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杉原由美『日本語学習のエスノメソドロジー──言語的共生化の過程分析』 もっと学びたいひとのための文献情報 > 研究会会員の著作紹介

杉原由美
日本語学習のエスノメソドロジー──言語的共生化の過程分析

書誌と目次

2010年 5月 刊行
定価 3150円(税込)
A5判 216頁
ISBN 978-4-326-25064-6
勁草書房 |
地域や大学で行われている日本語の学習場面において、「外国人/日本人」というカテゴリー化はいかに形成されるのか。相互学習型活動の実践と参与観察から、非対称的な関係性の中で異質性が顕在化するメカニズムを解明。さらに、「対立」の克服に至る「協働」の現象を分析し、多言語・多文化共生を目指すための学習展開を考察する。


はしがき
序 章 日本社会の変動と日本語学習
1 日本語教育の「共生」パラダイムシフト
2 日本語非母語話者と母語話者の相互学習型活動
3 相互学習型活動の課題
第1章 「非母語/母語話者の相互学習型活動」研究への視座
1 相互学習型活動において目指される共生とは──言語的共生化の過程
2 教育現場のエスノメソドロジー的会話分析
3 地域日本語教育における先行研究
4 大学の日本事情教育における先行研究
5 相互学習型活動の相互行為に関する先行研究
第2章 研究の課題と方法
1 研究目的と課題
2 エスノメソドロジー的会話分析の方法論
3 フィールドと会話データの概要
第3章 参加者間の関係性を構築する質問応答連鎖──地域の相互学習型活動の相互行為【事例1】
1 分析の方法
2  「○○(国)ではどうですか」質問応答連鎖
3 「日本人/外国人」カテゴリー化からはじまる言語的共生化
4 「××(日本語単語)って分かりますか」質問応答連鎖
5 正確な日本語の追求をめぐる言語的共生化
6 異質性の実体化と固定化─共生化の契機とは
第4章 非対称的な関係性と権力作用の顕在化──大学の相互学習型活動の相互行為【事例2】
1 分析の方法
2 母語話者が話し合いを方向付ける相互行為
3 異質性が排除される言語的共生化
4 非母語話者の「自己保存」を困難にする「学習の構え」
第5章 非対称的な関係性を組み換える相互行為──大学の相互学習型活動から【事例3】
1 分析の方法
2 「発話の重なり」に現れる成員カテゴリー化のせめぎあい
3 異種混淆的な混合へむかう言語的共生化
4 「日本のやり方の無意識的な優先」をめぐる協働
終 章 言語的共生化の葛藤的展開を支える学習とは
1 本書のまとめ
2 相互学習型活動における言語的共生化の葛藤的展開
3 「異なりの対立→組み換え」を経験する学習のあり方
4 相互学習型活動の設計への提言──共生意識の共有と「対立の組み換え」に向けて
5 今後の課題
 
 
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引
初出一覧

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本書から:

 本書は、地域住民を対象とした2年間の相互学習型活動の実践と、大学正規授業での半年間の相互学習型活動の参与観察から得た日本語会話データの、エスノメソドロジーの視点による緻密な分析に基づき、外国人と日本人の間に生じる非対称的な関係性と権力作用、関係性組み換えのありようを浮かび上がらせる。そして、会話に現れた現象を「言語的共生化の過程」という理論的枠組みから検討し、自己と他者の区別から対立や葛藤が不可避的に起こり、その対立を双方の協働によって交渉していくという共生化過程を探究する。特に、本書は、非対称的な関係性の「批判」に留まるのではなく、その「克服」に重点を置き、具体的手立てを探究する点が特徴である。日本語を用いる際の日本語非母語話者と母語話者の関係性を微視的に観察して具体的な提言を行う日本語教育実践研究として、また教育分野におけるエスノメソドロジー研究として、ご覧いただきたい。(ページ i より)

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著者に聞く ── 一問一答

本書をまとめようと思った動機やきっかけを教えてください
本書は2009年3月に提出した博士論文です。この研究を行なったきっかけは、地域住民対象の日本語教育実践クラスの運営に参加し、その現場の会話を録音して文字化してみた時に「自分もその場にいたにもかかわらず気がついていなかった権力的なふるまい」が見えたこと、です。そもそも別の角度からの興味で会話を文字化したのですが、文字になった会話には参加者間の非対称性や権力作用が現れていて、心底驚いて、もっと詳しく観察してみようと思いました。
構想・執筆・編集期間はどれくらいですか?
博士論文としての構想は6年で執筆は約1年、本の編集を集中的に行なった期間は約3か月です。
編集作業中のエピソード(苦労した点・楽しかったこと・思いがけないことなど)があれば教えてください
博士論文から本になる時、編集者の方がこの書籍名を提案してくれました。見ての通り、「○○のエスノメソドロジー」という大変おそれおおい題目で、なかなか踏ん切りがつきませんでした。
社会学的にみて,本書の一番の「売り」はなんだと思いますか?
本書は、「EMCAの方法論を用いて、当該現場に還元できる知見を探り出す研究」を行なう場合の参考になると思います。より詳しくは、自身が関心を持つフィールドにおいて、その参与者たちがどのようなやり方で実践を成り立たせているのかを会話の分析から明らかにし、更にそのフィールド領域固有の議論に照らし合わせながら当該現場に還元できる知見を提示する研究の参考になります。
EMCA初学者は,どこから読むのが分かりやすいと思いますか? また,読むときに参考になる本や,読む際の留意点があれば,教えてください
EMCAを学んでいる・学ぼうとして本書をご覧になる方には、日本語教育固有の議論は分かりにくいかもしれません。その場合、研究の方法論(第1章の2、第2章)と、事例1〜3の研究(第3章〜第5章)を重点的に読んでいただくとよいかと思います。
日本語教育の関係者に特に読んで欲しい箇所はありますか?その理由は?
日本語教育関係者には全部です。中でも、日本語教育関係者で特に会話分析に興味を持っている方には、「第1章の2」を読んで欲しいです。理由は、日本語教育の中で、会話分析や接触場面の分析として一般的にとられる方法論と比較しながら、本書の依拠するエスノメソドロジー的会話分析を位置づけているので、会話分析研究の全体像を理解しやすいと思うからです。
実践家に特に読んで欲しい箇所はありますか?その理由は?
研究の方法論(第1章の2、第2章)を特に読んでほしいです。会話分析には約束事が多くて細かいイメージがありますが、EMCAは実はかなり懐の広い方法論であるような気がしています。細かいイメージにとらわれすぎてEMCAを行なうことをあきらめる人がいたらもったいないと思います。 多くの実践家がご自身のフィールドでEMCAの方法論を用いてみられて、「有効な分析ツール」である実感を一緒に分かち合えたらうれしいです。

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書評情報

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本書で扱われていること ── キーワード集

制度的状況の会話分析、教育現場、教育社会学、成員カテゴリー化実践、会話の連鎖的な流れ、相互行為の組織化、相互行為上の非対称性、微細な権力、規範的で道徳的な秩序、局所的社会構造、質問応答連鎖、会話の順番取り装置、発話の重なり、関係性の転換

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