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山崎敬一編『モバイルコミュニケーション』 もっと学びたいひとのための文献情報 > 研究会会員の著作紹介

山崎敬一 編
モバイルコミュニケーション──携帯電話の会話分析

目次と書誌

2006年4月 発行
定価 1890円
A5判/240頁
ISBN 4-469-21304-7
978-4-469-21304-1
大修館書店 |
「どうして『今どこ?』と聞くのか」「ケータイを使った道案内の仕方は?」「途中で切れたらどうするか」「若者の携帯メールの実態はどうなっているか?」など、携帯電話の出現と進化にともない、変化し続けるコミュニケーション・スタイルを、実際に交わされた会話を分析することで解明していく。

はじめに
データで使用されている記号一覧
序 モバイルコミュニケーションの課題
1.本書の構成
2.エスノメソドロジーと会話分析
3.電話の会話分析のプレリュード
 3.1. サックスの電話の分析
 3.2. シェグロフの電話の分析
4.会話の仕組み
 4.1. 隣接対
 4.2. 会話の順番取りシステム
5.遠い声としての携帯電話と人々との関係
6.「携帯する」コミュニケーション
7.モバイルコミュニケーションの課題――時間と空間の組織化
第1章 電話の文化史
1.はじめに
2.電話のボディ・ポリティクス
3.イメージの軽量化――モダンなライフスタイルと電話
4.国づくりの道具から私有・携帯されるコミュニケーション・ツールへ
5.コミュニケーションのデザイン戦略
第2章 モバイルコミュニケーションの現在
1.はじめに
2.パーソナル・コミュニケーション・メディアとしてのケータイ
 2.1. ポケベルからケータイへ――パーソナル・コミュニケーション・メディアの系譜
 2.2. メル友、出会い系、SNS
3.多様化するモバイルコミュニケーション
 3.1. 情報娯楽(インフォテイメント)系
 3.2. 消費行動系
 3.3. 監視管理系
4.おわりに
第3章 関係の中の電話/電話の中の関係
1.はじめに
2.用件の終了/電話の終了
3.トラブルに対する助言/助言のトラブル
第4章 名乗りのない名乗り――携帯電話における会話の始まり
1.携帯電話使用における三つの特徴
2.携帯電話での会話の開始部分
 2.1. もしもし+名前を呼ぶことによる呼びかけ
 2.2. 最初の順番での“もしもーし”という発話デザイン
 2.3. 2番目の順番での話題の導入
3.相互認識の達成は必要ないのか?
4.相互認識過程の簡略化と親しさ――家族との会話と比較しながら
5.携帯電話で親しさが示される三つの仕方
 5.1. 呼びかける
 5.2. “もしもーし”
 5.3. 共鳴させる
第5章 「電波が悪い」状況下での会話
1.はじめに
2.チャンネルが不安定であるということ――「電波が悪い」
3.「電波が悪い」ことについての連鎖の組織
4.「用件」連鎖の中断と再構築
5.「電波が悪い」ことをトピック化すること
6.おわりに
第6章 居場所をめぐるやりとり――ユビキタス性のコミュニケーション
1.はじめに
2.居場所を特定する会話
3.居場所以上のやりとり
4.状況説明という応じ方
5.導入の連鎖
6.会話の開始
7.導入の連鎖の表われ方
8.用件のない導入
9.おわりに
第7章 携帯メール――「親しさ」にかかわるメディア
1.はじめに
2.携帯メールと「親しさ」
 2.1. 携帯電話における「親しさ」
 2.2. 携帯メールに表れる「親しさ」
 2.3. 「やりとり」としての意味――「書くこと」の相互性
3.実践としてのメール
 3.1. 連鎖という考え方
 3.2. 連鎖による「資格」の成立
4.メールにおける「親しさ」の達成
 4.1. 「親しさ」のいろいろ
 4.2. メールにおける「親しさ」
5.メールにおける関係性の維持
 5.1. やりとりを通じて維持される関係性
 5.2. 連絡手段の選択
 5.3. 「電話がかかってこない」状況における関係性の維持
 5.4. メールにおける関係性の維持
6.まとめ
第8章 「他者がいる」状況下での電話
1.ベルが鳴り、そしてあなたは……――携帯電話と参与枠組の揺らぎ
2.参与枠組と共在
3.参与枠組の揺らぎとその修復(1)――参与枠組の分離と再結合
4.参与枠組の揺らぎとその修復(2)――二つの参与枠組の同時維持
5.文脈としての参与枠組/参与枠組のもつ文脈性
第9章 携帯電話を用いた道案内の分析
1.はじめに
2.分析の視点
3.間欠的移動を伴った事例
 3.1. 「とりあえず」の待ち合わせ
 3.2. 居場所を特定する困難
 3.3. 場所を定式化する作法――シェグロフの考察
 3.4. 場所の特定の作業――相手の場所の分析と準拠点の設定
 3.5. 移動に志向した場所の定式化のデザイン
 3.6. どのように移動するのかの決定――互いが出会うことへの志向
4.オンライン移動を伴った事例――方向指示を受けながらの移動
 4.1. 明示的な相互確認を欠いた移動の相互承認
 4.2. 明示的な相互確認の欠如が招くトラブル
 4.3. オンライン移動における方向指示の理解
5.まとめ
第10章 リモートインストラクション――救急救命指示とヘルプデスクの分析
1.はじめに
2.「携帯電話」によることばを用いたリモートインストラクション
3.「携帯電話」を用いた心肺蘇生の遠隔実験
 3.1. 患者の位置の問題
 3.2. 右側と左側――ことばと身体
 3.3. ことばをとおした身体と空間の組織化
 3.4. 指示と作業が異なる場合
4.「携帯電話」を用いたヘルプデスクへの問い合わせ――いかにして正確な場所を伝えるのか
5.おわりに――道具としての「携帯電話」
第11章 モバイルコミュニケーションの未来
1.はじめに
2.デュアルエコロジー
3.手振りのインタラクションが可能な共有環境
 3.1. 手振りの有無とコミュニケーション
 3.2. 撮影角度とコミュニケーション
4.モバイルコミュニケーションの未来
5.おわりに
データについて
参考文献
索 引

