて明らかにする。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 秋谷直矩akiya0427[atmark]gmail.com
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2013年度研究例会
[開いて読む]



→短信:報告と写真を掲載しました [2016/02/17]

概 要

2014年3月21日金曜日(祝日)に東海大学高輪キャンパスにて、emca研春の例会を開催します。
多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

大会担当世話人:前田泰樹、黒嶋智美
(最終更新: 2014年2月25日)

  • 日時: 2014年3月21日(祝金)10:00-17:00
  • 場所: 東海大学高輪キャンパス 4101教室 [キャンパスマップ
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 事前参加申込: 不要

プログラム

9:30 受付開始
10:00-12:30第一部:自由報告
10:00-10:30須永将史(首都大学東京)
「痛み」に関する質問について [→要旨
10:30-11:00長谷川紫穂(埼玉大学)・胡思楊・福島三穂子・山崎敬一
言語構造によるレスポンスの違い:日英比較クイズロボット実験から [→要旨
11:00-11:30佐藤信吾(埼玉大学)
遠隔的共同作業における相互理解の実践 [→要旨
11:30-12:00谷川千佳子(神戸市看護大学)
外来看護師長による作業(ワーク)の組織化 [→要旨
12:00-12:30團康晃(東京大学)
このクラスは変われる:二つの生徒指導を通した「クラス」の方向性の提示を事例に [→要旨
12:30-14:00昼食
14:00-17:00第二部:書評セッション 『共感の技法』(勁草書房)
14:00-14:05主旨説明:司会 小宮友根(明治学院大学)
14:05-14:45書評1(40分):評者 樫村志郎(神戸大学)
14:45-15:25書評2(40分):評者 串田秀也(大阪教育大学)
15:25-15:40休憩(15分)
15:40-16:30著者リプライ&討論(50分):西阪仰・早野薫・須永将史・岩田夏帆・黒嶋智美
16:30-17:00全体討論(30分)
17:00閉会

報告要旨

(1)「痛み」に関する質問について
須永将史(首都大学東京)
本発表では、在宅医療マッサージにおける相互行為を対象とする。在宅医療マッサージでは、施術者と患者が会話しながらマッサージによる施術が進行する。施術者と患者は施術のなかで、さまざまなことがらを会話のトピックとしてあつかう。患者の病状・体調について話をおこなうこともあれば、施術の前日に患者がどのような一日を送っていたかなど、トピックは多岐に渡る。さまざまなトピックが展開するなか、本発表が注目するのは、とりわけ患者の「痛み」について施術者が質問するそのやり方である。「痛み」に関する質問は、患者の身体に触れながらなされることもあれば、患者の身体に触れずになされることもある。問題は、痛みに関する質問が施術者からなされるとき、どのような相互行為的環境にありながらその質問がなされているのか、である。本発表では、痛みが問われるそのやり方を、質問のデザインという観点からあきらかにする。
(2)言語構造によるレスポンスの違い:日英比較クイズロボット実験から
長谷川紫穂(埼玉大学)・胡思楊・福島三穂子・山崎敬一
本研究は、教室場面やミュージアムガイドなど多人数に対する説明や解説を想定したクイズロボットを用いた、人間とロボットのコミュニケーション研究の一環であるが、日本語と英語という異なる言語での実験と分析を通して、質問と返答という会話構造における日英の相違点を分析するとともに、クイズロボットとのコミュニケーション設計において言語差を考慮する上での一助となる知見を明らかにすることを目的とする。 実験では、立ち位置が静止した状態で、ある画像を使って解説を行なう場面を設定し、被験者と対面したクイズロボットが問題を出題するが、この際、各問題には被験者の知識変化を目的としたキーワードが組み込まれる。実験結果より、日本語話者/英語話者のどちらへの実験でも、キーワード箇所による被験者反応と知識変化が起こることが観察された。しかしながらそこでは、言語的構造の違いから、キーワードの位置が大きくずれることとなり、そのことが被験者反応に違いを生じさせている。 本発表では、日本語話者と英語話者の比較実験から、クイズロボットの問題出題におけるキーワード位置と被験者反応について、その関係性について分析を行なう。
(3)遠隔的共同作業における相互理解の実践
佐藤信吾(埼玉大学)
本発表では、遠隔的な共同作業において相互理解がどのように実践されているのか、外出困難な高齢者の買い物を遠隔操作型アバターロボットで支援した実験の事例を通して報告する。外出困難な高齢者は、他者と関わる機会が少なく、また日常活動であるはずの買い物でさえも満足に行うことは難しい。筆者らは、そうした高齢者にアバターロボットを介してケアワーカーや店舗の店員らと共同作業というかたちで買い物ができるよう支援した。本来、カメラの映像越しでの遠隔的な共同作業においては、「見える」という言葉に「映像が見える」という意味と「映像の中に映っている物が見える」という意味の二つの意味が生じるため、どちらの意味でその発話が用いられているのか発話者によって一つ一つ明示されなければ伝わりきらないという問題や、ロボットのいる側からロボット操作者側を視覚的に見られない状況ではロボットのいる側の参与者にはロボット操作者らが「指示対象物を本当に見えているのか」ということが、完全には理解できないという問題が生じる。こうした互いの行為にかかわる理解の問題をどのようにふるまい合うことで解決できているのか、実験によって明らかになったことを報告する。
(4)外来看護師長による作業(ワーク)の組織化
谷川千佳子(神戸市看護大学)
外来看護師長がその職務を、どのように作業の組織化をして遂行しているかについて報告したい。 分析には小規模病院外来看護部門の看護師・看護師長を対象に行ったフィールドワークからのデータを使用する。 調査では看護師長に終日シャドーイングおよびインタビューを行い、フィールドノートを作成した(録音は許可されていない)。 師長が当該施設で担っている職務のうち、患者へのトラブル対応および、通常の外来診療とは異なる対応を要した診察を実現するために、いかに情報を集約し、時間・空間、人材をアレンジしたかについて述べたい。
(5)このクラスは変われる:二つの生徒指導を通した「クラス」の方向性の提示を事例に
團康晃(東京大学)
学校の中、教師は生徒に対し授業をはじめとする学習指導や進路指導を日々行っている。一方、生徒の日常生活についての指導として「生徒指導」と公的に呼ばれる活動も行っている。本報告では、フィールドワークの中で記録した教師達の「生徒指導」の具体事例をとりあげ、教師の指導のデザインに着目し、活動の構造を明らかにすることである。 教師は授業における逸脱行為に対する指導のようにその場限りの指導を行う一方、あるトラブルに対し異なる教師が複数回指導を行う場合があった。その事例として、生徒間で生じた「からかい」に関する生徒指導の事例をとりあげる。授業内に生徒間で「からかい」が繰り返しなされていた時、授業担当の教師は「からかい」を行う生徒に対し直接の指導を行った。その後、担任の教師は直接の指導を受けて、帰りのショートホームルームで講話、つまり異なる指導を行っている。この二つの「生徒指導」は、後者の指導が前者の指導に連続したものとして組織される中で、トラブルの帰属先が特定の「生徒」から、「クラス」へと変え、直接的なトラブルの指導からトラブルをなくしうる「クラス」であることの確認へと指導の内容を変えることで、同一トラブルに対する一連なりの「生徒指導」として理解可能なものとなっていた。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせは、前田()まで
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人 )まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは、EMCA研事務局(エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 )まで

2013年度研究会大会



概要

EMCA研究会2013年度研究大会のプログラムをお届けいたします。多くのみなさまのご参集をお待ちしております。

(大会担当世話人:浦野茂・川島理恵・串田秀也)

プログラム

10:30受付開始
11:00-12:30第一部:自由報告
11:00-11:35「障害者を雇用する服飾製造業社のエスノグラフィ:障害者の雇用を可能にするデザイン」
海老田大五朗(新潟青陵大学看護福祉心理学部)[→概要
11:40-12:15「ファーストフード店での注文におけるメニュー表の使用」
北野清晃(京都大学)・山内裕(京都大学)・平本毅(京都大学)[→概要
12:15-13:30昼食&世話人会
13:30-14:00総会
14:00-17:00第二部:テーマセッション 「若手研究者が語るエスノメソドロジー・会話分析研究の未来:現場還元の可能性」
14:00-14:05主旨説明 川島理恵(関西外国語大学)
14:05-14:30「遠隔操作ロボットを使ったコミュニケーションに関する研究報告」
福島三穂子(埼玉大学)[→概要
14:30-14:55「現場の実践者と研究者間で分析的知見を活用するための試み:科学コミュニケーション活動の分析をもとに」
城綾実(国立情報学研究所)・坊農真弓(国立情報学研究所)・高梨克也(京都大学)[→概要
14:55-15:20「会話分析のインプリケーションの可能性:救急医療の事例をもとに」
黒嶋智美(明治学院大学)[→概要
15:20-15:45「エスノメソドロジー・会話分析研究者と調査対象者との協働の可能性:ビジネスプランコンテスト調査を事例に」
秋谷直矩(京都大学物質-細胞統合システム拠点科学コミュニケーショングループ特定研究員)[→概要
15:45-16:05休憩(20分)
16:05-16:30「サービスエンカウンターの現場と会話分析」
平本毅(京都大学)・山内裕(京都大学)・泉博子(KCCSマネジメントコンサルティング株式会社)[→概要
16:30-16:45コメント 田村直樹(関西外国語大学)
16:45-17:15全体討論
17:15閉会

発表概要

「障害者を雇用する服飾製造業社のエスノグラフィ:障害者の雇用を可能にするデザイン」
海老田大五朗(新潟青陵大学看護福祉心理学部)
1.目的
本研究の目的は、障害者の一般就労の促進や定着のために、雇用者側が障害者の特性や抱える困難に配慮する「労働のデザイン」に焦点を定めて分析し、障害者を生産者として積極的に位置づけるための創意工夫を記述することである。
2.方法
障害者を雇用する服飾製造業者に直接足を運び、そこで観察などのフィールドワーク、雇用者・コーディネーター・事務担当などへのインタビュー調査を実施する。
3.結論
調査協力いただいた企業では、採用から定着まで、障害者の困難に合わせた様々な創意工夫がなされていた。障害者の採用はどのように決定されているのか。まず、募集の仕方が特徴的であった。要は「公募しない」のである。採否の鍵を握るのは実習の評価であった。とりわけ配属された部署のリーダーの評価が重視され、その評価は採用後の責任と結び付けられていることが明らかになった。障害者の労働はどのようにデザインされているのか。ある作業(たとえばミシンで布を縫う作業など)が困難な人でも、いくつかの創意工夫を施すことでその作業が可能になることが明らかになった。対人関係が苦手である人に対する指示・命令系統は、徹底的に一本化することで、障害者が混乱をきたさないためのデザインがなされていた。
「ファーストフード店での注文におけるメニュー表の使用」
北野清晃(京都大学)・山内裕(京都大学)・平本毅(京都大学)
サービスエンカウンター(サービス提供者と消費者の相互行為),とくにファーストフード店のような客の回転率を高めることにより売り上げを伸ばす業種のそれにおいては,店員と客とが役割に従って振る舞い,サービスのやり取りを標準化することによって互いの行為の予測可能性を高めて効率化に資する必要があることが指摘されてきた(Solomon, Surprenant, Czepiel & Gutman, 1985).だが,客がどういう客か(店のシステムに慣れている客か否か)を尋ねる明確なやり取りが体系的に用意されている場(たとえば店員が「当店のご利用は初めてでしょうか」と尋ねる店)と異なり,ファーストフード店では客がその場の役割に従って振る舞える人物かどうかを判断する機会が,少なくともはっきりとは与えられていない.本発表では,客がどういう客かを呈示する機会としてメニュー表の利用に着目し,ハンバーガー屋のサービスエンカウンターの会話分析を行う.メニュー表はただの情報媒体ではなく,少なくとも注文にかんしてその店でどう振る舞うべきかを記した文化的なオブジェクトである.分析の結果,客がこのことに志向してメニュー表を使って自己呈示を行い,これがその後の相互行為の展開を決める場合があることが示される。
「遠隔操作ロボットを使ったコミュニケーションに関する研究報告」
福島三穂子(埼玉大学)
本発表では、埼玉大学の山崎研究室を中心とした、ハワイと福島を繋ぐ社会的絆プロジェクトにおける、2012年8月から2013年10月までに行なわれたいくつかの調査実験の報告を行なう。1つには震災後ハワイに招かれ数ヶ月暮らした家族と彼らのホストファミリーを繋ぐ実験があり、もう1つには、ホノルルの学校と福島の学校を繋ぐ実験がある。これは社会学者と工学者が共同で行なう、人間とロボットのコミュニケーション研究の一環でもあり、肩乗せ遠隔操作アバターロボットを使うことで可能になる、日本語と英語を使ってのバーチャルコミュニケーションを分析の対照としている。人間とロボット間のコミュニケーションのメカニズムを解明すると共に、その分析をロボット開発に還元することを目的の1つとしている。また、アバターロボットを自分の分身として、遠隔にいる人間の肩に乗せることで、まるで自分があちらにいるような感覚が味わえ、国境や文化を超えた遠隔コミュニケーションの新たな方法をユーザーに提供しているが、実験ではその限界も見えてきている。実用化というレベルでのテクノロジー開発者への、またユーザーへの還元をどう研究の中でとらえるべきなのか、考えていきたい。
「現場の実践者と研究者間で分析的知見を活用するための試み:科学コミュニケーション活動の分析をもとに」
城綾実(国立情報学研究所)・坊農真弓(国立情報学研究所)・高梨克也(京都大学)
本発表では,日本科学未来館(未来館)の科学コミュニケーター(SC)の対話スキルの解明および向上を目的としたSCと研究者の共同研究(代表:坊農真弓「インタラクション理解プロジェクト」)の一端を報告する.SCの重要な仕事のひとつである展示フロアにおける来館者との対話は,展示物の解説だけでなく,来館者自身が科学技術の現状および未来について考え,新たな気づきを得ることを目的としている.他方,来館者側の来館理由は多様であるが,SCが目的とする「対話」のために未来館の展示フロアを訪れる来館者は少数といえる.本発表ではまず,豊穣の海と呼ばれる未来の科学技術にかんする具体的なアイディアを書く場において,来館者にアイディアを書いてもらうためのSCの実践について分析した結果を報告する.次に,相互行為分析の知見が現場のSCにどのように捉えられるのかについて,研究者からSCへ報告する様子を紹介する.分析例と分析の報告例を示すことによって,現場の実践者と研究者双方にとって有益な知見を得るための方法および有効な知見の提示・共有方法を探るための端緒を開きたい.
「会話分析のインプリケーションの可能性:救急医療の事例をもとに」
黒嶋智美(明治学院大学)
本発表では、救急医療における初期診療場面と、シミュレーション医学教育場面の会話分析で得られた知見を、医学者、工学者を含む共同研究者らだけでなく、現場の実践者に還元していく取り組みについて報告する。会話分析が明らかにするのは、具体的な相互行為の展開において何が行なわれているかであり、インプリケーションを得ることは、現場知に対して非専門家である分析者にとっては、そもそも容易ではない。にもかかわらず、そういった還元はしばしば求められる。報告者は、医療系学会での発表、医学者への分析結果報告、初期研修医との振り返りセッションなどを通して、そういった期待に応える取り組みを行なってきている。本発表では、分析で得られた知見の提示と、それに対する医学者や実践者の反応・意見にはどういったものがあったのか、またそうした取り組みの中で見えてきた、求められる知識にはどういったものがあるのかについて、具体的事例を交えながら議論する。
「エスノメソドロジー・会話分析研究者と調査対象者との協働の可能性:ビジネスプランコンテスト調査を事例に」
秋谷直矩(京都大学物質-細胞統合システム拠点科学コミュニケーショングループ特定研究員)
本報告は、ビジネスプランコンテストを運営する起業コンサルタントの業務調査と、その成果に基づいた調査先との共同実践についての事例報告である。調査は2010・2011年に実施された。調査終了後は、複数回の「成果報告」および「データセッション」を、調査対象者を含む関係者間で実施した。それを経て現在は、報告者らが提供する「ビデオデータを用いたやり取りの分析及びそれ用いた実践の振り返り技法」と調査対象者らの専門的実践である「ファシリテーション、ワークショップのデザイン・実践」を組み合わせた共同研究(代表:高梨克也「当事者を交えたデータセッションを支援するビデオ再生分析ツールを利用したコミュニケーション実践知の解明」(平成25年度国立情報学研究所共同研究))が展開中である。今回は、「調査対象者」から「共同研究者」へとゆるやかに関係性が移行していくなかで、報告者らから提供した分析的知見がどのような働きをしたのかを振り返ってみたい。それを踏まえて、エスノメソドロジー・会話分析的知見の現場還元の可能性について検討したい。
「サービスエンカウンターの現場と会話分析」
平本毅(京都大学)・山内裕(京都大学)・泉博子(KCCSマネジメントコンサルティング株式会社)
この発表では著者を含むグループが行ったいくつかのサービスエンカウンター(サービス提供者と消費者の相互行為)現場の調査の概要と,その結果得られた知見の現場への還元について報告する.近年,経営学や人間工学,心理学などの領域横断的な試みとして,サービスのあり方を固有の研究領域と捉えるサービス学serviceologyが脚光を浴びるようになっている.このサービス学においては,サービスが生産と同時に消費される等の特性をもつがゆえに,サービスエンカウンターの性質を調べることが課題になる.エンカウンターencounterという語は,サービスのやり取りが相互行為の場(Goffman,1963)で行われることをあらわしている.だがこのサービスエンカウンターの相互行為としての性質を調べる方法論は,いまだ確立されていない.そこで著者を含むグループは,会話分析を使って接客場面を調べる試みをいくつか行い,そこで得られた知見を現場に還元している.本発表では,この試みの事例をいくつか紹介することを通じて,会話分析のサービスの現場への応用可能性について論じたいと考えている.

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 串田秀也kushida[atmark]cc.osaka-kyoiku.ac.jp
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2012年度研究例会
[開いて読む]



概 要

下記のとおり、エスノメソドロジー・会話分析研究会2012年度春の例会を行ないます。今回も昨年同様書評セッションを設けました。活発な議論のため できるかぎり対象論文を事前にお読みの上ご参加いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

担当世話人: 小宮友根 西阪 仰 高木智世
(最終更新: 2013年3月11日)

  • 日時: 2013年3月30日土曜日 9:30 - 17:10
  • 場所: 筑波大東京キャンパス(文京校舎) 502教室 [交通アクセス] [キャンパスマップ
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 事前参加申込: 不要

プログラム

個人報告
9:30 - 10:20
福田千恵(埼玉大学) 小池智哉(埼玉大学) 「日系人ミュージアムの語り―ガイドツアーにおけるアイデンティティ/カテゴリーの構築」[→概要
10:30 - 11:20
福島三穂子(埼玉大学) 「コミュニティの喪失と再生の歴史の中での日系人の語り」[→概要
11:30 - 12:20
西阪 仰(明治学院大学) 須永将史(首都大学東京) 「福島県における「足湯」ボランティア活動における複合活動の相互行為的組織」[→概要
12:20-13:20 昼休み
書評セッション
13:20 - 14:30
戸江哲理(2012)「会話における親アイデンティティ――子どもについての知識をめぐる行為の連鎖」『社会学評論』62(4)
評者:串田秀也(大阪教育大学)、早野薫会員(お茶の水女子大学)
14:40 - 15:50
Kuroshima Satomi (2010) "Another look at the service encounter: Progressivity, intersubjectivity, and trust in a Japanese sushi restaurant," Journal of Pragmatics 42(3)
評者:平本毅(立命館大学)、Eric Hauser(電気通信大学)
16:00 - 17:10
森一平(2011)「相互行為のなかの『知っている』ということ――社会化論が無視してきたもの」『教育社会学研究』89
評者:五十嵐素子(上越教育大学)、小宮友根(日本学術振興会)

報告概要

福田千恵(埼玉大学) 小池智哉(埼玉大学) 
「日系人ミュージアムの語り―ガイドツアーにおけるアイデンティティ/カテゴリーの構築」
概要
本研究ではハワイ・アメリカ本土の日系人ミュージアムにおける、ガイドツアーの語りを成員カテゴリー分析(MCA)と会話分析(MCA)の観点から論じる。一般にミュージアムでのツアーは、解説をする者(ガイド)からされる者(観客)への一方的な語りと見られがちである。しかしエスノメソドロジーの観点から見れば、ミュージアムという制度的状況(institutional setting)の中で、局所的な文脈やマクロレベルの歴史的・文化的背景などをリソースにして両者が作り出す社会的相互行為である。「ガイド」「観客」というアイデンティティやカテゴリーは所与のものではなく、この相互行為を通して出現する。「日本人」「日系人」「オキナワン」「アメリカ人」なども同様である。本研究では、これらのアイデンティティやカテゴリーが参与者によってどのように扱われ、構築されていくのかを検証する。
福島三穂子(埼玉大学) 
「コミュニティの喪失と再生の歴史の中での日系人の語り」
概要
コミュニティの喪失と再生の歴史の中での日系人の語り概要:カナダのバンクーバーへ移民した日本人は、世界大戦が始まると強制移動を迫られ、一時住み慣れた土地を離れなければならなかった。戦後バンクーバーに戻った人々は、再びそこでの生活を切り開きコミュニティを作っていった。そういった意味で、バンクーバーの日本人街は喪失されたコミュニティが再び再生された現場である。今回は、そのコミュニティの重要な交流の場であるスティーブストン仏教会でのガイドの語りを分析していきたい。歴史的に、この仏教会は、キリスト教の教会と仏教のお寺の融合が行われて来ている場所でもある。その場所で日本人観光客に対して、日系人社会と文化の喪失と再生の物語が、日系人ガイドによってどのように語られ、構築されていくのか、を考察していく。
西阪 仰(明治学院大学) 須永将史(首都大学東京) 
「福島県における「足湯」ボランティア活動における複合活動の相互行為的組織」
概要
2011年3月の東日本大震災、および直後の津波、さらに原発の爆発は、多くの人びとに長期にわたる避難を強いることになる。この報告では、(昨年度に引き続き)震災直後から、福県下の避難所および応急仮設住宅で行なわれていた、いわゆる「足湯」ボランティア活動における相互行為について検討したい。足湯ボランティアとは、湯をはったたらいに足を浸した避難住民の手をマッサージしながら、避難住民の話に耳を傾けるというボランティアで、「傾聴」ボランティアの1つといわれることもある。それは、マッサージと会話が同時に行なわれる、典型的な「複合活動場面(multiactivity setting)」である。2つの活動がどのように組織されるかを、会話分析の手法によりながら明らかにしたい。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせは、西阪()まで
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人 )まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは、EMCA研事務局(エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 )まで

2012年度研究会大会



概要

以下の要領で、エスノメソドロジー・会話分析研究会秋の大会を 2012年11月2日(金)に北星学園大学(北海道札幌市)において行います。

※追記(2012年10月19日):報告にキャンセルが出たため、第1部自由報告は13時35分からの開始となりました。

(担当世話人:浦野 茂、川島理恵、串田秀也)

  • 日程: 2012年11月2日(金)13:00~18:00
  • 場所: 北星学園大学 第2研究棟(地階) 第1会議室
    • 住所: 札幌市厚別区大谷地西2丁目3番1
    • 電話: 011-891-2731
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 交通:
    • 千歳空港から: 空港バス(中央バス、北都バス)が一番便利です。大谷地方面行きのバスに乗車して約40分で大谷地バスターミナルにつきます。バスターミナルを出て右に曲がりバス出口の横断歩道を渡るとサイクリングロードがありますのでそれを右折し、サイクリングロードを直進してください。前方に高速道路の高架が見えたら正解です。高速道路をくぐると間もなく左手に通用門が見えてまいります。バスターミナルから通用門まで徒歩約5分です。
    • 札幌市内から: 地下鉄東西線で「大谷地」駅下車(市内中心部から約20分です)。1番出口から出て掲示に従い北星学園大学にむかってください。1番出口から通用門まで徒歩約5分です。
      主要ターミナルからの交通]、[大谷地駅近辺地図
    • 会場の場所: 会場となる第二研究棟は、上記の通用門をくぐり、すぐ左の入り口より入ります。第一会議室はその地階にあります。
      キャンパスマップ
  • 懇親会: 大会終了後に、19時ころより札幌市内にて懇親会を予定しております。当日、大会会場にて詳細をご連絡いたします。またそのさいにみなさまの出欠を確認させていただきます。ご参加をお待ちしております。
プログラム
  • 12:00~13:00 世話人会
  • 12:30 大会受付開始
  • 13:00 開会
  • 13:00~14:10 第1部 自由報告(報告各20分、質疑応答各15分)
    • 13:00~13:35 福田千恵(埼玉大学) 「相互行為としてのリサーチインタビュー:M/CAによるインタビューの分析」[→概要
    • 13:35~14:10 福島三穂子(埼玉大学) 「日本語会話における、social relationality の一つであるジェンダーの表れ方:ユーモアに焦点を当てて」 [→概要
  • 14:10~14:30 休憩
  • 14:30~15:00 総会
  • 15:00~18:00 第2部 シンポジウム 「知識現象のエスノメソドロジーの対象と課題:マイケル・リンチの研究を中心に」[→概要
    • 15:00~15:30 報告1:中村和生(青森大学)「ポスト分析的エスノメソドロジーの可能性」 [→概要
    • 15:30~16:00 報告2:池谷のぞみ(慶應義塾大学) 「エスノメソドロジーの展開におけるシュッツの知識概念をめぐって」 [→概要
    • 16:00~16:30 報告3:西阪 仰(明治学院大学) 「指示に従った知覚――強調プラクティスと方法的手続き」 [→概要
    • 16:30~16:45 休憩
    • 16:45~17:15 討論
      • 指定討論者1:北田暁大(東京大学)
      • 指定討論者2:石井幸夫(早稲田大学)
    • 17:15~18:00 回答と全体討論
  • 18:00 閉会
  • 19:00~ 懇親会(時間と場所の詳細は未定)

自由報告報告概要

福田千恵(埼玉大学)「相互行為としてのリサーチインタビュー:M/CAによるインタビューの分析」
概要
本研究ではリサーチインタビューを成員カテゴリー分析と会話分析(M/CA)の観点から論じる。リサーチインタビューは社会科学の重要な分析ツールであるが、それと同時にインタビューする者とされる者が作り出す、社会的相互行為でもある。また、局所的な文脈やミクロレベルのインターアクション、マクロレベルの社会的・文化的背景にも大きく影響されうる。欧米ではインタビューを単に研究対象者から答えを引き出す手段としてではなく、社会的相互行為としてM/CAを用いて分析する動きが見られる(Holstein and Gubrium 2004, Talmy 2011)。このアプローチでは、分析ツールとしてのインタビューと異なり、「何」を言ったかだけでなく、「どう」言ったかが重要な分析の対象となる。本研究では研究者とその知人である日系人留学生とのリサーチインタビューをデータとして用いる。リサーチのテーマは日本人論についてであったが、そこから彼の日本での経験を語るナレティブに発展していく。このデータの分析を通して、インタビューそのものが社会的相互行為であり、連鎖組織やレシピエント・デザイン、成員カテゴリーなどがインタビューにおいても有効な分析手段であることを提示する。
福島三穂子(埼玉大学)「日本語会話における、social relationality の一つであるジェンダーの表れ方:ユーモアに焦点を当てて」
概要
会話分析という手法を使って、日本の社会における男女間における社会相互行為を、特にネゴシエーションが発生している場面で検証していく。文化、言葉、社会的な関係性social relationalityが絡み合う日本語での日常会話でのコミュニケーションは、一般的に日本人論的なアプローチによって理解されることが多い。そこで、日本人らしいと言われるキーワード、例えば、和(を大切にする)、や甘え、上下関係、などを会話の中で話者がどのように、その場その場で作り出していくのか、そして聞き手に理解させているのか、を見ていきたい。その中で、ユーモアの使われ方にも焦点を当て、ユーモアがどのように会話構造、特に優先構造に関わっていくのかを検証し、ジェンダーが見えてくる現場を取り上げる。

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シンポジウム
「知識現象のエスノメソドロジーの対象と課題:マイケル・リンチの研究を中心に」概要

目的
エスノメソドロジー研究と科学の社会的研究における主導者の一人であるマイケル・リンチの主著 Scientific Practice and Ordinary Action が、このたび邦訳・刊行されることになりました『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』。周知のように、リンチは、科学実践や歴史記述の実践などについての詳細なエスノメソドロジー研究を行い続けているとともに、知識社会学・科学社会学、エスノメソドロジー・会話分析のこれまでのあり方に対しても今なお批判的論点を指摘し続けています。そしてこのたび邦訳刊行される著作には、こうしたリンチの考え方が凝縮された形でまとめられています。そこでこのシンポジウムは、このリンチの著作を中心に据えながら、彼の経験的研究の概要とその焦点について検討するとともに、彼が既存の研究に対して示してきた批判的論点をも取りあげて検討していきたいと考えています。このような検討を通して、知識現象のエスノメソドロジーのあり方とその意義について、さらには知識現象を社会学的に研究することとはどのようなことなのかについて、会場のみなさんとともに議論できればと考えています。
中村和生(青森大学)
「ポスト分析的エスノメソドロジーの可能性」
概要
マイケル・リンチが Scientific Practice and Ordinary Action『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』においてポスト分析的エスノメソドロジーを提唱してから20年が経とうとしている。本報告では、この著に基づき、このプログラムの方針を指し示し、その具体的展開をいくらかの経験的研究において確認することによって、このプログラムの見通しを少なからず得ることを目指したい。
 ポスト分析的エスノメソドロジーは、一方で科学社会学の実践学的転回に刺激を受けつつ、他方でプロトエスノメソドロジーや分析的エスノメソドロジーを発展させたものと位置づけられている。まずは、この著、とくに4章や6章に基づき、これらのエスノメソドロジーを、その特質と代表的な経験的研究の検討から考えていきたい。つづいて、とくに7章に基づき、ポスト分析的エスノメソドロジーの方向性を確認する。そして、日本語版序文においてその例として挙げられている経験的研究のいくつかを取り上げることによって、このプログラムの内実に迫っていきたい。
池谷のぞみ(慶應義塾大学)
「エスノメソドロジーの展開におけるシュッツの知識概念をめぐって」
概要
エスノメソドロジーのプログラムの展開は、必ずしも一つではなく、いくつかの少しずつ異なる仕方でなされてきている。それぞれの展開がどのような経緯をたどっているのかについては、すべてが明解になっているわけではない。例えばシャロックが昨年のIIEMCAの追悼セッションで披露したように、ガーフィンケルがどのようにしてシュッツを創造的に読み込むことで、博士論文での議論から展開して、状況において達成される秩序に焦点を当てるまでに至ったのか、その経緯は明らかにはなっていない。したがって、残されたエスノメソドロジストにできることは、ガーフィンケルが影響を受けた著者たちや、彼自身の書いたものを手掛かりにして、彼が何を他の文献に読み込み、研究プログラムを展開させていくに至ったのかを読み解く以外にはない。
 リンチはそれを試み、展開に寄与する一人である。彼は、これまでのエスノメソドロジーの展開を整理し、それとは区別しながら、状況における実践においてエピストピックがどのように現れるのかに焦点を当てるという新たな方向を提示した。その際、リンチは、科学知識をめぐるシュッツによる記述を乗り越えることこそが、その新たな方向をとる契機になると位置づける。しかし、そもそもシュッツの知識概念をガーフィンケルの創造的な解釈とともに辿るとき、エスノメソドロジーの展開において、必ずしもシュッツの知識概念を退ける必要はないという点を論じ、なおかつ科学を含むさまざまな領域における活動を日常における活動として理解し、活動する方向性を再考する。
西阪 仰(明治学院大学)
「指示に従った知覚――強調プラクティスと方法的手続き」
概要
現在の代表的エスノメソドロジストであるマイケル・リンチは、エスノメソドロジーに出自をもつ会話分析(CA)の方法に対して、いくつか批判的な論点を提出している。この報告では、そのなかから、次の2点について考えてみたい。
  • 1) 記述の言語の身分について。
  • 2) 手続きの一般的もしくは形式的記述の可能性について。
1) については、サックスが「装置」apparatus, device, machineryなど)と呼んだ記述の(もしくは解明するべき)対象は、日常概念とどのように関係しているか(日常概念の修復か)、ということとかかわっている。2) については、このサックスの「装置」の記述は、(ガーフィンケルの言う)秩序の「局所的に産出された」、「リフレクシブに説明可能な」、「同時進行の実際的な」達成の記述たりえないかどうか、ということとかかわっている。ただし、本報告では、これらの点について抽象的な思考をめぐらすのではなく、具体的な1つのプラクティス、すなわち、リンチが実際の科学のプラクティスの1つとして定式化した「強調」プラクティスを取り上げ、そのCAな記述がどのように、局所的に産出され、リフレクシブに説明可能な、同時進行の実際的な達成の記述でありうるかを、実演的に示すことを試みたい。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 串田秀也kushida[atmark]cc.osaka-kyoiku.ac.jp
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2011年度研究例会
[開いて読む]



→短信:簡単な報告と写真を掲載しました [2013/03/25]

概 要

 2012年3月31日土曜日に東京の明治学院大学にて、EMCA研春の例会を計画しております。

担当世話人: 小宮友根 西阪 仰 高木智世
(最終更新: 2013年3月25日

  • 日時: 2012年3月31日土曜日 10:00から16:50まで
  • 場所: 明治学院大学 白金校舎 本館4階 [交通アクセス
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
  • 事前参加申込: 不要

プログラム

個人報告(10:00-12:10)

※個人報告は二つの教室での併行開催

1402室
10:00-11:00
北村隆憲(東海大学)
「法専門職の相互行為知識と評議における知識系・アイデンティティ: ビデオデータによる反対尋問と陪審評議の分析を素材に」 [→要旨
11:10-12:10
菅野昌史(いわき明星大学)「判決文における『社会』の用法」 [→要旨
1407室
10:00-11:00
團康晃(東京大学)
「歌うことをすること」 [→要旨
11:10-12:10
須永将史(首都大学東京), 西阪仰(明治学院大学),早野 薫(マックス・プランク研究所),黒嶋智美(産業技術総合研究所),岩田夏穂(大月市立短期大学)
「東日本大震災および福島第一原子力発電所事故による避難者とボランティアの『足湯』におけるコミュニケーション」 [→要旨
12:10-13:10 昼休み
論文評セッション(13:10-17:00)
1406室
13:10-14:20
山田恵子
「リアリテイとしての法と心理」『神戸法学年報』25号(2009年),pp. 37-132.
評者: 浦野茂(三重県立看護大学),小宮友根(学術振興会)
リプライ: 山田恵子(京都女子大学)
14:30-15:40
早野薫(Hayano, Kaoru),
Claiming epistemic primacy: yo- marked assessments in Japanese. In Tanya Stivers, Lorenza Mondada, Jakob Steensig, eds. (2011) The Morality of Knowledge in Conversation, pp. 58-81. Cambridge: Cambridge University Press.
評者: 前田泰樹(東海大学),高木智世(筑波大学)
リプライ: 早野薫(マックス・プランク研究所)
15:50-17:00
平本毅
「他者を『わかる』やり方にかんする会話分析的研究」『社会学評論』 61(2), pp. 153-171.
評者: 中村和生(青森大学),西阪仰(明治学院大学)
リプライ: 平本毅(京都大学)

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報告要旨

[北村要旨]
 本報告はEMCA的な観点から二つのビデオデータを分析して、EMCAによるアプローチが法実践に関する新たな知見を生み出す可能性を示唆するものである。
 まず、米国のレイプ事件(ケネディ・スミスレイプ事件)の刑事裁判における反対尋問のデータである。裁判員制度導入に合わせて、日本でも反対尋問の方法についての法実務家向けのテキストブックが多数出版されているが、そこでは反対尋問とは誘導尋問(YES/NO 質問)のみを使って証人の返答をコントロールしていくテクニックであることが強調されている。そうしたテキストに記載された想定尋問会話では、例外なく、「質問形式に適合」した「優先的」返答(type-conforming and preferredresponses)のみがなされることが想定され、いわゆるオープン質問(Wh-質問など)をおこなってYes/Noの質問形式の枠を超える返答(non-conforming responses)を証人にさせることは、反対尋問の失敗事例として描かれている。しかし、レイプ事件のビデオデータに見られるように、Yes/No質問に対してYes/Noの枠を超える返答は頻繁になされており、そのような返答に対して、尋問者は法廷場面特有の方法(ethno-methodology)でそれに対処していることが観察できる。弁護士向けテキストブックに描かれた反対尋問のやり取りは、「専門家の相互行為知識ストック」(A.Pelakyla)を構成しており、EMCAの観点による質的分析がこの知識ストックの批判的再構成に貢献できる可能性がある。 また、そうした知見は法科大学院などでの法実務のトレーニングに利用することができるかもしれない。
 もう一つは、NHKドキュメント「あなたは死刑を宣告できますか」での裁判員裁判の評議場面である。これは模擬評議であり、実際の評議場面はわずかであり編集されているとはいえ、真実味のある環境の中で市民の裁判員と裁判官とが真剣に評議をおこなっている。裁判員制度導入直前まで全国500回程度行われたといわれる法曹三者合同の模擬裁判について、日弁連の委員として関わった言語学者の堀田秀吾氏が、手に入れられた大量の模擬評議の会話データを計量的に分析して最近公表されている。このテクスト・マイニング手法による計量的分析のなかで、裁判官と裁判員のコミュニケーションにみられる発話行為の分類に基づいて対応分析が行われている。その中には、たとえば、「他者の発言への補足」という発話行為カテゴリーがあり、陪席裁判官が頻繁に行う発言であるという知見が得られている。NHKドキュメントの中でも、陪席裁判官の一人によって何度も裁判員の発言や実演への「補足」が行われていることが観察できるが、実際の会話の流れを分析してみると、そこでは「補足」以上の活動(裁判員の意見に仮託しつつ法的な視点を導入する、裁判員たちの実演活動を定式化してその法的意味を確定させる、など)が行われ、それが評決に対して重要な意味をもっていることが分かる。このように、法実践についての定量的な分析とともに、EMCAに基づいて発話の流れを詳細に分析していく質的なアプローチによって、法実践についての新たな知見が得られる可能性があるだろう。(以上)
[菅野要旨]
 法社会学では通例、法が「社会」へ与えるインパクトが社会科学の諸方法を使って分析、測定、評価されたりする。しかし、法がそもそも社会を統制する手段であるとするなら、法が生成されるとき、すでにそこには「社会」についての何らかの理解が含まれているはずである。そこで本報告では、法の世界の外の論理をもちこむのではなく、まずは法の世界の住人が「社会」をどのように理解しながら何を実現しようとしているのかを記述してみたい。具体的には、刑事裁判(少年事件を含む)の判決文における量刑判断で裁判官が「社会」という概念を用いながら、自分たちをどこへどのように方向づけているのか明らかにする。
[團要旨]
 これまで音楽に関する社会学的研究は、楽曲をその社会的背景から解釈するものや、音楽産業の社会・経済的背景を明らかにするものが主たるものであり、音楽をすることそのものについての研究は幾つかの例外をのぞけばほとんどなされてこなかった。本報告は、そのような音楽をすること、殊、歌うことの相互行為分析である。注目するのは、記譜されていないが、歌うことにとって重要な幾つかの方法についての指導だ。具体的には音程の高低と発声における響きの高低の区別が歌うことの連続性を維持するために重要なものとなっていることを確認し、その区別が、如何に講師が生徒に理解させるのかを、ビデオデータをもとに、発話行為、身体の配置、身振り等に着目して分析していきたい。

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[須永,西阪,早野,黒嶋,岩田要旨]
 本報告では,福島県における震災および原発事故による避難者のみなさんと,「足湯」ボランティアのみなさんとのコミュニケーションに関する研究を報告する.発表者らは,震災以降,福島県内の避難所・仮設住宅に定期的に赴き,ビデオ録画を行なっている.本報告では,そこで録画したデータを用い,具体的な発話を通して次のようなことを検討する.
  • ボランティアが,様々な活動を通して,どのように学習していくのか.
  • 避難者の語る「困難(=トラブル)」に対し,ボランティアはどのような応答をしているか.またはそうした応答を通して何を行なっているのか.
  • 足湯という場面は,会話とマッサージが「同時に」行なわれる場面である.そこにおいて,会話(特に避難者が困難を語ること)とマッサージはどういう関係にあるか.
以上の方向を念頭に置きつつ,「足湯」という場面の経験的研究を報告したい.