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本書から: 「はじめに」より

 「ケータイが携帯する新しいコミュニーションや生活の形態」ってなんだろう。テクノロジーがもらたす日常生活の変化は、じつはほんの小さなことなのかもしれない。だがその小さなことが、私たちの日常のコミュニケーションや生活の形態に大きな影響を与えているのかもしれない。この本は、普段はなかなか気づかないそうした問題を、日常生活の微細な変化をのぞき込む新しい社会科学の道具である、「会話分析」をもちいて明らかにする。
 この本で取り上げる問題は、例えば次のものである。
 「どうして携帯電話がモバイルコミュニケーションの主役になったのか」「どうして『もしもーし』と言うのか」「『いまどこにいるの』ってどうして言うのか」「電波が悪くて途中で電話が切れたらどうするのか」「人と話しているとき、急に携帯電話が鳴ったらどうするのか」「若者はどのように携帯メールを利用しているのか」「緊急時に電話を使って相手にどのように指示しているのか」「携帯を使ってきちんと道案内をしているのに、どうして迷うのか」「モバイルコミュニケーションの新しい道具として、どのようなものが考えられるか」。
 この本では、こうした携帯電話を中心にした、モバイルコミュニケーションの様々な問題を実際の会話の分析にもとづいて明らかにする。 (p.x)

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編者に聞く ── 一問一答

本書を書こうと思った動機やきっかけがあれば教えてください。
当時の山崎研究室では、遠隔で共同作業を行なうための新たなコミュニケーションメディア(ロボットやテレビ電話など)の設計に取り組んでいました。
このため、遠隔コミュニケーションの研究として、携帯電話の会話研究を行なっていました。 初期の会話分析は固定電話の会話の研究であり、その意味では、遠隔コミュニケーションの研究です。「モバイル」できるようになった携帯電話の普及が進んだ今、その会話分析を行なうことは、メディアの機能とコミュニケーションデザインの切っても切れない関係について、もう一度考えることができるのではないかと思いました。
構想・執筆期間はどれくらいですか?