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お問い合わせ

  • 研究例会に関する問い合わせは、エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人 (EMCA研世話人)まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2011年度研究会大会



概要

以下の要領で、エスノメソドロジー・会話分析研究会2011年秋の研究大会を開催いたします。午前は自由報告3件、そして午後にはガーフィンケル追悼シンポジウムを予定しています。2011年4月末日,エスノメソドロジーの創始者であるハロルド・ガーフィンケルの訃報が伝えられました。主著『エスノメソドロジー研究』が出版されてから,すでに40年を超す年月がたち,エスノメソドロジー・会話分析も一つの研究分野として確立してきましたが,他方で,ガーフィンケルの議論の射程については,いまだ十分には明らかにされていないように思われます。ガーフィンケル自身は,みずからの思考に影響を与えた現象学のテクストを,エスノメソドロジー研究のために「誤読」することを勧めていたことが知られています。それでは,私たちは,ガーフィンケルのテクストを,どのように生産的に読み解いていくことができるでしょうか。本シンポジウムでは,ガーフィンケルと知的交流のあった山田富秋氏をお迎えし,ガーフィンケルの議論の広がりと可能性についてお話いただくことで,この偉大な先人への追悼の意を表する機会とさせていただきたく思います。併せてIIEMCAやUCLAで相次いで実現されている追悼のプログラムのご紹介もいたします。エスノメソドロジーに関心を持たれる多くのみなさまに,当日の議論にご参加いただければ幸いです。

(担当世話人:前田 泰樹、池谷 のぞみ、南 保輔)

  • 日程: 2011年10月16日(日)
  • 場所: 成城大学3号館 大会議室
  • 大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
プログラム

司会: 前田 泰樹(午前)、池谷 のぞみ(午後)

  • 11:00-11:10 開会のことば
    • 11:10-11:55 自由報告1 團 康晃 「生徒間の「いじり」の分析:グループインタビューを題材に」 [→要旨
    • 11:55-12:40 自由報告2 海老田 大五朗 「身体を固定する:柔道整復師による保存療法について」 [→要旨
  • 12:40-13:40 昼休み(世話人会)
  • 13:40-14:10 総会(3号館大会議室)
    • 14:15-15:00 自由報告3 原田 幸一 「同じ順番内での誤り訂正について」 [→要旨
  • 15:10-17:10 ガーフィンケル追悼シンポジウム
    • 15:10-15:30 企画主旨説明
    • 15:30-16:10 山田 富秋 講演 「ガーフィンケルとハイデッガー」 [→要旨
    • 16:10-16:20 休憩
    • 16:20-16:40 前田 泰樹によるコメントと山田氏によるリプライ
    • 16:40-17:10 質疑応答
  • 17:10-17:20 閉会のことば
  • 17:30-19:30 懇親会(成城大学本部棟地下学生喫茶にて)
    ※懇親会参加費 一般 3,000円 院生(学生) 2,000円

自由報告: 〔報告要旨〕

自由報告1: 團 康晃
「生徒間の「いじり」の分析:グループインタビューを題材に」
報告要旨:

 本報告は、地方公立中学校におけるグループインタビューの音声データとエスノグラフィックなデータを題材に、「いじり」という相互行為を分析的に解明する。
 休み時間や放課後といった生徒たちが比較的自由に活動できる時間に参与観察していると、彼/彼女らが「グループ」を成しているように見えることがある。しかし、その「グループ」に見える活動を具に観察すると、その「グループ」の境界は明確で客観的なものではなく、むしろ、活動の度に達成される共成員性によるものだったといえる。そしてその活動には、包摂や排除をめぐるある種の構造が確認できた。そして、その構造は、教師が調査者に「いじり」として報告するような、ある種のトラブルであった。
 その構造は、グループインタビューにおいても見られた。それは、次のようなものである。(1)グループインタビューにおいて、調査者が行う質問は、グループ成員によって、再配分され、その配分方法には、明確な構造が見られた。(2)この構造において、特定の成員が最終的な回答を期待されるものとして位置づけられていた。(3)この回答の「オチ」を語ることを期待されるものは、時に成員資格の不適切さを他のグループ成員から言い渡され(彼らとは異なるグループのカテゴリーを執行され)、グループの境界に置かれていた。

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自由報告2: 海老田 大五朗
「身体を固定する ~柔道整復師による保存療法について~」
報告要旨:

 柔道整復師は、患者の症状によっては身体の一部を固定することがある。この施術は一般に保存療法と呼ばれる。『柔道整復学 理論編』(2003:92)によれば、保存療法(固定法)は、「一定期間患部をある肢位に保持して、運動を制限することによる外傷の治癒」、「損傷組織の良好な治癒環境の確保」、「変形・再転位の防止や矯正」を目的としている。
 本研究の目的は、柔道整復師が患者の身体を固定するときの、その方法を明らかにすることである。分析対象として焦点化したい問題は主に二つある。一つは、柔道整復師が患者の身体を固定するときの、「固定材料の選択」についてである。固定材料は主にギプスや副木などの硬性材料と、包帯やテープ(絆創膏)などの軟性材料の二つに大別される。どの材料を選択するかは、患者の症状によって異なるのだが、その固定材料の選択の仕方について考察したい。二つ目は、実際に柔道整復師が患者の身体の一部を固定するときの、その「固定の仕方」である。たとえば柔道整復師は患者の身体に包帯を巻くことがあるが、ただ巻くわけではない。「強く(弱く)巻きすぎてはいないか」、「すぐにほどけないようになっているか」、「適切な肢位で固定されているか」といったように、そこには適切とされる包帯の巻き方のための規準がある。さらにいえば、このような適切とされる包帯の巻き方というものは、柔道整復師と患者との相互行為によって達成される。本研究では、実際に柔道整復師が患者へ包帯を巻く場面を撮影したデータやインタビューによって得られた知見を検討することで、柔道整復師が患者の身体を固定する方法を明らかにする。

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自由報告3: 原田 幸一
「同じ順番内での誤り訂正について」
報告要旨:

 本研究は、誤りと同じ順番内での誤り訂正(Same-turn Self-correction、以下STSC)に焦点を当て、その実態を調査し分析することを目的とする。特に訂正開始部にいかなる表現が使用されるのかに注目し、表現の使い分けなどの秩序が見られることを主張する。使用するデータは、大学生の日常会話データ約11時間半である。以下、調査・分析の結果、明らかになったことを述べる。
 訂正開始の位置に注目すると、誤りの語を産出途中で中断して訂正を開始する場合、語の中断だけで訂正開始の標識になり、一方、誤りの語を完全に産出した後に訂正を開始する場合、「ていうか」や「あ」、「じゃない」、「違う」などの表現が使用されることが分かった。
 訂正開始部に使用される表現の用法に注目すると [1]「あ」と「じゃない」と「違う」は互いに重ねて使用されるが、「ていうか」は他の三つと重ねて使用されることがないこと、[2] 重ねて使用される場合、「あ、じゃない」かまたは「あ、違う」が典型であること、[3] 誤りの語が活用語の場合、「あ」と「違う」、「じゃない」が使用されることはなく、「ていうか」が使用されることが分かった。
非秩序的とされてきた誤り訂正にも一定の秩序が見られ、それは相互行為的に構成される秩序であることも主張したい。

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ガーフィンケル追悼シンポジウム: 〔報告要旨〕

山田富秋「ガーフィンケルとハイデッガー」
報告要旨:

 ガーフィンケルの Ethnomethodology's Program における道具性の議論を踏まえながら、それをハイデッガーの『存在と時間』の道具的存在の議論に照らすと、 エスノメソドロジーは「技術獲得の現象学」として位置づけられる。それはウィトゲンシュタイン=ハイデッガー的な「通常の行為の仕方によって端的に可能になる理解可能性」(ドレイファス『世界内存在』 産業図書 2000, 24頁)である。 ハイデッガーは道具的存在のもとでの配慮(Besorgen)と世界内部的に出会われるような他者の共現存在(人間)と共にある時の顧慮(Fursorge)とを区別していたが、それは気遣い(Sorge, caring)という概念において統一される。この発表では、端的に可能になる理解可能性の次元の他に、気遣いによって可能になる理解可能性の次元を考察したい。

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お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 南 保輔yminami[atmark]seijo.ac.jp
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先: エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)

2010年度研究例会
[開いて読む]



概 要

 以下の要領で、エスノメソドロジー・会話分析研究会2011年春の研究例会を開催いたします。午後に予定しているシンポジウム「質問-応答連鎖と場面性」では、相互行為の参与者たちが、相互行為の形式的組織を用いながら、いかにして場面に固有の目的や課題を遂行しているのか、またそれを通じて、いかにしてその場面を作り上げているのかを、考えたいと思います。焦点の絞られた討論が可能になるように、相互行為の形式的組織を「質問-応答連鎖」に限定し、4人の発表者に4種類の場面の分析を提示していただき、この連鎖がどのようにそれぞれの場面に感応して用いられているかを比較しながら議論したいと考えています。

(企画担当:平本毅・串田秀也)

  • 日時:2011年4月3日(日)11:00~17:30
  • 場所:関西学院大学大阪梅田キャンパス14階1405号室 [地図]
プログラム
  • 10:30 受付開始
  • 11:00~12:15 一般報告
    • 11:00~11:35 一般報告1(発表20分+討論15分)
      • 山本 真理「物語の聞き手によるセリフ発話」[→要旨
    • 11:40~12:15 一般報告2
      • 中恵 真理子「大学教育ボランティアの助言の達成のし方に見る授業内秩序」[→要旨
  • 12:15~13:30 昼食
  • 13:30~17:30 シンポジウム「質問-応答連鎖と場面性」(司会進行:串田 秀也)
    • 13:30~14:10 シンポ発表1(発表25分+討論15分)
      • 平本 毅「日常会話における 質問-応答 連鎖─とくに「応答の追及」により返される応答に着目して」[→要旨
    • 14:15~14:55 シンポ発表2
      • 増田 将伸「インタビュー・コーパスにおける 質問-応答 連鎖―「日常」を模した「制度」の中の相互行為」[→要旨
    • 14:55~15:10 小休憩
    • 15:10~15:50 シンポ発表3
      • 池田 佳子「TVのニュースインタビューにおける 質問-応答 連鎖の一考察─応答ターンのデザインに着目して」[→要旨
    • 15:55~16:35 シンポ発表4
      • 細田 由利&デビッド・アリン「教育場面における質問と応答の連鎖に関わる優先組織」[→要旨
    • 16:45~17:30 全体討論

一般報告: 〔報告要旨〕

報告1: 山本 真理
「物語の聞き手によるセリフ発話」
報告要旨:

 本研究では,過去の出来事が語られる場面において語り手や聞き手によってなされる,物語の登場人物になりきるような発話(「セリフ発話」)を扱う。これらの発話がどのように行われ,その発話を通して参与者たちが何をしようとしているのかを明らかにする。本発表ではそのうち物語の聞き手によって行われる発話に焦点を当てる。
 西阪(2008)は,物語が語られた直後の「演技している」と見ることのできる聞き手の振舞いの分析を行い,聞き手の発話は単に物語の語り手の情報が聞き手に伝わったことを示すだけではなく「物語が終わったという聞き手自身の理解」,「聞き手が語り手の物語をどう理解したか」,「語り手の物語をどのような話として聞くべきものかという物語全体にたいする自らの理解」を示すと言う。本発表では西阪の考察を踏まえた上で,「聞き手が物語の理解を示す」というときその理解は単に聞き手の皮膚下の理解を反映させているだけでなく,物語の語り手のその場の動きに敏感な形で組織されていることをデータに即して示していく。具体的には,聞き手がどの登場人物を選択しどのような発話を行うのかといったことはランダムに決定されていくのではなく,語り手の発話や身体的な動作によってある程度方向づけられている。これは聞き手が物語の登場人物になりきることができるほどに物語を理解していることを強く示しつつ,あくまでも聞き手が「聞き手」として相互行為に参加しており「語り手の物語を語る権利」を侵さないことを示すことができる有効な手段であると考えられる。

    【文献】
  • 西阪仰(2008)『分散する身体―エスノメソドロジー的相互行為分析の展開』勁草書房

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報告2: 中恵 真理子
「大学教育ボランティアの助言の達成のし方に見る授業内秩序」
報告要旨:

 徳島大学の全学向け教養教育の中には、市民から募った社会人ボランティアと学生、教員の3者で創る授業形態がある。このとりくみは平成20年度GP「地域社会人ボランティアを活用した教養教育~知の循環型社会の構築をめざして」として採択された。本データはこの取組の授業の一つ「名著講読-生き抜く力をつける(香川順子准教授担当)」をビデオ録画し、分析したものである。
 分析の視点は、社会人ボランティアが授業に参画することによって、授業内秩序がどのように産出されているかをミーハンの見出したI-R-E連鎖に着目して行うことである。すると、データによれば、特にEvaluationにおいて、社会人の評価を、教員が受け継ぎ、教員の評価の中に取り組む場面、あるいは社会人の評価に介入し、評価を中断させる場面、また、授業の一部分のトピックについてその全体の評価を教員が社会人に委譲して行うなど、I-R-E連鎖の多様な応用形態が見られた。
 今後生涯学習社会がすすめば、このような授業形態が小・中・高に限らず、大学でも増えてくるように思われる。そのような教育資源の一つとしても社会人ボランティアの参画する授業内秩序を考察したい。

    【文献】
  • Mehan,H、1979、Learning Lessons: Social Organization in the Classroom, Cambridge、 MA: Harvard University Press.
  • 秋葉昌樹、2010、「学校で過ごす」串田秀也/好井裕明編『エスノメソドロジーを学ぶ人の ために』第6章、世界思想社。

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シンポジウム「質問-応答連鎖と場面性」: 〔報告要旨〕

報告1: 平本 毅
「日常会話における質問-応答連鎖-とくに「応答の追及」により返される応答に着目して-」
報告要旨:

 日常会話において、ある発話に次ターンでの応答を予期させる「連鎖上の含み」が存在し、さらにその応答に当該の発話への同意/不同意や受諾/拒否が含まれることが期待されるとき、話し手はその応答の不在に代表される不同意あるいは拒否の前触れ、理解の不足に対して、何らかの手段で応答を追及することがある(以下「応答の追及」)(Pomerantz, 1984)。この「応答の追求」のうち本発表では、最初の発話に含まれていた意見や態度を変える(以下「置き換え型」)ものを扱う。これまでの「応答の追及」の研究では、「応答の追及」自体の形式やはたらきに焦点が当てられてきた。それにたいし本発表では、「応答の追及」への応答(以下「追求の結果返された応答」)の形式に着目したい。この位置で聞き手は、いくつかの相互行為上の課題に直面することになるだろう。第一に聞き手は、置き換えにより生じた話の広がりを回収し、その応答で連鎖を終了させる方向に向かわせることに志向するだろう。第二に聞き手は、話し手が「応答の追及」のいくつかのやり方のうち一つを選べるという条件において、じっさいになされた「応答の追及」の仕方が正しかったのかどうかを示すことになるだろう。第三に聞き手は、「応答の追及」がなんらかの意味で選好組織を組み込んだものであるなら、選好組織に志向しながら応答を返す必要があるだろう(平本, 2010)。本発表では、「追求の結果返された応答」を返す際に聞き手がこれらの課題をどのように解き、拡張された質問―応答連鎖を組織化していっているのかを明らかにしたい。

    【文献】
  • 平本毅(2010)「社会規範への多重的指向:社会規範への多重的指向:日本語会話における「選好の逆転」への反応の一形式」第83回日本社会学会大会報告資料
  • Pomerantz, A. (1984). Pursuing a response. In J. M. Atkinson & J. Heritage (Eds.), Structures of social action (pp. 152-163). Cambridge: Cambridge University Press.

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報告2: 増田 将伸
「インタビュー・コーパスにおける質問‐応答連鎖―「日常」を模した「制度」の中の相互行為―」
報告要旨:

 本発表では、言語研究の資源とするために作られた『日本語話し言葉コーパス(CSJ)』中の質問‐応答連鎖を取り上げる。CSJでは日常会話に指向して会話がなされるが、収録は実験的環境でなされており、インタビュー形式で進行する会話の質問者‐応答者の役割もほとんど固定的である。「日常」への指向性を持つ「制度」であるという点で、特徴的な会話であると言える。
 分析は主に疑問詞「どう」を含む質問についてなされる。(cf. 増田 2008)これを通じて、インタビューで連鎖を開始する際のプラクティスが議論される。具体的には以下の3点を取り扱う。(1) “How are you?” についてのSacks (1975) の議論と対比させながら、CSJの会話開始部の質問‐応答連鎖の特徴を概観する。(2) インタビューに特徴的なプラクティスとして、先行する発話や連鎖に対してコメントや要約を提示する定式化が挙げられる。(Heritage 1985, 好井 1999)前置きが付いた質問など、複数単位から成る質問の分析を通じて、CSJにおける定式化の様相を検討する。(3) 主に(2)においてCSJ内の2種類のインタビュー音声の比較を行い、相互行為の組織化と場面性の関わりについて検討する。

    【文献】
  • Heritage, John C. (1985) “Analyzing News Interviews: Aspects of the Production of Talk for an Overhearing Audience.” Teun van Dijk (ed.) Handbook of Discourse Analysis Vol.Ⅲ: Discourse and Dialogue. Academic Press. pp.95-117.
  • 増田将伸 (2008) 「「どう」系質問‐応答連鎖における相互行為の諸相」. エスノメソドロジー・会話分析研究会2007年度研究例会口頭発表.
  • Sacks, Harvey (1975) “Everyone Has to Lie.” Mary Sanches & Ben G. Blount (eds.) Sociological Dimensions of Language Use. Academic Press. pp. 57-79.
  • 好井裕明 (1999)「制度的状況の会話分析」. 好井裕明・山田富秋・西阪仰(編)『会話分析への招待』(第2版)世界思想社. pp.36-70.

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報告3: 池田 佳子
「TVのニュースインタビューにおける質問―応答連鎖の一考察-応答ターンのデザインに着目して-」
報告要旨:

 政治家はニュース番組などのインタビューでいわゆる「メディアうけ」を狙った、時に批判的・挑戦的な質問を受けることがある。昨今では、これらの質問をどのようにかわしていくか、政治家のコミュニケーション能力自体にその技術が必須とされるようになってきた。一方で「質問―応答」という連鎖の拘束力は強く、質問を「かわす」ことでその場の体裁を暫時的につくろったとしても、「(まともに)応答しなかった」という行動に対する評価が後から追っかけてくる。時には対話の最中に質問者(例えばインタビューであればインタビューイや司会)から一度は回避した答えについてしつこく譴責されることもある(Pomerantz, 1984他)。ある時には、ジャーナリストやメディアにその「逃げ腰」な態度が批判され、間接的に支持率の低下などの世論へのダメージを引き起こすこともある。完全に逃避しても、そして真っ向から回答しても損をしてしまう為、「抗いながらも回答をする」という回りくどい行動を強いられることになる(Clayman, 2001; Heritage & Clayman, 2002他)。本発表では、インタビューにおける「質問―応答」の連鎖場面を検証し、この「応答に埋め込まれた抵抗(resistance to answer)」が政治家の(言語)行為の実践にどのように顕れるのかを考察する。

    【文献】
  • Pomerantz, A. (1984). Pursuing a response. In J. M. Atkinson & J. Heritage (Eds.), Structures of social action (pp. 152-163). Cambridge: Cambridge University Press.
  • Clayman,S. (2001). Answers and Evasions. Language in Society 30(3): 403-442.
  • Clayman, S. & Heritage, J. (2002). The News Interview: Journalists and Public Figures on the Air. Cambridge: Cambridge University Press.

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報告4: 細田 由利&デビッド・アリン
「教育場面における質問と応答の連鎖に関わる優先組織」
報告要旨:

 本発表では小学校の英語授業における教師の質問に対する児童の返答を検証し、教育場面における質問と応答の連鎖に関わる2つの優先組織について論じる。
 質問―応答の連鎖では、現在の話者が次の話者の選択を行って質問すると選択された者に応答する権利と義務が与えられるとういう優先性が生じる(Sacks, 1987)。しかしながらStivers and Ribinson (2006)の最近の研究によれば、日常会話においては「選択された者が応答する」という優先性が「会話を前進させる」という優先性と衝突してしまった際には、会話の前進のほうが重視され、選択された者以外の会話参与者が選択された者のかわりに応答するということがあるようだ。
 今回データとして分析したのは全国の小学校における英語授業、総計22クラスである。それぞれのクラスにはクラス担任教諭、英語を得意とする外国人指導助手(ALT)、および20名から30名程度の児童が授業参加しており、また約半数のクラスには英語教育サポーターを勤める大学生が数名参加している。
 分析の結果、語学教室という社会組織特有とも思われる特徴が、上記の質問と応答の連鎖に関わる2つの優先組織に観察された。日常会話と異なり、語学教室の相互行為では、相互行為参与者達はいかなる場合も「選択された者が応答する」という優先性に志向を示し、それによって「会話を前進させる」という優先性は緩和されることがある、ということがわかった。

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2010年度研究会大会



→短信:簡単な報告と写真を掲載しました [2010/12/20]

概要

下記の要領で,エスノメソドロジー・会話分析(EMCA)研究会の年次研究大会を開催する予定です.様々な分野から多くの方にご参集いただき,議論に加わっていただけますことを期待しております.
 なお,午後のシンポジウムでは,「医療とケアのエスノメソドロジー」に焦点を当てたいと考えております.エスノメソドロジーは、ガーフィンケルの精神病院外来の研究、サックスの自殺予防センターの研究、サドナウの病院死の研究などに代表されるように、医療やケアを題材とした研究を通じてその基盤を形作ってきました。また、会話分析の進展に伴って、近年では、メイナードやヘリテイジらを筆頭に、医療やケアに関する緻密な経験的研究が豊富に生み出されてきており、この動向は英米圏にとどまらない広がりを見せつつあります。日本においても、先ごろ出版された『女性医療の会話分析』に代表されるように、エスノメソドロジー・会話分析の方法論に基づいて医療・ケアの分析を行う研究者が増えてきています。このシンポジウムは、こうした動向を受けて、日本における医療とケアに関するエスノメソドロジー・会話分析研究の現状を共有するとともに、この動向をさらに推し進め、国際的に通用する研究成果を日本から生み出していくひとつのきっかけにしたいと思います。

(担当世話人:川島理恵,串田秀也)

  • 日時:2010年11月 8日(月)10:00~17:30
  • 場所:京都大学稲盛財団記念館大会議室(地図
プログラム
  • 9:30 受付開始
  • 10:00-11:55 一般報告
    10:00-10:35 「或る認知症高齢者と健常者の視線変化数と行為頻度数の比較」 吉村雅樹(京都工芸繊維大学) [→要旨]
    10:40-11:15 「保健指導における対面型支援の分析」 池谷のぞみ(Palo Alto Research Center)・粟村倫久(Palo Alto Research Center)・橋本和夫(東北大学)・黒川悦子(東北大学)・齊藤辰典(東北大学) [→要旨]
    11:20-11:55 「身体化された視覚・再訪」 西阪 仰(明治学院大学) [→要旨]
  • 11:55-13:00 昼休み(世話人会)
  • 13:00-13:30 総会
  • 13:30-17:30 シンポジウム「医療とケアのエスノメソドロジー」
    13:30-14:15 「柔道整復師のプロフェッショナルヴィジョンとインフォームド・コンセント」 海老田大五朗(東京医学柔整専門学校/東京福祉大学) [→要旨]
    14:20-15:05 「身体はテキストを離れ、経験を交換する:グループホームのカンファレンスにおける発語とジェスチャー」 細馬宏通(滋賀県立大学)・中村好孝(滋賀県立大学)・城綾実(滋賀県立大学)・吉村雅樹(京都工芸繊維大学) [→要旨]
  • 15:05-15:25 小休憩
    15:25-16:10 「精神科診察における“糸口”としての例外報告」 串田秀也(大阪教育大学) [→要旨]
    16:15-17:00 「救急ホットラインにおける依頼行為の会話構造」(川島理恵) [→要旨]
  • 17:00-17:30 全体討論

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報告要旨(報告順)

「或る認知症高齢者と健常者の視線変化数と行為頻度数の比較」
吉村雅樹(京都工芸繊維大学)
 認知症高齢者の生活では、身体機能の障害によらないのに、しばしば「xxができない」「xxをしてくれない」という事態に出会う.これらは当事者本人の意図に起因しているとは考え難い振る舞いである.日常生活における「xxができない」「xxをしてくれない」という当事者の状況は、その時に必要な行為が遂行されないことによる停滞だけでなく、周囲の人々に当事者に属する困難性を感じさせ「認知症」によることとして理解させる.しかし、それは脳機能という生物学的かつ機械的な説明であり、認知症高齢者の日常生活における活動を彼らの生活世界において説明するものではない.
 本発表では、認知症高齢者施設でのボール遊びのビデオ録画から「ボール遊びが困難な人」として周囲からマークされる一人の利用者と周囲との相互行為を分析する.そこから、周囲の人々から困難性があるという評価がなされるときに、その当の行為が当事者にとってどのような意味をもつ行為であったのかを考察する.また、周囲の人々の健常な行為と比較しつつ困難性という評価や「認知症」という理解を再考したい.
「保健指導における対面型支援の分析」
池谷のぞみ(Palo Alto Research Center)・粟村倫久(Palo Alto Research Center)・橋本和夫(東北大学)・黒川悦子(東北大学)・齊藤辰典(東北大学)
公衆衛生の分野では、運動習慣を行動介入によっていかに改善するかが焦点の一つとなってきた。日本でもメタボリック・シンドロームに焦点をあてた健康プログラムとして、特定検診・特定保健指導が開始された。食事と運動両面での行動変容支援の一環として行われる保健指導は、基本的に対面で実施されることが想定されている。しかしその対面支援における実践に関する調査研究はなされていない。本報告では、運動習慣に関わる支援の環境を整え、参加者を募集し、人間ドックを起点とした3ヶ月の支援を対象に面談のビデオ録画や、関係者(支援者、支援対象者)へのインタビューを通じて得られたデータを対象にした分析結果を報告する。特に、支援者の生活習慣や生活状況を把握し、実行プランを作ることがいかに支援対象者の取り組み方と関わり得るのかに焦点をあてる。

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「身体化された視覚・再訪」
西阪 仰(明治学院大学)
30程の妊婦定期健における診超音波検査において,セッションによっては医師や助産師が妊婦の顔を見遣ることは,きわめてまれである.1つの観察として,妊婦が連鎖を開始したとき,その開始された連鎖を医師・助産師が完了するとき,医師・助産師は,妊婦の顔を見遣る傾向がある.ここから,妊婦が連鎖を開始していない場合でも,医師・助産師が超音波検査中に妊婦の顔を一瞬見遣る振る舞いは,なんらかの「妊婦による活動の開始」への志向の結果と分析できるかもしれない.この医師・助産師の振る舞いに注目しつつ,報告者が,活動単位を記述する概念として長年用いてきた「参加フレーム」(「そのつどレリバントな社会的アイデンティティを身体の配列をとおして実現し,その身体の配列によって同時に,その社会的アイデンティティによって担われる活動を実現していくような,そういう身体の配列の,構造的な境界を伴う単位」)という考え方を応用することで,見ることとの活動の関係,見ることと身体の配列との関係について,若干の考察をこころみたい.
「柔道整復師のプロフェッショナルヴィジョンとインフォームド・コンセント」 海老田大五朗(東京医学柔整専門学校/東京福祉大学)
本研究では、2010年3月某日に、関東 地方の某接骨院にて、私が直接ビデオ撮影した映像データを分析する。本データにおいて、患者はアキレス腱断裂して手術をしたが2ヶ月以上経っ た現在も予後が悪いという感覚をもつ、初めて当該接骨院に来た60代女性であった。柔道整復師は、施術をする前に、超音波画像観察装置を使用してアキレス腱の状態を調べた。本研究の焦点の一つは、超音波画像観察装置を使用して切りとった静止画の見方を、柔道整復師が患者に教える場面である。患者が感じているアキレス腱の違和感は、この画像を通じて説明される。ここでは柔道整復師による画像の見方の指導と説明の分析が鍵となる。もう一つの焦点が、今後のリハビリテーションについての患者からの同意を、どのようにして柔道整復師は得ていくかである。患者の腱についての疑問に対して、柔道整復師は筋肉について説明をし、またこれらの説明が今後のリハビリテーションにつながっていく。これらの場面での柔道整復師と患者との相互行為を記述することによって、どのようにして「イン フォームド・コンセント」は達成されたかを示していきたい。

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「身体はテキストを離れ、経験を交換する:グループホームのカンファレンスにおける発語とジェスチャー」
細馬宏通(滋賀県立大学)・中村好孝(滋賀県立大学)・城綾実(滋賀県立大学)・吉村雅樹(京都工芸繊維大学)
 介護施設では「カンファレンス」と呼ばれる定例の会合で、介護者どうしが報告と意見交換を行う。介護者たちは日誌、ノートというテキストを手元に置き、いつでも書き込みができるよう筆記用具を用いる。
 しかし介護者の身体はしばしばテキストから離れ、雄弁にジェスチャーを繰り広げる。介護者は、指示語 と身体動作を駆使して自分と入居者との関係を語り、他の介護者もまた身体動作によってその報告に同意したり異議を唱えたりする。互いの経験が異なるとき、介護者たちは異なるジェスチャーを同時に、もしくは前後して示し合いながら、経験の差を身体によって示し、互いの知識をバージョンアップし、それをノートに書きつける。このような身体動作は、実際にはどのように始められ、どのような時間構造をとるのだろうか。この問題を、本発表では、「拡張ジェスチャー(グランド・ジェスチャー)(細馬 2009)」(隣接ペアのターン間で継続して起こる一続きのジェスチャー単位)の概念を用いて考察する。
 まず、いくつかの事例に基づき、ノートに向かっていた身体がいかにノートから離れ、ジェスチャーによって関係を開始するか、逆に参与者の一部のノートに向かう行動が、いかにジェスチャー・シークエンスの終了をもたらすかを記述する。次に、拡張ジェスチャーによる身体動作の交換と改変の過程を見るために、入居者の身体について語り合う事例を取り上げる。これらの記述を元に、それぞれの介護者の経験がカンファレンスにおいてどのようにバージョンアップされるのかを考える。
「精神科診察における“糸口”としての例外報告」
串田秀也(大阪教育大学)
 現在、日本の精神科治療は薬物療法を中心としており、精神科外来診察の主たる目的はクスリを処方することである。とくに、本報告の分析対象である再診場面において、処置はおよそ、前回のクスリを①引き続き処方する、②増やす、③減らす、に大別される。だが、通院治療を受ける患者は、心身症状以外にさまざまな生活上・人間関係上の懸念/関心(concern)を持ち、それへのさまざまな対応(クスリ処方、助言、共感、説明など)を医師に求めている可能性がある。患者は、①~③の処置に直結しない懸念/関心を診察の中でいつどのように提示するべきか、また、医師はそれらをどのように見分け、重みづけし、対応すべきかという相互行為上の問題に構造的に直面しうる。
 本報告では、診察の開始直後に患者が行う症状の更新報告(updating)の中で、とくに「例外(exception)報告」と呼びうる発話形式に焦点を当てる。例外報告とは「だいたい安定しています。ただ、若干眠気が多いんですけど。」のように、最初のひとまとまりの更新報告に対する例外として、何らかの心身症状が控えめに付加される形式である。このような形で導入された心身症状に医師が注意を向け、患者がそれを掘り下げる機会を得るとき、それはその症状そのものとは別の懸念/関心(たとえば、夫婦関係についての心配、職場についての心配など)の開示へとつながっていくことがある。いくつかの連鎖パターンを視野に入れながら、例外報告が、「前回診察以降の症状の変化」という枠に収まらない関心/懸念を患者が慎重に導入するための、ひとつの系統的「糸口」になっているのではないかと論じてみたい。
「救急ホットライン会話における依頼行為の会話構造」
川島理恵(埼玉大学・東京医科大学)
 昨今の救急医療では、「搬送先選定困難事例」、一般に「たらい回し」と呼ばれるケースが社会問題化しつつある。病院前救急体制では、病院と消防が事前連絡で十分に情報を共有し、傷病者の搬送先が速やかに決定されることが必要であるとされている。本研究では、会話分析を用いて救急ホットライン会話における情報共有と依頼行為の会話構造を明らかにする。
 ホットライン会話の基部となる依頼行為が複雑化する起点がいくつか明らかになった。まず受け入れ可能かどうかの応答において曖昧な表現が使われた場合。そして決定権に関するやり取りが生じたりした場合に、全体的な会話構造が複雑になっていた。今回の発表では、こうした依頼行為における特徴を、会話のみでお互いの状況に対する認知環境を構築している参与者間でのaccountabilityの達成という観点から論じる。

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お問い合わせ

  • 研究大会に関する問い合わせは 串田秀也(串田) まで
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2009年度研究例会
[開いて読む]



→短信:簡単な報告と写真を掲載しました [2010/05/27]

概 要

法のエスノメソドロジーと会話分析:マックス・トラバース氏を招いて

 今回は、マックス・トラバース(Max Travers)氏の来日に併せて、「法」を巡る現象(法律、裁判、ルール、規範、法意識、法カテゴリー、法専門職・法制度内相互行為などを広く含む)に焦点を当てることにしました。
 午前は北村隆憲会員の協力を得て研究報告を設定しました。午後はエスノメソドロジーおよび会話分析の観点から法現象の研究を行うトラバース氏(マンチェスター大学より博士学位授与、現在 School of Sociology and Social Work, University of Tasmania, Australia において Senior Lecturer、英国でソリシター(事務弁護士)としての資格と経験も持つ)による2つの講演があります。どうぞふるってご参加ください。なお、トラバース氏の講演には逐次通訳がつく予定です。お問い合わせは、世話人 sewanin[atmark]emca.jp までお願いいたします。
※例会後に懇親会も予定しておりますので、ふるってご参加ください。(担当世話人:南保輔・前田泰樹・ 池谷のぞみ)

■日時: 平成22年3月26日(金) 10:00~17:00(参加費無料)
■会場: 成城大学3号館3階大会議室 [地図

【午前の部】研究報告(日本語/英語)

    (司会: 北村隆憲(東海大学))
  1. 中山和彦(神戸大学)
    協働決定としてのインフォームド・コンセントへ向けて-ALSとともに生きる人の経験を手がかりとして
    (Toward Informed Consent as a collaborative decision between clients and doctors: on the basis of the ethnomethodological inquiry into people's experiences living with ALS)[→要旨
  2. 山田恵子(神戸大学)
    法律相談における「法的合理性」の指示と共通リアリティの産出
    (Sharing Reality: Lawyer's Instruction of "Legal Rationality" and "Psychological Understanding" in Legal-Counseling)[→要旨
  3. 小宮友根(明治学院大学ほか非常勤講師)
    法的推論と常識的知識
    (Legal Reasoning and Commonsense Knowledge)[→要旨
  4. 米田憲市(鹿児島大学)
    「法」的なものとして特徴づけること - ローヤリング・スキル教育のビデオデータからの知見(仮)
    (Characterizing It As Legal:Some findings in Video Data of Lawyering Skill Education)[→要旨
  5. 樫村志郎(神戸大学)
    いかにして、人々は、法を用いて/用いずに、法に従うか?
    (How do people follow the law/rules with/without laws/rules?)[→要旨

【午後の部】講演:マックス・トラバース(通訳つき) 14:00~17:00

    (司会:池谷のぞみ(Palo Alto Research Center))
  • (前半)Ethnomethodology, conversation analysis and law
  • (後半)In search of court culture: How ethnographic methods explain juvenile detention rates in three Australian states

プログラム1: 研究報告と議論 〔報告要旨〕

報告1: 中山和彦
協働決定としてのインフォームド・コンセントへ向けて-ALSとともに生きる人の経験を手がかりとして
(Toward Informed Consent as a collaborative decision between clients and doctors: on the basis of the ethnomethodological inquiry into people's experiences living with ALS)
報告要旨:

 今日、医師は重大な医療行為について施術の適否を、患者の意思を考慮し決定するべきだと考えられている。これは、インフォームド・コンセント(以下、ICと略称する)と呼ばれる。実効的なICは、医師と患者の間の円滑なコミュニケーションを前提とする。しかし、今日の医師患者関係の様々な性質は、かかるコミュニケーションを困難にしている。本研究は、ある難病(ALS=筋萎縮性側索硬化症)における、4例の医師患者関係事例を、患者/患者家族への聞き取りに基づいて理解し、円滑なコミュニケーションを実現するための条件を探究するものである。
 本研究は、医師と患者の円滑なコミュニケーションを妨げる性質として、次の4点に注目する。(a)医師-患者関係は「権力的関係」と言われ、非対等性が見られる。(b)交換される情報に関しても、専門知の有無という点から「非対等性」が見られる。(c)さらに、交換される情報の内容について、「医療の高度化・複雑化」に由来して、複雑な治療に対する理解可能性を医療側が求める必要がある。(d)日常生活の様々な側面が医学的問題として捉えられることにより、「医療が日常生活に介入」している。
 ICは、実定法・法理論のほか、専門医学会が策定する治療ガイドラインにより、規範的に規定されている。本研究では、まず、それらの実定法・法理論、ソフトローたる治療ガイドラインによって、どれほど具体的に、医師患者間のコミュニケーションが規律されているかを一般的に検討する。それらの規律においては、患者の自己決定権を尊重しなければならないことなどが一般的には規定されているが、患者と医師のコミュニケーションを実践的に規律できるほどの明細性に欠けていると考えられる。
エスノメソドロジーの視角によれば、人々がかれら自身の関係についてもつ理解は、人々がそれぞれの場面において適切さをもつものである。この視角を参照しつつ、医師-病者(患者)関係におけるコミュニケーションのあり方を記述する。
病気や治療の定義は、医療相互行為の中で状況依存的に行われていること,病気の認識や治療の意義が医療相互行為の中で状況内在的に行われていること,そして,医療的意思決定は医療相互行為の中でのみ達成されることである。この視角から,(1)病気探索過程 医師と患者との治療関係に先立ち,患者自身や家族による病気への対処や診断の探索が行われていること,(2)制度的医療過程の可変性と状況依存性 医師と患者の相互行為の開始は,患者らによる病気探索のコンティンジェントな達成である。その後の相互行為の展開において、医学とともに,日常的状況が問題になる。このことから治療目的は,可変的ないし多様となる。病人は、制度に取り込まれることで、患者へと変容する。(3)告知 医師の診断を受けるという段階において、医師と患者の相互行為は、相互の了解と共同を達成するという関心に基づく組織化の条件や基盤として、意識されている。患者は、家族とどのように過ごしていきたいかに基づく判断を行っている。医師は、患者に選択を委ねるという、患者の日常性への配慮を示している。つまり、決定は、医学的な性質と生活重視的な性質のものの結合である。しかし、患者自身の日常的行為の自力遂行の困難と家族の介護の負担による通常生活の困難は、<家族と共にある日常性>を喪失させている。病者・患者の決定は、孤独に行われる。患者の決定が、十分な情報基盤の上で行えるように、情報提供の必要性が重要である。
 以上を踏まえ、医師-患者関係を適切に構築するためには「協働決定」の関係を本質とすることを主張する。このことは、医師に対して患者が積極的に発言する、あるいは発言を控えるという現象の観察に基づくものだ。診療場面において、医師と患者間では、交渉がなされ、責任の分配をしている。診療過程における決定は、病者と支援者との間の相互行為を含んだものである。これまでの考察から示唆されることは、病気の対処過程は、日常世界と制度的世界の二重性を有している。医師と専門支援者と患者・病者の関係は、潜在的に双方向的かつ協同的関係になる傾向がある。
 上記の考察から、インフォームド・コンセントの有効活用の要件として、3つ挙げる。(1)医師と患者において、双方が問題の可視化と共有すること。(2)協働決定としての自己決定が重要だ。過度な自己決定は、パターナリズムに回帰する危険性がある。(3)日常的世界と医療専門的世界の文脈の「配慮」による結合。つまり、患者は、<家族と共にある日常性>を希求する。この日常性回復のために<治療の対象としての病気>に関する専門知の必要性。このことを実現するためには、段階的インフォームド・コンセントが必要であり、専門医療的文脈の外にある日常性の文脈への影響をコントロールする必要性がある。