全部で1年くらいで行ないました。

編集作業中のエピソード(苦労した点・楽しかったこと・思いがけないことなど)があれば教えてください。
たくさんの共著者との間で、会話分析に関する、基本的な用語やデータの表記法を統一するのに苦労しました。
社会学的(EMCA的でも可)にみて、本書の「売り」はなんだと思いますか?
携帯電話の社会学的研究は蓄積されつつあります。ですが、メディアの特性が、コミュニケーションの仕方自体をどのように制約しているのか、またどのような意味で、コミュニケーションの可能性を開いているのか、ということについて、具体的に論じている本はあまりありません。まずは、この点が売りだと思います。
EMCAの初学者は、どこから読むのが分かりやすいと思いますか?
 また、読むときに参考になる本や、読む際の留意点があれば、教えてください。
序章で、本書のねらいと会話分析の紹介をお読みになって頂き、1章・2章で、電話と携帯電話の普及とその利用について大まかに押さえて頂いた後は、関心に応じてどこから読んでも構わないと思います。
携帯電話よりも、会話分析・エスノメソドロジーを勉強したくて購入した、という方は、自分にとって興味のある題材を選んで、その現象が会話分析の手法によってどのように考察されているのかという観点からお読みになるのもいいと思います。
言語学者に特に読んで欲しい箇所はありますか?その理由は?
本書を貫いている考え方の一つは、会話の流れは、そこで会話をしている人たちの活動や社会関係と独立したものではありえない、ということです。こうした考え方は、言語学においても重要な見方ではないかと思います。
例えば、第3章では、会話分析の古典的なトピックの一つである、電話における会話の終了の開始が取り上げられています。ここでは、この遅延が、電話の掛け手と受け手の関係性における社会的な期待に志向して行なわれていること、かつ、そうした会話の流れが、彼等の関係性を作り出してもいること、が指摘されています。
さらにこうした関心は、携帯電話ならではの問題へと推し進められ、4章〜8章では、そこでの会話の特徴(相互認識・用件など)が、携帯電話の機能や利用(番号通知・電波状況・ユビキタス性など)と関わっていることが分析されています。
ちなみに、7章では携帯メールのやりとりにおける親密な関係性のあり方が分析されています。絵文字を含んだ携帯メールのやりとりの分析は、まだまだ研究例が少ないので、貴重な資料の一つかもしれません。
工学者に特に読んで欲しい箇所はありますか?その理由は?
本書は、携帯電話における「会話」だけでなく、携帯電話を使った「作業のあり方(身体的配置・動きも含む)」に着目した研究もあります。
9章から11章は、ある作業において、携帯電話を利用したときに、どのようにその作業が進んでいくのか、また、そこで起こりうる作業上のトラブルはどのようなものなのか、ということに焦点を当てて分析しています。
開発においては、その道具によって得られる有用性が重要視されます。ですが、その道具の設計を考える際には、その道具を利用することで、どのように人々が作業を行なうのか、という点を考えることが重要です。
その際に「道具を使っている人」と「道具」だけに注目するのではなく、その人がやりとりをしている相手との「相互行為」に着目することが重要だ、ということが分かってもらえると思います。
(文責:五十嵐素子(共著者)・山崎敬一(編者))

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書評情報

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本書で扱われていること ── キーワード集

ケータイ、電話、コミュニーション・ツール、パーソナル・コミュニケーション・メディア、メル友、リモートインストラクション、携帯メール、ユビキタス

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