報告2: 山田恵子
法律相談における「法的合理性」の指示と共通リアリティの産出
(Sharing Reality: Lawyer's Instruction of "Legal Rationality" and "Psychological Understanding" in Legal-Counseling)
報告要旨:
 周知のように、わが国の法律相談研究は、弁護士による相談者の心理の排除、抑圧という理論的・経験的理解の下、法と心理の調整を、法学と臨床心理学(とりわけカウンセリング)の協働によって解決しようとしてきた。これらの研究にはいくつかの理論的・方法論的バージョンが存在するが、いずれも「法」と「心理」を相互に関連付ける当事者達の「実践的方法論」を看過してきた点で同一である。本報告では、ある法律相談場面の会話分析を通して、かかる方法論それ自体―法と心理の現実的連関という基礎的問題―に光を当ててみたい。具体的には、両当事者が「法」および「心理」を「資源」ないし「課題」とすることで、いかにして「法的合理性」の指示を達成し共通リアリティを産出しているかについて検討する。なお、本報告で扱う会話記録は、報告者が2006年の8月から11月にかけて東北地方の某法律事務所で参与観察を行ったさいに収集したデータの一部である。
報告3: 小宮友根
法的推論と常識的知識
(Legal Reasoning and Commonsense Knowledge)
報告要旨:
 一般的に言って、法的推論はきわめて専門性の高い実践である。法や判例、学説についての膨大な知識がなければ、目の前の事実にどの法をどう適用すべきかを決めることはできない。他方、法的推論においては常識的知識の運用も欠かすことの出来ない重要な要素である。法令を適用すべき「事実」がいかなるものであったかは、常識的知識の使用なくしては決して理解できない。  本報告では刑事裁判において常識的知識が法的推論の中でどのように用いられているかを検討することで、規則(法)と行為(犯罪事実)の相互反映的関係について考察する。一方で法は犯罪事実に適用されるのだが、他方で法の意味は犯罪事実の認定を通してそのつど明らかにされる。このことから、常識的知識が法システムにとって構成的なものであることを論じる。
報告4: 米田憲市
「法」的なものとして特徴づけること - ローヤリング・スキル教育のビデオデータからの知見(仮)
(Characterizing It As Legal:Some findings in Video Data of Lawyering Skill Education)
報告要旨:
I will report some of the members skills to find "legal" in the situation of Lawyering Skill Education and observing it. Last September, we conducted the experimental trial with the cooperation of our research project member and some students of the Legal Training and Research Institute. The class of Lawyering Skill Education including legal counseling practices and legal negotiation practices was carried out then. I organized it as trainer and we have observed and participate in it, and got Video Data. Using the results of analysis on this data, I will show some practice to illustrate "legal".
報告5: 樫村志郎
いかにして、人々は、法を用いて/用いずに、法に従うか?
(How do people follow the law/rules with/without laws/rules?)
報告要旨:

 本報告では,人々が法を用いて/それを用いずに、行う法追従について、一つの見方を提案する—その見方によれば、(A)人々が法に従って行為すること(法追従)と、(B)人々がそのこと(法追従)を記述したりそのことが法に合致している/いないと述べることは、一つの事実に異なった仕方で関わり合うことであると、主張される。また、通例的法社会学と法のエスノメソドロジー研究とは,後者が法社会学における説明の学問的基礎および法実践の社会的基礎とを,経験的かつ批判的に解明することにつながるという関係にあると主張される。この立場の要点を例を通じてあきらかにしたい.
 法の社会的側面にかかる通例的記述(通例的法記述)では,法の社会学的側面を理解するために,(1)法という主題を法にかかわる経験的事実として定義し,(2) 法にかかわる経験的事実の報告/記述を対象として,(3) 法という主題にかかわる一般的で経験的な言明体系にそれを位置づける,という作業を行ってきた,あるいは,そう行うべきだ,とみなされてきた.これに対して,1950年代後半から今日までのエスノメソドロジー研究の発展(参照,Garfinkel 2002)は,(1) 根底的にルールに依存しない社会学的説明を行う点,(2) ルールをその使用の中で解明しようとする点などから,その独特な社会学的立場を形成してきた(樫村 2009).このようなエスノメソドロジーの立場は,法社会学理論と競合する関係に立つのではなく,法社会学研究にあらたな主題と関心を付加するものである(樫村 2004a, 2004b).
 効率的議論のために,一組の行為からいくつかの例を提供する.それは,法学部学生が社会的ルールを観察するなかで,法に関する一般的知識をいかに用いるか(学生の社会学によるルール研究)である.つぎに掲げるのは,そうした例であって,ある法学部学生が,社会的ルールの「経験的観察」を行い,それに対応する「説明/理論化」を行った例である(同一人が同一場面で行ったものである).

(観察の例)

A「人々はエスカレーターに乗ると必ずより急ぐ人の為に片側をあけていた.一段に二人ずつ乗っている人はいない.みな行儀よく一段に一人ずつ乗り,急ぐ人はあけられた側を登っていく.しばらくすると列が途切れた.列が途切れてはまた人がエスカレーターに乗っていく.規則正しく,片側によって.片側をあける際は,必ず右側に寄るというわけではないらしい.ある列では右側に,違う列では左側とバラバラだ.・・・」 (対応する説明/理論化の例)
B「『人の流れを妨げない』,『エスカレーターの片側をあける』といったルールが互いに理解されている.人の流れを妨げないという事が互いに理解されており,相互調整がとられている.調整を可能にするメディアは言語ではなく,人の歩く方向や目標がその場で即座に理解できるものだ,という事情にかかわるものであることが分かる.・・」

 以上のような構造をもつ行為により,法社会学的観察者/説明者たる地位において,学生が何をしているか/何をしていないか.(「ルールが互いに理解されている」という部分は,説明ではなくて観察だと見たい人もいるだろう--それはなぜか,ということもここで問題になりうることの一つである.)なお,この例についてなされうる一つの観察は,観察者/説明者は,こうするなかで,法/社会的ルールに追従するという行動(法/ルール追従)のある側面を決して見ないということである.
 このような仕方で,法社会学理論の作業と法社会学的研究--法専門家が行うものであれ,法以外の各種専門家が行うものであれ,素人が行うものであれ--,社会学的事実として法を構成する諸事実,およびそれらの間の関係は,経験的社会的事象として,エスノメソドロジー研究の対象となる.エスノメソドロジー研究は,人々が秩序において何をするのか,とりわけ,法理解に関して人々が実際に何をするのかを問 う.
 また,これらの検討により,実体法(制定法や判例といった、書かれた法)や通例的法理解(たとえば、法社会学理論、法解釈学説)はいかにしてエスノメソドロジー研究に役立てられうるか(専門家の法社会学研究・法社会学理論・人々の法遵守行動とそれらの関係)も議論してみたい(参照,樫村 2002).

参考文献:
Garfinkel, Harold   2002Ethnomethodology's Program: Working Out Durkheim's Aphorism amazon (Legacies of Social Thought) Rowman & Littlefield.
樫村志郎 2009「局地的に生成される秩序としての法」(日本社会学会第82回大会「ハロルド・ガーフィンケルの業績の再評価」報告,2009年10月12日,立教大学)
----------2007「水平的秩序の法--グローバル性のもとでの法、政治、市民社会の再定義--」樫村志郎編『規範と交渉(法動態学叢書・水平的秩序 1)』 amazon法律文化社
----------2004a「法現象の分析」山崎敬一編『実践エスノメソドロジー入門』有斐閣.
----------2004b「エスノメソドロジーと法」和田仁孝・太田勝造・阿部昌樹編, 『法と社会へのアプローチ』 amazon日本評論社.
----------2002「実定法について─エスノメソドロジーの視角から─」佐藤進=斉藤修編集代表『現代民事法学の理論─西原道雄先生古稀記念─・下巻』 amazon信山社.
----------「2009年度・応用法社会学ホームページ」

ご紹介: トラバースの主要な編著書
  1. Theory And Method in Socio-legal Research amazon (Onati International Series in Law & Society), Hart Publishing, 2005. (Reza Banakarとの共編著)
  2. An Introduction to Law and Social Theory amazon, Oxford, Hart Publishing, 2002. (Reza Banakarとの共編著)
  3. Qualitative Research through Case Studies amazon, London, Sage, 2001
  4. The British Immigration Courts: A Study of Law and Politics amazon, Bristol, ThePolicy Press, 1999.
  5. The Reality of Law: Work and Talk in a Firm of Criminal Lawyers amazon, Aldershot, Ashgate, 1997.
  6. Law in Action: Ethnomethodological and Conversation Analytic Approaches to Law amazon, Aldershot, Ashgate, 1997. (John. Manzoとの共編)

 上記リスト6のトラバースとマンゾー共編文献は、これまでの法現象に関するエスノメソドロジー・会話分析的研究中の初期及び最近の業績を集めた論文集で、邦訳が現在進行中です(北村隆憲 監・訳、岡田光弘・池谷のぞみ・小宮友根訳『社会的実践としての法―エスノメソドロジー・会話分析アプローチによる“生ける法”の探求(仮題)』 新曜社、2010年)。
 また、上記5の文献からの2つの章と「法のEMCA」についての概説論文とが邦訳されています(以下のWEBサイトからダウンロード可能です:http://pubweb.cc.u-tokai.ac.jp/ken3282/北村情報/gyoseki.htm)。


お問い合わせ

  • 研究例会に関する問い合わせは、sewanin[atmark]emca.jp (EMCA研世話人)まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2009年度研究会大会



→短信:簡単な報告と写真を掲載しました [2009/12/13]

概要

下記の要領で,エスノメソドロジー・会話分析(EMCA)研究会の年次研究大会を開催する予定です.様々な分野から多くの方にご参集いただき,議論に加わっていただけますことを期待しております.

 なお,午後のシンポジウムでは,いわゆる「ワークの研究」に焦点を当てたいと考えております.ガーフィンケルによって始められたワークの研究は, その後のエスノメソドロジーにおいて受け継がれ,社会学自体における理論的概念を再検討する機会を与えてきただけでなく,さまざまな領域との関係を持ってきています.たとえば科学研究,組織研究,社会福祉研究,システムデザイン研究などです.社会学のみならず,隣接領域でのフィールドワーク研究への関心の高まりもあるなかで,改めていくつかの領域におけるワークの研究について概観しながら,その意義や今後の展望を検討する機会としたいと考えています. (担当世話人:前田泰樹,池谷のぞみ,西阪 仰)

■開催日: 2009年10月25日(日)
■会 場: 東海大学高輪校舎地図 4号館 421教室

プログラム

  • 9:50 開会
  • 9:55-12:30 自由報告の部
    1. 西阪 仰「定期健診における問題提示―位置とデザイン」 (9:55-10:30) [→要旨]
    2. 小宮 友根「被害者の意思を「正しく」認識すること」 (10:30-11:05) [→要旨]
      [休憩 15分]
    3. 権 賢貞(クォン・ヒョンジョン)「ある対象物を指示する語の置き換え」(11:20-11:55) [→要旨]
    4. 鈴木 理恵「会話者間の相対的評価バランスの維持」 (11:55-12:30) [→要旨]
  • 12:30-13:30 昼休み[新旧世話人は,世話人会]
  • 13:30-14:00 総会
  • 14:00-17:00 シンポジウム
      報告者:
    1. 川床 靖子(大東文化大学)「インスクリプションのデザインに埋め込まれたワークのポリティクス」 [→要旨]
    2. 中村 和生(明治学院大学)「概念分析的手法による科学的ワークの研究」 [→要旨]
    3. 池谷 のぞみ(Palo AltoResearch Center)「ワークのデザインとエスノメソドロジー」 [→要旨]

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自由報告 要旨

鈴木 理恵
発表タイトル:会話者間の相対的評価バランスの維持
発表概要
本発表では,日本語の自然発生的な日常会話において,特に会話者が自己或いは他者を評価する際に,会話の連鎖構造が会話者間(時にその評価対象人物との関係をも含む)の人間力学といかに密接に関連しているかを例証する.評価発話を通して会話者がどのような社会行為を行い,それに対して他の会話者がどのように反応しているのか,これらの行為が会話者間の社会的連帯感の維持達成にどのように貢献しているのかに注目しながら,会話データを文法,音声,語用,会話展開の側面から分析する.観察する抜粋例では,発話者の自己卑下的スタンスが発話者自身と聞き手との比較の上に成立している.発話者が自身の評価上のステータスをある特定の聞き手のそれよりも低く位置づけるのに対して,聞き手は評価対象項目に関して発話者を聞き手と同等あるいはそれ以上に評価する.そうすることで聞き手は
  1. 先の発話者によって設定された両者間の相対的評価上の位置づけに異を唱え,
  2. 両者間の相対的評価バランスを調整して,ひいては
  3. 両者間の社会的連帯感の維持を試みている.
権 賢貞(クォン・ヒョンジョン)
発表タイトル: 「ある対象物を指示する語の置き換え」
発表概要
本発表は,日本語教育および第二言語習得分野の研究が日本語非母語話者の学習を検証するために用いてきた実験的会話(絵を説明し合うタスクを行う過程を収録した会話)において,ある対象物を指し示す言葉をめぐる母語話者と非母語話者のやり取りをデータとして提示する.本発表が焦点を当てるのは,非母語話者がある対象物をXと指し示すことに対し,母語話者は何ら理解に問題がないことを示す.しかし,母語話者自身がその対象物を言及するときになって,XではなくYという別の語を用いる現象である.本発表では,母語話者が,語の置き換えを通して「Xという対象物をYと指示する」という新たなルールへの変更を試みていることを述べる.また,母語話者の新たなルールへの変更により産み出される相互行為上の諸問題について論じ,母語話者がそれら問題を解決するために用いる手立てを考察する.最後に,非母語話者が,母語話者の新たな言語ルールへの変更をどのように理解しているのかについて観察する.

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小宮 友根
発表タイトル: 被害者の意思を「正しく」認識すること
発表概要
「正しい事実」の認識は,裁判(とりわけ刑事裁判)において裁判官が取り組む重要な課題のひとつである.ところで,成員カテゴリー化装置(MCD)という考えを展開する中でハーヴィ・サックスが指摘していたように,「正しい事実」の「正しさ」は,記述の認識可能性によって支えられている.したがってこの点から言えば,裁判官の課題は「認識可能に正しい可能な記述」を産出することである. 本報告では強姦事件の裁判の判決文を検討することで,そこで行為と行為者に与えられる記述が,いかに(本人の申告を否定するほど強く)行為者の心を「正しく」認識することに寄与しているかをあきらかにする.そして,MCDを用いて記述を産出する日常的実践が,法的事実を認定するという法的実践の構成要素にもなっていることから,強姦罪をめぐる独特の問題が生じていることを指摘する.そのうえで,人びとのアイデンティティを認識可能にする「装置」群の研究が,EM/CA研究の中で置かれるべき位置について,ひとつの示唆を与えたい.
西阪 仰
発表タイトル:「定期健診における問題提示―位置とデザイン」
発表概要
この報告では,「定期健診」での,医療受益者からの問題提示の組織について考察したい.西阪他『女性医療の会話分析』の7章は,いわば,現在進行中の活動に機会をえた「自己開始」問題提示の組織についての研究だった.それに対して,ここでは,医療専門家により開始されながらも,医療受益者のほうが主導権をとるような問題提示について考えたい.Stivers & Heritage (2001)が,一次医療における「検診」のなかで,医師の質問への返答のなかに,患者が問題提示を組み込む例を分析している.この報告では,42の妊婦健診のなかから,質問への答えに組み込まれた,妊婦による問題提示が,どのようにデザインされ,医療専門家にどう扱われるかを,会話分析の手法により考察する.妊婦の心配は,きわめて端的に表明されるが,それは医療専門家によってすぐに取り上げられることが少ない.この相互行為的な展開は,健診の全体構造と局所的な組織の両方向からの制約にもとづくものであることを,示したい.

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シンポジウム 報告要旨

中村和生(明治学院大学)
概念分析的手法による科学的ワークの研究
報告要旨
1972年サックスによって始められたとされるワークの研究は、その後ガーフィンケルたちによって主に自然科学の領域を対象として行われていった。本報告では、まず、第一に、ガーフィンケルの教えにおいてワークの研究とはいかなるものであったのかを最低限振り返っておく。その上で、第二に、そうした方針の下に行われた科学的ワークの研究を、とくに実験室研究とテクスト研究を中心に概観する。そして、第三に、「人工類(human kinds)のループ効果」(I.ハッキング)という発想を契機として行われた科学的ワークの研究の新たな展開として、概念分析的手法を用いた研究を取り上げる。そして、この展開の意義や貢献について若干の考察も試みたい。
川床靖子(大東文化大学)
インスクリプションのデザインに埋め込まれたワークのポリティクス
報告要旨
ワークの現場では数々のインスクリプションが産み出され、使用される。冷蔵倉庫の作業者は黒板の記述から過去と未来の荷の動きを読み作業を組み立てる。機械部品の製造過程では一つの作業標準書が異なる視点から参照され、人と技術とモノをリンクする。森林の自主管理組織で産出された帳簿類はメンバー相互の監視ひいては協同的活動の維持・構成の役割を果たす。ワークへの参加とはインスクリプションを作り使用する社会・技術的ネットワークの一員になることだ.他方、コピー機の修理実践では機械来歴表を含む様々なアーティファクトが指示、コントロール、葛藤を埋め込んでワークの現場に配置される。アーティファクトのデザインと使用が社会・歴史的葛藤の産物であり、かつ、管理システムのデザインと相互構成的関係にあることを示している。この発表では、介護保険制度を構成するインスクリプションを通して、この制度は誰が、何を、どのような観点からデザインするものか、このネットワークへの参加はどのような葛藤を内包するものかを見ていく。

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池谷のぞみ(Palo Alto Research Center)
ワークのデザインとエスノメソドロジー
報告要旨
エスノメソドロジー(EM)研究者は、ワーク研究の研究を通じて、テクノロジーを含むさまざまなデザインの領域と関わってきている。特にシステムデザインの領域では、EM研究者がフィールドワークの結果を報告したり、その分析を提示してシステムデザイナーに活用してもらう、という「情報提供」のレベルにとどまらない。システムデザイナーが組み立てる抽象化の枠組みに対して、EM研究者が分析に基づいて提示する「実践において用いられる一般化された知識」を組み込んでいくという方向性も出されている。しかし、こうしたデザインに関わる動きは、システムデザインに限らない。いわゆる制度場面と呼ばれるような場面における活動などは、あらかじめ組織において「デザイン」されなければならない。EMがいかに「ワーク」のデザインと関わり得るのか、事例を交えながら報告する。

お問い合わせ

  • 研究大会に関する問い合わせは augnish(atmark)soc.meijigakuin.ac.jp (西阪) まで
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2008年度研究例会
[開いて読む]



概 要

今年は、午前中に研究報告、午後には「会話分析と概念分析の関係を再考する」と題して発表+ディスカッションを催します。みなさんお誘いあわせの上、是非ご参加ください。(担当世話人:西阪仰・前田泰樹・池谷のぞみ)

■日時: 2009年3月30日(月) 9:30~17:00
■会場: 明治学院大学白金キャンパス 本館1201教室[アクセスマップ地図
■参加費: 会員* 500円/一般 1000円(予定)
 * 入会申込については →入会のご案内 をご参照ください。

プログラム1(9:30~12:30)研究報告と議論

    (司会進行:池谷のぞみ(Palo Alto Research Center))
  • 09:40-10:30 研究報告1: 
    岩田夏穂(東京国際大学)・初鹿野阿れ(東京外国語大学)・西阪仰(明治学院大学) 「発話連鎖におけるからかいと反応」[→要旨
  • 10:40-11:30 研究報告2: 
    田中剛太(明治学院大学大学院) 「からかいの誘い」[→要旨
  • 11:40-12:30 研究報告3: 
    権賢貞(筑波大学大学院) 「日本語第一言語話者と第二言語話者の相互行為における知識探索:指示対象に対する間 主観性と相互行為の進行性をめぐって」[→要旨

プログラム2(14:00~17:00)会話分析と概念分析の関係を再考する

企画主旨:
近年(2006年度から2008年度にかけて),日本語で書かれたEMCAの研究書が立て続けに出版されました。それらを一望すると,一方で,日本語の会話分析・相互行為分析の洗練と蓄積が示され,他方で,原点に立ち戻りつつ概念分析の可能性が模索されています。そしてそれだけでなく,その両者を一貫したものとして理解しようとする論考もみることができます。そこで,本プログラムでは,会話や相互行為についての研究と,概念の連関についての研究との関係について再考してみたく思います。さまざまなEMCAの知見を参照しつつも,たんに「理論」的な観点のみからではなく、実際の現象の「記述」という観点からみて,さまざまな研究方針それぞれの利点を生かしていく方向性について,議論する場となれば幸いです。
  • 14:00-14:20 EMCA研広報活動報告: 五十嵐素子(光陵女子短期大学)・酒井泰斗(無所属)
    (司会進行: 五十嵐素子・酒井泰斗)
  • 14:20-15:00 報告1: 浦野 茂 (青森大学)「社会学における概念分析の使い道――人種をめぐる近年の議論の検討を通じて」 [→要旨
  • 15:00-15:40 報告2: 前田泰樹(東海大学)「失語症研究と言語療法の社会学的記述――記憶と想起の論理文法」 [→要旨
  • 15:40-16:20 報告3: 串田秀也(大阪教育大学)「精神科デイケア面接場面における「気になる」こと」 [→要旨
  • 16:20-17:00 全体討論

プログラム1: 研究報告と議論 〔報告要旨〕

研究報告1: 岩田夏穂(東京国際大学)・初鹿野阿れ(東京外国語大学)・西阪仰(明治学院大学)
「発話連鎖におけるからかいと反応」
報告要旨:
 報告者らは,3つの日常会話断片を繰り返し検討しているなかで、いくつか「からかい連鎖」と呼べるようなものを見出した。この連鎖が,隣接ペアのように、開始部が完結部を強く示するものであるかどうかはおいておくとして、「からかい」が出現したあとには、それに対する「反応」のための何らかの位置が用意されるように思える。一方、「反応」には、からかいへの同調性という点において、ゆるい順序化があるようにも思える。この報告では、この順序化を確認するとともに、どのような反応がその序列にもとづいて選ばれるかについてそのレリバンス・ルールのようなものを、とくに、からかいの出現する発話連鎖上の位置に注目しながら,定式化するための手がかりを得たいと考える。
研究報告2: 田中剛太(明治学院大学大学院)
「からかいの誘い」
報告要旨:
 本報告では、会話における「からかい(teasing)」の連鎖の中でも、特に、次の順番において「からかい」を受けることを期待していると思われるような発話順番に焦点を当てる。ただし、そのような「からかいの誘い」自体は、必ずしも「自己卑下」的な発話であるとは限らない。むしろ、相手から何らかの形で非同意が提示されることに志向しているような発話であることが多いように思われる。本報告は、このような「からかいの誘い」、言わば"teasable"が見られる行為連鎖上の環境、およびそれが持つ相互行為上の役割について、どのように分析・記述できるかを探るための話題を提供するものである。
研究報告3: 権賢貞(筑波大学大学院)
「日本語第一言語話者と第二言語話者の相互行為における知識探索:指示対象に対する間 主観性と相互行為の進行性をめぐって」
報告要旨:
 本発表は、初対面の日本語第一言語話者と第二言語 話者が、本発表者の論文のデータ収集への協力を頼まれ、与えられたタスク(絵カードを説明し合い、一つ の物語を完成する課題)を行った会話を分析対象とする。特に、本発表は、話し手が、ある対象物を表す語(日本語及び英語)に対して受け手の知識を照会し「Xってわかりますか/知ってますか」)、主要活動の進行性が停滞する現象に注目する。本発表では、 会話参与者たちが、指示対象に対する知識を確立することと、主要活動を進行することの間に生じる交渉をどのように対処しているのかについて観察していきたい。また、会話参与者たちが、どのようにして指示対象を「日本語」で示すことを志向しているのかを観察することで、日本語使用における会話参与者のアイデンティティについて考えたい。

プログラム2: テーマ「会話分析と概念分析の関係を再考する」 〔報告要旨〕

報告1:浦野 茂
「社会学における概念分析の使い道――人種をめぐる近年の議論の検討を通じて]
報告要旨:
 人間と社会についての経験科学的知識は、それじたいが社会関係のなかにおいて、したがってこれを理解可能にする一連の概念連関を根底的リソースとして、成立している。知識生産を成り立たせているこのようなリソースの使用実践を記述していくという作業は、エスノメソドロジーのひとつの課題をなしてきた。そして現代の社会生活が科学的知識を不可欠な契機として成立しているとすれば、このような作業はこの生活(の一部)の記述でもあると言えるはずである。
 このような視点に立ちながらこの報告では、遺伝学の進展などを背景にしながらあらためて提起されつつある科学的人種概念をとりあげる。すでにさまざまな批判がこの概念に対してなされてはいるものの、報告ではむしろこの概念の用法を記述していくことを通じ、この概念を構成要素としている知識の社会的含意を把握することをおこなってみたい。
報告2:前田泰樹
「失語症研究と言語療法の社会学的記述――記憶と想起の論理文法」
報告要旨:
 C. Goodwin は、失語症について、損傷としては頭部にあるが、生活形式としてその占める場所は一つのシステムである、と述べた(Goodwin 1995)。報告者も含め多くのEMCA研究者が、この洞察に導かれながら、問いをいたずらに個人化しないような仕方で、失語症を持つ人との会話/相互行為についての研究を行ってきた。他方、この洞察からは、そもそも、語の想起が難しいといった出来事が、どのように脳の損傷と結びつけられて理解されるようになったのか、また、そのようにして得られた専門的知識は、どのように使用されうるものなのか、という問いも、導かれるはずだ。本報告では、ウィトゲンシュタイン派EMの概念分析の立場から、これらの問いについて考えることを通じて、概念の連関についての研究と会話や相互行為についての研究との関係を再考してみたい。
報告3:串田秀也
「精神科デイケア面接場面における「気になる」こと」
報告要旨:
 本報告では、精神科患者と医療関係者や地域住民とのかかわりに関する共同研究の一環として、精神科デイケア利用者と精神科医のあいだで行われた面接場面を取り上げ、会話分析の立場からの予備的な分析を行ってみたい。この面接場面では、精神科医が最近の症状について質問したり、利用者が自分の症状を述べたりするとき、「気になる」「感じがする」といった表現がしばしば用いられている。これらの表現を含む発話が、精神症状について報告したり報告を聴取したりするという活動において、どのような相互行為上の資源となっているのかを考えてみたい。また、それを通じて、精神症状というものがどのようにして相互行為の中で可視化されているのかを考えてみたい。

お問い合わせ

  • 研究例会に関する問い合わせは、augnish[@]soc.meijigakuin.ac.jp(西阪)まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2008年度研究会大会



概 要

2008年度のEMCA研究会大会は、9/4(木)に関西学院大学梅田 キャンパスにて開催される予定です。 言語学者である定延利之先生(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)による招待講演をはじめ,テーマセッション,研究報告など,「日々の生活の中のことばとその周辺」について多角的に考えるプログラムになっております。 ぜひとも多くのみなさんに議論に参加していただければと思う次第です。(企画担当世話人:細馬宏通・鈴木佳奈)

■開催日: 2008年9月4日木曜日
■会場: 関西学院大学梅田キャンパス地図 1405教室(14階)
■参加費: 会員* 1000円/一般 1500円
 * 入会申込については →入会のご案内 をご参照ください。

プログラム

  • 10:30 受付開始
  • 11:00-13:00 招待講演 「『た』の発話をおこなう権利と義務」
    • 講演者 定延利之氏(神戸大学大学院国際文化学研究科)
      司 会 細馬宏通(滋賀県立大学人間文化学部)
  • 13:00-14:00 昼食休憩/世話人会(1404教室)
  • 14:00-14:30 総会
  • 14:30-16:00 テーマセッション 「『敵意のある話し方』とは:会話の中の『感情』の発露とその読み取り」
    • 話題提供 鈴木佳奈((株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所)
  • 16:10-17:10 研究報告I 「行為指示発話に対する応答とその応答」
    • 報告者 牧野由紀子(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)
  • 17:15-18:15 研究報告II
    • 報告者 吉村雅樹(京都工芸繊維大学 工芸科学研究科博士後期課程)
  • 18:30 撤収

報告要旨

招待講演

定延利之氏(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)
「『た』の発話をおこなう権利と義務」
要旨:
この発表は、「権利」と「義務」という観点から、コミュニケーション研究やそれに近い文法研究と、「伝統的な」文法研究との接点をさぐろうとする試みの一つである。中心的に扱われるのは現代日本語共通語の、主節末尾に語尾「た」が現れている文である。コミュニケーションの中でこの文を発することには、さまざまな権利と義務が伴う。この発表ではそれらの観察が、「た」に関するこれまでの文法研究の争点(いわゆるムードの「た」の意味に関するムード説 vs. 過去説の対立)の解決に役立つことを示す。得ら れる結論は過去説を支持するものであり、「「た」の文に伴う権利と義務を説明するには、この文を、相手の前でやってみせる過去時点の体験や知識に関わる心身行動ととらえる考えが有効だ」というものである。

テーマセッション

話題提供 鈴木佳奈((株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所)
「『敵意のある話し方』とは:会話の中の『感情』の発露とその読み取り」
要旨:
会話分析のこれまでの知見によって会話の中のさまざまな秩序や仕掛けが明らかになってきているが,同じ方法論を援用することで,会話の中に発露される(と考えられている)「感情」を読み解くことはできるだろうか。
本セッションでは,あるラジオの人生相談で,相談者が「逆ギレ」したやりとりをデータとして提示する。番組のパーソナリティに対する相談者の「感情」がどのように発露されていくのか,また逆に,当のパーソナリティが相談者の「感情」をどのように読み取り,ラベル付けをしているのか。いわゆるデータセッションの形式で進める中で,会話分析の手法で会話の中の感情を扱う可能性を探る。

研究報告

牧野由紀子(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)
「行為指示発話に対する応答とその応答」
要旨:
本発表は、「対称的関係における行為指示の諸相」として準備中の博士論文の一環であり、使用するデータは、大阪のニュータウン自治会で、新自治会館竣工式の準備作業における会長とメンバーの会話を収録したものである。通常、「命令」はたとえば上司から部下へなど上から下へなされるものとされるが、ニュータウンの自治会活動のような、いわば対称的な関係においても会長による行為指示がしばしば行われており、命令形の使用も見られる。
本発表は、自治会長の行為指示発話に対してメンバーがどのように応答し、それに対して会長がどのような応答を返しているか、に注目するものである。聞き手の応答に注目することで、メンバーと会長がお互いの関係性をどのようなものとして作り上げようとしているか、その様相に迫れるのではないか、と考える。本発表ではいくつかの事例からその分析を試みる。
吉村雅樹(京都工芸繊維大学 工芸科 学研究科博士後期課程)
「介護ワークにおける相互行為ー認知症高齢者グループホームの或る咀嚼指導場面からー」
要旨:
咀嚼指導においては、介護者は期待するような咀嚼行為を利用者が実現しない困難に直面する。期待するような咀嚼行為を介護者と利用者は共同して達成することができない。特に、介護現場では利用者の特徴的な応答によって違背状況が頻繁にもたらされる。介護ワークを頻発する違背状況に対する介護者の方策や挑戦として考察を試みる。介護ワークを観察する第三者と実践する当事者が共有できる評価視点を見いだす一助としたい。

お問い合わせ

  • 研究大会に関する問い合わせは、hhosoma[@]shc.usp.ac.jp(細馬)まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2007年度研究例会
[開いて読む]



概 要

今年は、午前中に口頭発表、午後には第一線でご活躍の研究者の中から、とくに関西の若手研究者 2名を選び、相互行為研究に関する発表+ディスカッションを催します。ぜひとも多くのみなさんに議論に参加していただければと思う次第です。(企画担当世話人:細馬宏通・鈴木佳奈)

■日時: 2008年4月5日 土曜 9時30分~17時30分
■会場: 京都大学百周年時計台記念館国際交流ホール[ウェブサイトウェブサイト / 地図地図
■参加費: 会員* 1000円/一般 1500円
 * 入会申込については →入会のご案内 をご参照ください。

午前の部(9時30分~12時30分)
午後の部(13時30分~17時30分)

午前の部: 研究発表 (司会:細馬 宏通)

10:00 - 11:15
鶴田幸恵(奈良女子大学)
「性別カテゴリーのオムニレリバンス問題──トランスジェンダーへのインタビューデータの分析から」(仮題)
報告要旨:  性別カテゴリーがオムニレリヴァントか否かという問題は、D. Zimmerman & C. West(1975)への、E. Shegloff(1982)、M. Linch(2001)による批判から始まり、また批判的談話分析と会話分析を手法とする人びとの間で交わされた論争として、有名である。その論争の端緒は、Zimmerman & West の有名な研究である。そこでは、会話のなかに現われる男女間の偏向を見ることで、男女の権力差を示すことが試みられていた(Zimmerman & West 1975)。例えば、「割り込み」の数を数えることによって、男性は女性の話に割り込みやすいという具合である。その際に、会話の参与者が男として、あるいは女として行為していることは、その人が女/男に見えることから、所与とされている。同様の研究が日本においてもなされた(江原・好井・山崎 1984)。
 しかし、参与者が女に「見える」ことと、その人が女「として」振舞っているかどうかは、異なることである。したがって、性別カテゴリー使用の記述は、相互行為における参与者自身の志向性に基づいている必要があり、またそれによって、相互行為の詳細がどのように導かれているかが示されなくてはならないという、これらの研究に対する批判(Schegloff 1987; Lynch 2001)がなされることになった(まとめとして上谷2001; 小宮2002b参照)。
 他方、また別の角度からこの問題が浮上している。会話分析を分析手法とする Schegloff と、批判的談話分析を分析手法としようとする人びとの間で交わされた論争(Schegloff 1997; Wetherell 1998; Schegloff 1998; Billing 1999a; Schegloff 1999a; Billing 1999b; Schegloff 1999b)である。ここで争われているのは、分析者がおこなう記述のなかに、分析者の前提を持ち込まないことの可能性であり、また持ち込むことの是非である(まとめとして小宮2005参照)。
 Billigは、いくら会話分析者が「参与者の志向にもとづく」と言ったとしても、彼らは実際には分析者としての自分の前提を持ち込んでいるのだと主張する。この立場からすれば、どのカテゴリーによって参与者を特徴づけるのかということも、結局のところ、分析者の判断によってなされるほかない、ということになるだろう。とりわけ、参与者によって「女」とか「学生」とかいう、カテゴリーを示す言葉が用いられていなければ、そう言われるに違いない。
 先行研究のこうした流れのなかには、ふたつの考え方が現れている。すなわち一方で、性別は外見から明らかだということを所与にして、分析者はある行為を性別カテゴリーによって説明することが可能であるという考え方であり、他方で、そもそもどのようなカテゴリー化も分析者によるものでしかありえない、という考え方である。鶴田(2006)では、実際の相互行為データにもとづきながら、言葉による明示的なカテゴリー使用が行われていないにもかかわらず、性別カテゴリー化が行われていることが、他ならぬ参与者たち自身によって理解されているということを示すことで、こうした考え方とは異なった道筋を示した。今回の報告は、以上のようなオムニレリヴァンスの一連の論争に対する、また別の仕方によっての回答である。
 具体的には、1997年から行っている、トランスジェンダー・性同一性障害コミュニティでのフィールドワークによって得たインタビューデータを用い、私たちが「焦点の定まらない相互行為」の水準における秩序を生きていることに着目する。それによって、性別が「見てわかる」ということが、単に「わかる」というだけでなく、「わからなくてはならない」という規範性をおびたものであるということに、性別カテゴリーの特異性が現れているということについて述べていく。
11:15 - 12:30
細馬宏通(滋賀県立大学)
「身体動作を含む会話データにおけるデータ セッションの可能性」
報告要旨: 会話分析には「データセッション」と呼ばれる試みがある。データセッションでは、参加者の一人が詳細な会話のトランスクリプトを提供し、それに沿って参加者どうしが一行ずつ読み進めながら、発語連鎖に含まれているさまざまな会話装置について議論する。提供者は、自分が注目している箇所(ターゲットライン)をあらかじめ設定して、そこに向かって読み進めるが、途中でおもしろい現象がみつかれば、その都度時間をかけてもかまわない。
 今回は、この「データセッション」にあたるものを、ジェスチャー研究で行うことを試みる。複数の参加者がお互いの観察眼を活かし、事例に含まれる、ひとつひとつのストロークのもたらす相互作用を、より詳細に広いあげることができるのではないか、という目論見である。
 ジェスチャー分析では、発話とジェスチャーのタイミング、参与者内・参与者間のジェスチャー連鎖が見所となる。データを語りあうためには、身体動作をコーディングするためのシンプルな方法が必要となる。Kendon のジェスチャー単位、ジェスチャー・フェーズの概念が有用となるだろう。  視線や身体動作に注目するため、ひとつの発話に含まれる情報は膨大になる。短いやりとりだけでも、何時間にも及ぶディスカッションが可能だろう。今回は短い時間用に、簡単なデータを用意する。フロアからの積極的な参加を歓迎したい。
12:30 - 13:30
休憩

午後の部: 

13:30 - 15:15
川島 理恵(埼玉大学/JSPS 学振特別研究員)
「産婦人科における医療実践の会話分析的検討─医療と日常の交差する場所─」
報告要旨: 医療現場において、医療者と患者は様々な「交渉」を行う。その交渉の一つの局面は、彼らが医師の医療に関する専門性と患者の生活世界の違いを調整するという点である。ある一方で、医師は、専門とする特殊な領域の中で学び、経験を積んでいく。その一方で、患者は、日常世界の中で、それぞれ日々の経験を形作っている。産婦人科医療では、医師と患者が患者のプライベートな事柄に触れることが多い。そのため、医療と日常世界が重なり合う機会がよく見られる。本研究では、会話分析を使うことで、日本の産婦人科医療の現場において、医師と患者がそれぞれの世界(医療と日常世界)の交差する局面で、どのようにかかわり合っているのかを明らかにする。具体的には、特に産婦人科におけるセルフケアに関する話し合いの展開に注目して分析を進める.
15:30 - 17:15
増田 将伸(甲子園大学)「「どう」系質問‐応答連鎖における相互行為の諸相」
報告要旨: 質問は、コミュニケーションにおいて本質的な意義を持つ発話行為であると言える。その理由として少なくとも、
  1. 質問の形で言語的な反応を要求することで、相手を会話に引き入れられる
  2. 質問者が何を知っていて何を知らないかが質問ターンのデザインに呈示されるので、コミュニケーションの基盤となる会話参与者の知識状態が質問によって顕在化する
  3. 質問によって新しい情報を相手から会話の場に引き出すことができ、会話に新たな展開がもたらされる
という3点が挙げられる。
 本発表では、質問‐応答連鎖を素材としてコミュニケーションを分析するわけであるが、『日本語話し言葉コーパス』の対話例中の「どう」系質問‐応答連鎖について分析を行う。「どう」系質問(どう、どんな、どのような等)は、前段の3点に即して述べると
  1. しばしば会話の冒頭に用いられてコミュニケーションを開始する働きを持つ
  2. 字句上は open questions の最たるものであるので、会話参与者の知識状態が質問ターンのデザインに呈示されるパターンが様々である
  3. それゆえ、会話の展開の中で様々な相互行為が見られる
という点で、コミュニケーションの諸相をかいま見せてくれる興味深い素材である。分析の現状は堅固な結論が得られる域には遠いが、発表ではいくつかのパターンのデータを提示しながら、様々な可能性を検討したい。

お問い合わせ

  • 研究大会に関する問い合わせは、hhosoma[@]shc.usp.ac.jp(細馬)まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局 (EMCA研事務局)まで

2007年度研究会大会



概 要

2007年度のEMCA研究会大会のプログラムが決まりましたので,ご案内いたします.今年は,認知科学,行動科学,機能言語学において第一線でご活躍の3名を講師に招き,相互行為研究に関するシンポジウムを開催します.ぜひとも多くのみなさんにご議論に参加していただければと思うしだいです.(企画担当世話人 西阪 仰・高木智世)

■日時: 2007年9月29日土曜日
■会場: 明治学院大学 白金キャンパス地図 本館2階*(北ウィング)1255教室
 * 正門から入られるときは,本館2階が地上階になります。
■参加費: 会員* 1000円/一般 1500円
 * 入会申込については →入会のご案内 をご参照ください。

プログラム:

  • 9:30 受付開始
  • 10:00 - 12:30 シンポジウム「相互行為研究の可能性: 認知科学・行動科学・機能言語学から学ぶ」
    講師:
    1. 片桐恭弘(はこだて未来大学)「会話行為の情報科学」 [要旨]
    2. 細馬宏通(滋賀県立大学)「微笑は微かな笑みか?: 微笑と哄笑の相互作用分析」 [要旨]
    3. 鈴木亮子(慶応義塾大学)「会話における引用と提題の関係:『って』構文の分析」 [要旨]
    (司会: 西阪 仰)
  • 12:30 - 13:30 世話人会(新旧世話人のみ)
  • 13:30 - 14:00 2007年度総会(会員のみ)
  • 14:00 - 15:15 自由報告 I (会話と行為)
    1. 岩田夏穂・初鹿野阿れ「他者による話題の開始: もう一人の参加者について語ること」 [要旨]
    2. 田中剛太「会話における『思う』の働きについて」 [要旨]
  • 15:30 - 16:45 自由報告 II (医療の相互行為)
    1. 高木智世「診療場面における相互行為の資源としてのカルテ」 [要旨]
    2. 西阪 仰「周産期医療における相互行為の一側面: 問題提示とその扱い」 [要旨]

シンポジウム「相互行為研究の可能性: 認知科学・行動科学・機能言語学から学ぶ」講演要旨

片桐恭弘(はこだて未来大学)
「会話行為の情報科学」
会話を行為という観点からとらえるという手法はさまざまな分野で広く採用されている.行為概念に依拠することの利点は,言語に対して,記号の系列という抽象レベルでの記述のみに限定されずに,一方では,発話意図,背景信念やさらには感情や文化制約のような発話の背後にあって会話を支えているより抽象度の高い要因を,他方では,音声やジェスチャー等,身体的で具象性の高い要因を両方共,考察の対象として取り入れることを可能とした点にある.情報科学の手法を用いたそれら両方向への拡張の例として,日英会話スタイルの比較によるインタラクションスタイル類型化の試み,および機械学習手法を用いた自然会話における非言語情報の組織化と機能分析の試みについて紹介する.
細馬宏通(滋賀県立大学)
「微笑は微かな笑みか?: 微笑と哄笑の相互作用分析」
 ヒトを含む動物の発する信号には大きく分けて三つのレベルの指標がある。第一は、発し手の内的状態、第二は、信号の指示対象(自他の発語、身体動作、特定の事物など)、そして第三に、信号の受け手が誰であるかである。笑いについても、
  1. 笑いによって表される情動 (快不快など),
  2. 笑いの対象(自他の発語・身体動作、特定 の事物など)
  3. 笑いの受け手(誰に笑いかけているか)
という3つの問題をたてることができる。
 言語活動に比べると、微笑は扱いが難しい。それは、これら三つのレベルの指標に、よりあいまいさがつきまといやすいからである。
 第一の情動については、感情心理学や表情研究の領域で、表情と情動を結びつけるためのさまざまな試みがなされている(たとえば、 Ekman & Friesen 1979, Izard 1979)。とくに微笑みに関しては、従来、一括して微笑として扱われていたものの中に、口角のみがあがる演技的笑いと、目の周辺や頬にかけて全体的な表情筋の変化を引き起こす 自発的笑い(デュシエンヌ・スマイル)とがあることが知られるようになってきた(Ekman et al. 1992)。
 しかし、これらの研究は、微笑みの背後にある情動をあくまで傾向として取り出すものであり、個々の場面における微笑の意味を保証するも のではない。心理学の諸研究は、特定のタイプの微笑みが特定の情動と一意的に結びつくとは限らないことを示しており、むしろ微笑の文脈依 存性を示唆している。
 第二の対象指標性にも、あいまいさが伴う。笑いは、発語に含まれる名詞や動詞とは異なり、そこに対象の情報をほとんど含んでいない。笑 いの対象は多くの場合、それに伴う発語やジェスチャーと組み合わせて解釈され、文脈依存性が強い。発語に差し挟まれる笑いは、差し挟まれ たことばとの間に強い関係を持っていると思われる (Jefferson 1984) ものの、差し挟まれた語が笑いの対象であるとは限らない。
 第三の受け手指標性は、会話分析において重要な問題である。発し手 と受け手の関係については、Jefferson (1979, 1984, 2004) に よって精力的な分析が行われており、発語者が自ら笑うことで、受け手 の笑い/笑いの拒絶を引き起こす例が数多く指摘されている。が、多人数会話における会話分析でしばしば問題にされる「受け手は誰か?」と いう問題は、笑いについてはこれまであまり論じられてこなかった。
 その原因は、会話分析の扱ってきた笑いが、もっぱら発声を伴う哄笑 laughter であり、laughter に伴う表情や、laughter に至 らない微笑 smile が扱われてこなかったことにあるだろう。笑いの音声には,特定の相手を指す性質が希薄なのに対し、笑いの表情に は、笑いを浮かべている顔の向きを伴う。多人数会話においては、この顔の向きが、受け手が誰であるかを示す重要な手がかりになる。
 以上の点を踏まえて、本発表では、これまであまり論じられることのなかった微笑に焦点をあて、それが哄笑とどのような相違点を持つのか を考える。その上で、笑いにおける視覚性/聴覚性という二つの側面が、相互作用の中で、いかに協調的/競合的に現れるか、それが多人数 会話の相互作用にどのように関わっているかについて事例を挙げながら論じる。
鈴木亮子(慶應義塾大学)
「会話における引用と提題の関係―『って』構文の分析」
日常の会話で、頻繁に使われる形態素の一つに『って』がある。会話の中での『って』は、発話の中程、末尾、冒頭で様々な働きをしている。『って』の最も古く基本的な機能は、発話や思考内容に接続する、いわゆる引用助詞としての用法だが、この発表では、馴染みの薄い事物や人の名前を提示・説明する、名詞に関連する用法に焦点をあてる(例:いくつなんですか、妹さんって?)。引用の標識がなぜ名詞関連用法をもつのか? 現代の会話データをみると、
  1. 直前の発話に部分的に言及(引用)して意図や意味を尋ねる、
  2. 会話の場に存在する事物を指し示す、
  3. 会話の場には存在しない事物に言及・提示する
という三通りの名詞関連用法がある。

自由報告要旨

自由報告 I (会話と行為)
岩田夏穂(お茶ノ水大学)・初鹿野阿れ(東京国際大学)
「他者による話題の開始: もう一人の参加者について語ること」
初対面2人を含む3人の会話においては,参加者がお互いについての情報の非対称性とその解消を志向する現象が観察される.話し手がある参加者に宛てて,もう一人の参加者について語ることによる話題開始もその一つであろう.例えば,参加者AがBに、Bと初対面の参加者Cについて,「Cさんね わざわざ大阪へライブに行ってきたんだって」と切り出す発話は、Cに関する情報をBに提供するとともに、当事者Cにその話の続きを促している。このAの発話は、三者の関与が可能な話題開始のきっかけとなっていると考えられる。今回の発表では,このような現象に着目し、上述のようなAの発話に対する他の参加者の適切な振る舞いと次話者選択のルールとの関連に焦点を当てることで、他者による話題開始のメカニズムを探る。
田中剛太(明治学院大学)
「会話における『思う』の働きについて」
本報告では会話分析の手法を用いて、会話の中で「思う」という述語がどのような働きをしているかを、データに即して検討する。「思う」という発話が置かれた行為連鎖の組織に注目し、発話連鎖の組織という次元と、具体的な実践という次元から分析を試みる。そのような実践の典型的な例としては、「~しようと思う」という述語が「意図」を表現する場合が挙げられる。意図を語るという実践が可能になるのは、行為連鎖上の特定の環境においてのみである。一方、発話連鎖の組織に着目すると、話者は「思う」という発話によって、前に戻ることをする、シークエンスを終わらせる、相手の特定の発話を予めブロックする、などの行為をすることがある。こうした行為がどのような実践を行うことであり、それがどのような心的事象を明らかにすることになるのかを検討することが本報告の目的である。
自由報告 II (医療の相互行為)
高木智世(つくば大学)
「診療場面における相互行為の資源としてのカルテ」
医師は患者の話を聞きながら時折カルテ上にメモを取る。医師のその行為は、そのとき患者によって語られていること(に関わること)が書きとめているものであって、書きとめられていることは、診断や治療に関わる重要な情報であるという理解を導く。この理解は、医師と患者の間で共有された前提としてその後の相互行為の組織に利用可能な資源となる。本発表では、カルテに記録されたことを「ここ」や「これ」といった指示表現を用いて指し示すことが、患者によって語られた様々なことを治療に関連付けて再配置したり、患者が語った自身の体験やふるまいについて「無難に」質問したり評価したりする手立てとなっていることを詳細に検討していきたい。
西阪 仰(明治学院大学)
「産期医療における相互行為の一側面: 問題提示とその扱い」
産科医院もしくは助産院において,健診を受ける妊婦が,医療専門家に促されてか,あるいは自らか,「問題」を提示することがある.その問題提示の構成および連鎖上の位置と,その問題に対する医療専門家の応答の構成および連鎖上の位置を考察してみたい.(まだきちんと体系的に考え始めているわけではないが)この間一連のデータを見ているかぎり,次のような印象を持ち始めている.妊婦が問題提示の開始者である場合,
  1. 問題提示は,「極端な定式」を用いる,第三者に言及する,等という特徴的な構成(とくに問題発見の責任の分散を含意する構成)を取り,
  2. 医師もしくは助産師による問題の取り扱いは,何らかの形で遅延され,
  3. さらに,その問題がその後の健診の展開を枠付けることになる,
と.この報告では,このことを確認するとともに,このパターンの持つ相互行為上の意味について考えたい.

お問い合わせ

  • 研究大会に関する問い合わせは,augnish(a)soc.meijigakuin.ac.jp (西阪) まで
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせは,yminami(a)seijo.ac.jp (南) まで
    ※いずれも (a)を@(アットマーク)に置き換えてください.

2006年度研究例会
[開いて読む]



→短信:簡単な報告と写真を掲載しました [2007/05/06]

概 要

開催日時: 2007年3月17日土曜日 9時30分~17時30分
会  場: 明治学院大学白金校地 本館4階1402教室[地図

プログラム1(午前の部): 研究報告会 (9時30分~12時30分)
プログラム2(午後の部): EMCA教授法懇談会 (13時30分~17時30分)

参加費 : 会員 500円、非会員 1,000円(仮)
 ※事前申し込みは不要です。
 ※当日、申し出により仮会員登録をすることも可能です。(その場合は会員の参加費が適用されます。)
  問合先 : augnish(a)soc.meijigakuin.ac.jp(西阪)

プログラム1(午前の部): 研究報告会 (9時30分~11時00分)

9:30~11:00 研究報告1
岡田みさを(北星学園大学)
報告タイトル:「いわゆる「男性専用」動詞命令形は「男性性」を表しているか?」
報告要旨
 本研究では、ボクシング指導時に女性トレーナーによって使用される、従来「男性専用」指示表現とされてきた動詞命令形(例:「打て」)に焦点をあて、1)どのような談話文脈でこれらが選択されるのか、2)その談話における相互行為の中で、動詞命令形を含む発話が、周囲の発話、非言語行動やものの使用と組み合わされてどのような行動や話者のアイデンティティーを表しているのかを分析する。分析の手法として、CAの会話シークエンス分析、及び同時に起こる言語/非言語などのリソースの並列がどのように或る「行動」の創出に寄与しているかを分析したC. Goodwin (2003)の手法を用いる。
 分析を通じ,従来の日本語社会言語学において「男性性」と結びつけられてきた言語形式の選択及びその言語形式を含む発話が、実際にはその場その場のリソースと組み合わさってその状況に依存した意味(例えばその場のボクシングの動きに必要とされる「動作の迅速性」など)を表していることを示す。参加者たち自身がその場で表している行動や志向を見ようとするCA的な微視的談話分析が、日本語の「言語とジェンダー」研究にどのような貢献ができるのかを考察する。
11:00~12:30 研究報告2
田中剛太(明治学院大学大学院)
報告タイトル:「相手が言おうとしていることを先取りして言うこと」
報告要旨
 本報告の出発点となるのは、日常会話の中で起きていると思われる次のような現象である。話し手が「複合的な順番構成単位(compound TCU)」を産出している途中で、聞き手がその最終部分を予測し、話し手に代わってその最終部分を発話することがある。いわゆるTCUの共同構築(共同完了)であるが、このうち、最終部分の話し手が、それまでの部分を聞いた時点で、「そこから先は聞くに値するさらなる積極的な内容は来ない」と言っているような印象を与えるものがある。個別にシークエンシャルな環境を検討することによって、そのような「予測に基づいた完了(anticipatory completion)」が、「なぜ」「この位置で」為されたのか、なぜそこで順番が代わったのかを記述することを試みる。

プログラム2(午後の部): EMCA教授法懇談会 (13時30分~17時30分)

13:30~14:30 話題提供1
鈴木 佳奈(情報通信研究機構)
テーマ:教養科目としての会話分析入門──半期の授業でなにをどう教えるか

1回生向け半期12~13回の授業で会話分析を教える際の諸問題を考える

  1. なにを教えるか
    • CAの概念(「ターンテイキング」,「連鎖構造」,「修復」など)を浅く広く教えるか,特定のテーマに特化するか(資料1:シラバス例)
    • 文字化記号および文字化の仕方を教えるか
    • エスノ的背景にも触れるか
    • 参考文献をどう扱うか
  2. どう教えるか
    • 会話の客観的な観察についての学生の理解をどう養うか
    • 理論や概念を中心にするか,具体例の分析を中心にするか
    • (資料2:ハンドアウト例)
    • 練習問題を組み込むなどして,学生に分析を行わせるか
    • リーディングを課すか
    • 試験にするかレポートにするか(資料3:試験例)
14:30~15:30 話題提供2
西阪 仰(明治学院大学)
テーマ:相互行為分析の演習2ヵ年分の組み立てについて
  1. 演習1については、シェグロフの授業のまねなので概要を2分ぐらいで説明(資料(1)): 概念の説明、トランスクリプトとCDを配布し練習を行なってもらう、など。
  2. 演習2の組み立ての説明(5分ぐらい)
    • 春学期は構築されたデータセッション(資料(2)): テーマを決めて一つの断片を見るやり方と、一つのテーマについてコレクションを見るやり方
    • 春学期: データ収集
    • 夏合宿: 現象のコレクション
    • 秋学期: 学生による分析の発表
  3. 問題点の説明(3分ぐらい)
     おもに個々の分析をどのように一つの論文としてまとめるか。そのための「指導」はどのように可能か。たとえば、分類させる。そのときの分類の軸:誰が開始者か、シークエンス上の位置、発話形式、セグメントの開始と完結など
15:30~15:45 休 憩
15:45~16:30 話題提供3
細田由利(神奈川大学)・高木智世(筑波大学)・鈴木佳奈(情報通信研究機構)
テーマ:学部レベル通年コースでの使用を想定した会話分析入門テキストは、どのようなものが望ましいか
  1. テキスト全体の構成:何を含めて何を外すか。どこまで正(精)確さを求めるか。
    • 章立て(内容と順番)―例)CAの背景、トランスクリプトについて、データ例、ターンテイキング、連鎖、修復、物語、カテゴリー、CAの応用
    • CA成立の背景、CAの視点・基本的姿勢をどの程度解説するか
  2. 章の構成
    • 具体例を先に出すか、概念の解説を先にするか
    • 「練習問題」を付けるか、「解答」を付けるか
  3. 重要概念の扱い
    • とくに、ターンテイキングシステム、TCUをどう解説するか
  4. 訳し方の問題
    • organization, turn, preference, orient, project, relevance など
16:30~17:30 話題提供4
樫田美雄(徳島大学)
テーマ:対象の選定法、ゲスト講師招聘ノウハウ、報告書原稿締め切り維持ノウハウ

「エスノメソドロジー会話分析における教授法」という観点よりも、むしろ、「質的調査の実習授業運営ノウハウ」という観点から、これまでの実践報告を行う。

  1. 対象の選定法:なるべく地元のネタを探して提供する。その方が、学生の研究意欲を高めやすく、周囲の援助も得やすい。これまでの実績を列挙すると、「ラジオスタジオ……教員自身が出演している地元のラジオ局」、「社協事務所……他の共同研究でお付き合いのあった県内の社会福祉協議会の事務所」「義肢・装具の製作所……地場産業として存在していた製作所」「鍼灸……これは実施中なので匿名保持のため詳細は秘密だが、大きくいって地元ネタ」
  2. ゲスト講師招聘ノウハウ:テキストの読解と調査およびその第1次分析をなるべく前倒しする学生の動機付けのために、外部招聘講師を活用する。その日程につねに言及しつつ、日程の遅延を防止する。外部講師の執筆論文を前もって読ませることで授業参加意欲を高めることもできる。
  3. 報告書原稿締め切り維持ノウハウ:報告書は、印刷屋に出さない。自力で印刷製本させると、原稿遅れは、他の学生に対したいへんなめいわくになるので、自然と遅延はなくなる(あるいは、遅延学生への手伝いが自然と起きる)。ただし、これはグループをつくって活動をさせていたから可能であった方式のようであり、本年のように、個人単独執筆原稿方式では、効果が限定的なようである。

2006年度研究会大会



概 要

日時:2006年10月30日(月)(受付開始9:10)
会場:龍谷大学深草校舎5号館502教室
[案内図](京都市伏見区深草塚本町67)

特別講演 ……9:35~11:50
林礼子(甲南女子大学)「記号がジェンダーの意味を持つ瞬間を捉える ──批判談話分析のためのエスノメソドロジー」

コメンテーター:片田孫 朝日(京都大学)・串田 秀也(大阪教育大学)

報告要旨  批判談話分析は、記号(言語を含む)の意味とその使用の分析を通して、社会学や政治学あるいは文化研究が指摘する諸問題に取り組む。それは、記号が社会の現象と最も根源的に関わる要素であり、社会の成員は記号を知識資源にして社会の制度を構築すると考えるからである。
 本発表では、メタファー表現 (figurative talk) と社会的要素であるジェンダーを対象に、社会記号論の流れを汲む批判談話分析を試み、記号の概念的な意味はいかにして現実の社会行為となっていくか、つまり、記号の持つ「原初的」意味はいかにして社会的意味を持つのかという問いについて考える。そして、記号への意味付けの行為における社会的バイアスについて論じる。
 具体的には、テレビの教養番組において専門家と司会者が共構築するメタファー表現のなかに出現するシロ色に注目し、(1)と(2)を示す。そして、社会記号論的批判談話研究のアプローチの方法と、エスノメソドロジーの視点から概念や理論を導く可能性と必要性について言及する。
  1. 記号の一つである「シロ」色の意味が会話のなかでジェンダーと結びつけられると、その意味は、フロアのシステムの制約のもとで、ジェンダーバイアスを持つディスコースとしての「白」色の意味になり、会話運営のコンテクストになる。
  2. 記号の意味がディスコースの意味を持つ瞬間は、やり取りの特定の場においてであり、その意味が現実の行為となるのは、会話者がその場での意味解釈に必要な状況を生みだす時である。
エスノメソドロジー・会話分析研究会総会……12:30~13:10

※ 恐縮ですが、会員の方のみ審議にご参加下さい。

公募報告(1)……13:10~14:25
戸江 哲理(京都大学)「トラブルを分かち合う──トラブルの共成員性の会話分析──」
報告要旨:
私達はふだん、自分のことは自分にしか分からないし、他人のことはやはり本人にしか分からないと感じたりはしないだろうか。だが他方で、私達は現に、他の人と自分の悩みごとやトラブルを分かち合うということが出来てしまっている。考えてみれば、これは不思議なことではないだろうか。本報告では、このテーマに、そのような行為そのもの、つまり会話を分析することによって、その内実に迫りたい。
 ここでは、この作業を、まず(1)トラブルの共成員性(co-membership)の達成(=分かち合い)の手続き、つぎに変則事例分析として(2)いったん可視化された共成員性が疑問に付される場合の分析、最後に、そこから浮かび上がる(3)「トラブルの」共成員性固有の特質の解明の3点に絞って簡潔に説明したい。
  1. トラブルの共成員性が参与者たちに相互可視化する手続きとして、既に指摘されている、I 最初のトラブル語りを第1の物語とする、第2の物語による立証に加え、II 参与者どうしが、自分のトラブルの対象を述べ合うことで、じょじょにその範囲を狭めていく、経験の「格上げ」(upgrade)、II 相手のトラブル語りの続きを別の参与者が完成させる「引き取り」、それに、IV 参与者たちがトラブルの対象者たちを同一のカテゴリーに括る不平連鎖(complaint sequence)の利用などが、データから確認された。
  2. だが当然ながら、いちどお互いのトラブルが分かち合われたからといって、そのままそれが維持され続けるとは限らない。たとえば、一方の参与者が他方にたいしてトラブルに陥ったことについて非難を行うときには、共成員性は中断される。それは、非難とは対照的な助言の場合も同様であって、つまり参与者たちを分断するカテゴリーがやりとりのなかで顕在化するとき、トラブルの分かち合いは「棚上げ」された状態になる。興味深いのは、データではこれら助言なり非難なりという行為が、ごく部分的なものに留まり、すぐにもとの分かち合いが回復されていることだ。トラブルの表明→助言→その受容→沈黙/前置き→トラブルの再表明という手続きを踏むことで、助言が「受け流され」たりするのはこのようなときだ。つまり、トラブルの共成員性は、非難や助言のようなそれ以外の行為の基底をなしているように思われるのである。
  3. かくして明らかにされたトラブルの共成員性においては、非難や助言といったトラブルの語り手の道徳性に接触する類の行為を斥けて、トラブルを抱えた自己の道徳性を相互に不問に付すのである。畢竟、自己の弱みを他者にさらす一種の「賭け」ともいえるトラブル語りにおいて、その共成員性の相互可視化は、自分と相手のトラブルを分かち合うという困難な作業を達成しているのである。(当日の発表内容はこの要旨とは若干異なる可能性があります)
公募報告(2)……14:40~15:55
平本 毅(立命館大学)「EMCAはいかにCMC(コンピュータを媒介したコミュニケーション)を研究対象にしうるか」
報告要旨:
 電話会話等の他のメディア媒介的なコミュニケーションと比べて、CMCを対象としたEMCAは未発達な領域である。電子掲示板やチャットなどで交わされる「会話」のテクストを分析する試みは散見されるが、それらは体系的なものではない。しかし、われわれの日常生活におけるCMCの重要性は益々高まっており、けっして他のメディア媒介的なコミュニケーションに劣るものではない。本発表では、従来の会話のテクスト分析にそのテクストの産出過程の録画データの HCI(人とコンピュータとの相互行為)分析を含める新たな方法論を提案することを通じて、EMCAによるCMC研究の可能性を探る。社会学、(社会)心理学や認知科学、(社会)言語学、(社会)情報学などの分野で行われてきた従来のCMC研究は、電子空間に「共在」する人びとの心理や、電子メディアを通じて「話される」言語の形態を解明しようとしてきた。しかし、人びとは本当にある空間に「共在」し、そこで言葉を「話し」ているのだろうか。経験的に明らかなように、彼らがそう行為していると感じている間に実際に従事しているのは、コンピュータの操作(HCI)という別種の行為である。このことから、一つのEMCA的な問いが導き出される。すなわち、「いかにして人びとは、HCIを通じて電子空間に『共在』し、電子メディアを通じて『話す』感覚を社会的に達成していっているのだろうか」。この問いに答えるために、状況論や社会的分散認知論、アクターネットワーク論などの近接諸理論も援用しながら、チャット会話の録画データを用いた事例分析が行われる。分析結果から明らかになるように、HCIはそれ自体として社会的な相互行為であり、ユーザはコンピュータとの社会的相互行為を通じて他者との会話(CMC)を達成していっている。EMCAのアプローチを用いたこの過程の分析がCMC研究にもたらすであろう可能性について述べてゆきたい。

コーディネーター(2006年研究大会担当世話人):

樫田 美雄(徳島大学)、秋葉 昌樹(龍谷大学)、五十嵐 素子(光陵女子短期大学)

特別講演企画顧問:

串田 秀也(大阪教育大学)

2005年度研究例会
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概 要

  • 日時:日程:2006年3月6日(月)(13:00~17:30)・7日(火)(9:00~12:30)
  • 会場:龍谷大学深草校舎5号館502教室

企画の紹介(敬称略)

◎初日:3月6日(月) 午後(12:30から受付開始、13:00~17:30)
リサーチ・メソッドワークショップ
『アーバン・エスノグラフィー:在日ブラジル人児童の事例研究から』 森田京子 Kyoko Morita, Ph.D.
○プレゼンターのプロフィール:
ペンシルベニア大学大学院修了教育人類学博士
University of Pennsylvania, Graduate School of Education, PhiladelphiaPA, USA Ph.D. in Educational Anthropology, 2002 修士課程で社会言語学、異文化コミュニケーション等を学んだ後、博士課程でフレデリック・エリクソン博士の指導の下、アーバン・エスノグラフィーの訓練と論文指導を受ける。専門は教育人類学と社会人類学で、主に日本社会のエスニック・マイノリティーを研究している。特に、定住マイノリティーのエスニシティー、アイデンティティー、文化適応プロセスに関心がある。現在、単著のエスノグラフィー(2006年前半,新曜社より刊行予定)を執筆中。2006年4月から、青山学院大学大学院(「エスノグラフィック・メソッド入門」)等で非常勤講師を務める。
趣旨と内容:
前半は、森田京子氏によるエスノグラフィー・ワークショップとして、エスノグラフィーとは何か、どのようにフィールドワークをするのか、入手した情報をどう扱ったらよいのかの三点を中心に、アーバン・エスノグラフィー(都市民族誌学)を概略的に説明する。具体的には、エスノグラフィーの特長と制約、調査・分析での留意点、現代のエスノグラフィーに特徴的なマイクロ分析とマクロ的視点との融合までを解説する。方法論の概念にとどまらず、長野県の公立小学校でフィールドワークをした経験に基づき、具体的な事例を盛り込んで実践的な解説に努める。また、このような調査研究アプローチによって何が見えてきたかを、在日ブラジル人児童の事例研究から発表する予定である。
 後半は、コーディネーター担当世話人の五十嵐がコメンテーターとして「研究計画の立て方」から「現場へのフィードバック」まで、エスノメソドロジーの立場から論点を提出して、フロアをも交えた形で議論をする予定。
◎2日日:3月7日(火) 午前(8:30から受付開始、9:00~12:30)
テーマ:エスノメソドロジーの応用可能性の検討──工学の場合、教育学の場合──
  • 工学の場合・報告者:山崎敬一(埼玉大学)、葛岡英明(筑波大学)
     コメンテーター:垂水浩幸(愛媛大学)
  • 教育学の場合・報告者(秋葉 昌樹チーム・龍谷大学)
     コメンテーター:松本 健義(上越教育大学)
◎趣旨と内容:
 前半は工学系の応用可能性を検討する。山崎敬一(埼玉大学)&葛岡英明(筑波大学)のお二人からのプレゼンテーションをうけて、垂水浩幸(香川大学)からのコメントを元に議論を行うこととしている。
 後半は教育学系の応用可能性を検討する。秋葉昌樹氏チーム(龍谷大学教員および学生)による演劇的教育学研究の実践報告をうけて、松本健義(上越教育大学)からのコメントを元に議論を行う。
 最後に総括的議論を行う。エスノメソドロジーの可能性を拡げる研究会にしていきたい。

○コーディネーター(研究例会担当世話人):

樫田美雄(徳島大学)・秋葉昌樹(龍谷大学)・五十嵐素子(光陵女子短期大学)

2005年度研究会大会



概 要

今年8月にBostonで開かれた IIEMCA (International Institute for Ethnomethodology and Conversation Analysis)において発表されたお二人をお迎えして、教室と法律相談というそれぞれの場面におけるやりとりの分析を通して、それぞれの制度的特徴をとらえていくことについて考察を提示していただきます。さらに、昨年英国マンチェスターに研究のため滞在された会員のお二方に、現地でのご研究生活についてお話いただきます。
  • 日時:2005年10月24日(月)9:30-15:00
  • 会場:立教大学 12号館地下会議室

プログラム

9:30-11:30 制度場面のシークエンス分析
9:30-10:25タイトル:連鎖分析と「教育」・「人間形成」研究:「失敗するクレイムはどのようになされたか」を手がかりに 南 保輔氏(成城大学)

コメンテータ:秋葉 昌樹氏(龍谷大学)

〔概要〕社会学・社会科学の主要関心のひとつとして、教育・社会化・人間発達・人間形成がある。「いまここ」にこだわるEMCA研究と、空間的にも時間的にも幅広い帰結・効果を問題とする「教育」とはどのような関係にあるのだろうか。小学校の終わりの会の連鎖分析を提示するとともに、この点を考えていく方向性を検討してみたい。
10:35-11:25「法律相談の開始シークエンス」 樫村 志郎氏(神戸大学)

コメンテータ:岡田 光弘氏(国際基督教大学)

概要:本報告では、弁護士会が運営する2つの法律相談センターにおける、法律相談の会話の開始シークエンスを分析する。データは、2つのセンターで行われた法律相談の録音11件である。相談は、相談者が法律問題を助言者に語る前半部分と、助言者が助言を相談者に語る後半部分に、おおまかに分けることができる。これらの相談の会話構造は、それぞれの相談部分の開始部門(およびそれに先行する会話部門)において、会話者により構築される相互に了解された発話順番構造により、現実化されなければならないはずである。本報告で注目するのは、相談の開始が、(1)相談者が問題の語りを自発的に始める、(2)助言者が一般的に問題の語りを始めるよう促す、(3)助言者が問題のカテゴリーを示して問題の語りを初めるよう促す、という3つのパターンをもつことである。これらの発話交換とその達成が、法律相談という制度的課題の相互行為的達成にどのように結びつけられているかを分析する。また、本件データは、1994年に人口70万人ほどの地方中都市(弁護士数150以上)で収集されたものと、2000年ごろに人口4万人ほどの小都市(弁護士数2)で収集されたものとからなる。制度的、時代的背景の違いと会話構造の関連について、若干の推測も行う。
11:30-12:30 新旧世話人会
12:30-13:00 総会
13:30-15:00 欧州帰朝報告
13:30-14:15 「ゴフマンとシェットランド諸島」 水川 喜文氏(北星学園大学)
〔概要〕イギリス海外研修中、ゴフマンの博士論文で知られるシェットランド諸島に訪問する機会があった。ゴフマンがフィールドワークを行ったホテル(現在のBaltasound Hotel)、長期滞在したコテージ、ホテルの元メイドなどを中心にシェットランド諸島の写真を紹介する。このほか、ヨーロッパの関連学会・研究会について参加した感想も添えながら紹介したい。
14:15-15:00 体験的「エスノメソドロジーへの招待」 是永 論氏(立教大学) 
〔概要〕渡英中、著者であるデイブ・フランシス氏自身から『エスノメソドロジーへの招待』を紹介されたこともあり、今回は自らがEMにどのように「入って」いったかという来歴もふまえつつ、EMへの導入教育のあり方について考えているところを、自らの研究との関わりも含めて述べてみたい。

担当世話人:

椎野信雄(文教大学)・池谷のぞみ(Palo Alto Research Center)

2004年度研究例会
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概 要

EMとは何なのかという大問題に関連して、昨年12月の定例研究会大会の書評セッションの中で編者や筆者のコメントとして強調されていたことなのですが、EMとはガーフィンケルやサックスに常にさかのぼるべきものだという考え方があります。私もEMとはガーフィンケルのアイデアをどう理解してゆくかの研究領域だと思っています。その点において、何度も社会学とEMあるいはガーフィンケルの関係は再検討すべき問題だと思われます。
 この点について、博士論文『ドロシー・スミスの「フェミニスト社会学」―性別の捉え方・論じ方の形式をめぐって―』を昨年、物された上谷さんに話してもらうことを企画しました。D.スミスにとって社会学とは何であり、そしてガーフィンケルとは何だったのかを、スミスのフェミニスト社会学を理解する上でのポイントを指摘していただく中で、EMの或る理解を提示してもらいたいと考えております。(文責:椎野信雄)
  • 日時:2005年4月24日(日)13時ー17時
  • 場所:成城大学731教室(7号館3階)
発表者:上谷香陽
ドロシー・スミスの社会学の読み方──H・ガーフィンケルとの接点を手がかりに──
  1. ドロシー・スミスの社会学の輪郭
  2. 「事実報告(factual account)」をめぐる問いの所在

コメンテーター:中村和生・池谷のぞみ

発表者のメッセージ:
 この報告では、カナダの社会学社ドロシー・スミスの社会学に対する、一つの読み方を試みたい。スミスは、1970年代以降、「フェミニスト社会学」「制度のエスノグラフィー(institutional ethnography)」「知識の社会的組織化(social organization of knowledge)」などを主題に社会学的探究を展開してきた。その業績は、少なくとも北米の社会学においては、高く評価されているといってよい。その一方、これらの主題となる概念を含め、スミスの議論において用いられるキーワードのそれぞれには、独自の意味が込められている。それゆえスミスの 議論の読解は一筋縄ではいかないものがある。 たとえば、スミスは自らの社会学的探究を、「女性の観点(women's standpoint)」からの社会学をめざすものだと主張する。しかし、この「女性の観点」ということで何を言わんとしているのかということ自体が、 論争の争点になっているのである。  この報告では、スミスが多様なキーワードを考案しながらいかなる社会学的な問題を設定しようとしているのか、彼女の議論の根本的な視点の置き方とはい かなるものか、ということについて考えたい。 そしてその際に、一つの有効な補助線となるのが、スミスとガーフィンケルの接点を探ることであると考える。 スミスはガーフィンケルのエスノメソドロジーから、社会的事実の成り立ちについてどのような発想を得たのか、本報告ではこの点に焦点を合わせてみたい。

担当世話人:

椎野信雄・池谷のぞみ

2004年度研究会大会



概 要

シンポジウム「会話分析の基本概念を再検討する」

書評セッション『実践エスノメソドロジー入門』(有斐閣)

  • 日時:2004年12月11日(土)午後、12日(日)午前
  • 場所:関西セミナーハウス (電話:075-711-2115 ファックス:075-701-5256)

プログラム:12月11日(土曜日)

12時から14時: 世話人会
13時半から: 受け付け開始
14時半から17時半: シンポジウム「会話分析の基本概念を再検討する」[→アブストラクト
■ 司会: 串田秀也(大阪教育大学)
■ 発表者:
高梨克也(情報通信研究機構 けいはんな情報通信融合研究センター)(仮)「順番交替組織について」
鈴木佳奈(英国・エセックス大学)(仮)「修復組織について」
■ コメンテイター:
高木智世(筑波大学)
17時半から18時半: 総会
懇親会

プログラム:2004年12月12日(日曜日)山崎敬一編『実践エスノメソドロジー入門』(有斐閣)

午前9時から12時: 書評セッション:山崎敬一編2004『実践エスノメソドロジー入門』(有斐閣)
■ 司会:
山田富秋(京都精華大学)、樫田美雄(徳島大学)
■ 評者:
高田 明(京都大学アフリカ地域研究資料センター) 田中耕一(関西学院大学社会学部)
■執筆者登壇者:
現在情報集約中です。
シンポジウム「会話分析の基本概念を再検討する」
(シンポジウムの狙い)
 1980年代に、日本において最初の会話分析の論文が発表されてから、早くも20年が経過しようとしています。この間、会話分析の論文・著書は着実に増え、会話分析は日本において定着してきたようにも思われます。しかしながら、その内実はかなり寂しいものだという見方もできます。理由は二つあります。第一に、英語圏において定式化された会話分析の基本的な概念装置が、日本語の会話分析を行ううえでどこまで、どのように適用できるのかどうか。このことが、ほとんど正面から論じられてこなかったということがあります。このような基本的な問題が手つかずのままであれば、地に足のついた研究蓄積とはいえないように思われます。第二に、これは英語圏においても大勢として当てはまりますが、今日、会話分析の論文で使われている概念装置は、そのほとんどが80年代半ばまでに会話分析の第一世代によって定式化されたものです。その後、20年あまり、会話分析にはほとんど新たな概念装置が付け加わっていません。その理由のひとつは、基本的な概念装置を再検討するより、それを幅広く「応用」することに関心が集中してきたことです。このシンポジウムでは、このような現状を認識しつつ前に進むための足がかりとして、さしあたり、会話の「順番交替組織turn-taking organization」「修復組織repair organization」に焦点を当て、上記二つの問題を念頭においた発表と討論を行いたいと思います。
発表1:「他者開始自己修復組織と日本語文法」鈴木佳奈(エセックス大学)
(アブストラクト)
 英語の会話分析の分野では、これまでに、様々なタイプの「修復 (repair)」が存在すること、およびそれらがどう組織されているのかについて、一連の報告がなされている(Schegloff, Jefferson, and Sacks 1977; Schegloff 1979, 1992,1997,2000)。一方、日本語における修復の会話分析的研究はまだ始まったばかりであり、「修復組織は英語と日本語とで同じなのか」、あるいは、「修復に関する英語の概念は日本語会話に応用可能なのか」などの、本シンポジウムのテーマに関わる根本的な問いに答えを出す段階には至っていないように思われる。本発表では、問題源の次のターンで開始される他者開始自己修復 (other-initiated self-repair) という特定のタイプの修復を取り上げ、上記の問いに部分的な解答を示すことを試みる。まず、事例の分析を通して導き出された日本語における他者開始自己修復組織と、英語における同種の修復組織とを比較する。特に、次話者修復誘発手段 (next turn repair initiators)として用いられる日本語の語彙や表現を検討することで、修復組織の少なくとも一部は使用言語に依存していることを論じる。さらに、他者開始自己修復が日本語文法項目から発生する諸問題に対処している事例を提示し、日本語文法の実用性がバックアップ装置としての修復組織の存在に逆に依存していることをも示す。
発表2:「連鎖及び参与構造から見た話者交替システム」 高梨 克也(情報通信研究機構)
(アブストラクト)
 発表者の関心はコミュニケーションにおける「多様だがそれぞれに一理ある」反応の数々とこうした反応を通じて表示される参与者のさまざまな立場について体系的に記述・説明することにある.具体的には,まず会話分析における「連鎖」の概念は隣接ペアのような「義務的」な連鎖だけでなく,他のさまざまな「義務的ではないが可能」な応答をも含むものであると考えられるが,後者について,それがどのような理由で適切な連鎖といえるのかという条件をより明確化していく必要があると思われる.また,ある話し手がターンを取得することの適切性についても,同様に多様な理由ないし「権限」が考えられるが,こうした分類が整備されているとは言いがたい.そこで,本発表では,1.現行発話と次発話の間の連鎖関係の適切性,及び,2.現行話者と次話者の発話者としての権限,という二点を重視しつつ,話者交替システム中のターン割り当て部および話者交替規則中の「1a. 現行話者による次話者選択(他選)」「1b. 次話者による自己選択(自選)」について再検討することを試みる.

2003年度研究例会
[開いて読む]



概要

Dr. Douglas W. Maynard 講演会
「エスノメソドロジー、会話分析、そして社会学的未来―自閉症からの教訓」

(通訳つき、タイトルは変更になっています)

  • 日時: 2004年2月29日(日) 午後1時開場、午後1時半開演(16時終了予定)
  • 場所: 東洋大学白山キャンパス 5B12教室(5号館地下1階)
    (正門から入って正面の建物:都民生協、三徳の前を順に通り過ぎた先が正門)
    白山駅(都営三田線)ならびに本駒込駅(南北線)から徒歩5分
  • 参加費:EMCA会員は無料。 非会員は1,000円。

参考文献
D. Maynard (2003) Bad News, Good News. University of Chicago Press.
樫田美雄・岡田光弘訳『医療場面の会話分析──悪いニュースをどう伝えるか──』勁草書房、2,900円+税(2004年2月25日刊行予定、抄訳)

2003年度研究会大会



概 要

エスノメソドロジーと成員カテゴリーの問題──性別カテゴリーを中心に──

成員カテゴリーの問題は、エスノメソドロジーの主要な主題であるとともに、エスノメソドロジーと現代社会学を架橋する重要な問題である。このシンポジウムでは、特に性別カテゴリーの問題を中心に、エスノメソドロジーの視点から成員カテゴリーの問題について発表を行う。さらに、成員カテゴリーという、エスノメソドロジーと現代社会学の共通の課題について、性別カテゴリーを中心に、発表者、討論者、出席者を交えて検討したい。発表者としては、成員カテゴリーについて最近重要な研究をだされている皆川満寿美*、麦倉泰子* *、小宮友根*の三氏を迎える。また討論者は、『ジェンダー秩序』の江原由美子氏と、『美貌の陥穽:セクシュアリティーのエスノメソドロジー』の山崎敬一氏にお願いした。
  • 開催日: 2003年11月9日(日曜日)
  • 開催場所: 東洋大学白山キャンパス 5B12教室(5号館地下1階)(正門から入って正面の建物)
    白山駅(都営三田線)ならびに本駒込駅(南北線)から徒歩5分 [→東洋大学白山キャンパスへの地図 と キャンパス情報
  • 参加費: EMCA会員・学部生・大学院生 500円/左記以外の方1000円(その場での入会も受け付けます。◎年会費 1500円/学生・大学院生1000円)

プログラム

司会 池谷 のぞみ(東洋大学)・椎野 信雄 (文教大学)

13:05-13:45
「インタビュー調査の場面における成員カテゴリーの問題について:知的障害のある男性への聞きとりを事例に」  麦倉 泰子(早稲田大学大学院生)
13:45-14:25
「適切性と不当性」  小宮 友根(東京都立大学大学院生)
14:30-15:10
「性をみてとるとき」(仮題)  皆川 満寿美(武蔵大学ほか非常勤講師)
15:20-16:30
討論  ──発表者と討論者そして参加者を交えて──

討論者 江原 由美子(東京都立大学)・山崎 敬一(埼玉大学)


※EMCA研究会の会員の方へ:当日は、総会(12:00-12:45)がありますので、是非ご参加ください。

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