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ダグラス W. メイナード『医療現場の会話分析──悪いニュースをどう伝えるか』 もっと学びたいひとのための文献情報 > 研究会会員の著作紹介

ダグラス W. メイナード (樫田 美雄・岡田 光弘 訳)
医療現場の会話分析──悪いニュースをどう伝えるか

目次と書誌

2004年 発行
定価 3045円(税込)
A5判/238頁
ISBN 4-326-60169-8
勁草書房 |
告知による「衝撃」を我々はどう生きているのか。
臨床事例から医療コミュニケーションの構造に迫る。
■原著
Maynard, D. (2003) Bad News, Good News: Conversational Order in Everyday Talk and Clinical Settings, The University of Chicago Press. [Amazon | Google Book Search]

1 悪い知らせ、良い知らせと日々の生活
2 ニュースの受け入れられ方──道徳的トポグラフィーの問題
3 会話分析とエスノグラフィー──診療場面から見る方法論上の争点
4 ニュースを伝えるシークエンス
5 悪い知らせとそれに伴う感情──子が自閉症であることを告知された臨床事例から
6 悪い知らせが隠される訳、そしてその明かし方──HIVカウンセリング現場での実践例から
エピローグ ニュースを告げる方法

訳者解説
訳者あとがき
付録1 トランスクリプトにする際の規約
付録2 会話分析への手引き
 

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本書から: 「日本語版への序」

(‥) 悪いニュースや良いニュースを含んでいる連鎖的な構造を明らかにすることによって,ニュースを送り届ける際にコミュニケーションを改善するような諸実践というものを,同定できるようになる.「コミュニケーションを改善する」〔というフレーズ〕によって,私が意味しているのは,以下のようなことである.すなわち,どのような種類の〔ニュース〕送り届け戦略が,患者や患者家族や介護者が理解したり受け入れたりする程度を高めるのか,ということを,私の調査は示しうる,そして,それは患者たちの受け手性の表示によって証拠立てうる,ということである。...
(iv頁、〔〕は訳者による補い)

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翻訳者に聞く ── 一問一答

本訳書を出版しようと思った動機やきっかけを教えてください。
 もちろん、日本の知的世界に対して、翻訳出版の意義があると考えたからですが、その一方で自分の仕事をやりやすくするためでもありました。ここ 20年間ほど医療社会学の領域で調査をしてきていますが、どういう成果を目指しているのですか? と聞かれたときにコンパクトに答えることができず困ることが多いのです。メイナード先生の研究のような“実践的な研究”(例:悪いニュースには適切な伝え方がある)を紹介することで、自分の研究計画を(医療)関係者に理解してもらうことが容易になると考えました。〔樫田 美雄〕
 今でもそうなのですが、当時、欧米ではすでに、医療の実践者の方々と関心を共有しつつ、社会(学)的な関心に基づいた「会話分析」の研究が盛んになっていました。その姿を紹介したかったということです。 それに加えて、メイナード先生は、エスノグラフィーとCAとか、EMとCAの関係といった研究方法の部分にも造詣が深い方なので、邦訳する意義が大きいと考えました。〔岡田 光弘〕
構想・翻訳期間はどれくらいですか?

Maynard - Bad News, Good News: Conversational Order in Everyday Talk and Clinical Settings 2003年の春からですから、丸一年ほどになります。はじめは、メイナード先生の諸論文をピックアップしたものを考えていましたが、ご本人からの示唆もあって、この形(Bad News, Good News の抄訳)になりました。  
翻訳作業中のエピソード(苦労した点・楽しかったこと・思いがけないことなど)があれば教えてください。
「訳者あとがき」にも書きましたが、メイナード先生のところで修士課程を終えられた川島理恵さん(現日本学術振興会特別研究員)がUCLAにいたので、訳文について国際電話で何時間も相談しながら訳業を進めました。訳者二人(千葉の岡田さんと徳島の樫田)が、UCLAの川島さんと、電話の3者通話機能を使って会話をしたのですが、この作業が思いの外スムーズにいって、「IT技術ってすごいな」と思ったのが思い出です。いまならインターネットを使ってもっと簡単にできるのでしょうけれど、当時はおどろきでした。
社会学的(EMCA的でも可)にみて、本書の一番の「売り」はなんだと思いますか?
まず第一に、議論の枠組みがしっかりしていることです。前半の理論部分で、現象学やエスノグラフィーの位置づけが説明されていて重要です。
 第二に、提言がとても実践的なことです。これらはメイナード博士の結論に批判的意見を持つ人にも、本書を読むに値するものとする部分だと思っています。
 さいごに、詩的な表現が生きていることです。1章の冒頭のルイーズ・グリックの詩以外にも、たくさんの詩的な表現が存在していて、実例紹介の意義を増しています。
EMCA初学者は、どこから読むのが分かりやすいと思いますか?
また、読むときに参考になる本や、読む際の留意点があれば、教えてください。
「訳者あとがき」にも書いたように(186頁)、4章「ニュースを伝えるシークエンス」から読む手があると思います。「エピローグ」から読んでしまうとあまりエスノメソドロジー会話分析の勉強にならないように思います。
また、参考資料としては、下記サイトに掲載されている が とても有用です。これは、2004年3月6日のメイナード博士の来日公演をテープ起こししたものですが、ガン患者への告知問題などが丁寧に論じられていて重要ですし、わかりやすくもあります。本年3月に発行した『医学教育のエスノメソドロジー(科研報告書)』は100部しか作らなかったので、もう残部がありません。こちらでごらんになってください。
実践家に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は?
医療実践家の方には、エピローグをとにかく読んでもらった上で、意味があると思ったら、前の方の各章も是非とも読んでいただきたく思います。「よいニュース」も「悪いニュース」同様、衝撃的であり得る、ということに得心がいくようになります。告知に関する諸原則(例:慎重に様子を見ながら述べる等々)の適用時に応用が利くようになります。そのうえで、患者・患者家族の反応の多様性に驚かなくて済むようになるのではないでしょうか。これは価値のあることです。
医療社会学者に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は?
実践的提案としての評価を聞きたく思います。「告知するかどうかより、どのように告知するかが大事だ」等々のメッセージは、「告知問題のプロブレマティーク」を変える力を持っているのではないか、と思いますがどうなのでしょうか。議論の素材として活用していただきたく思っています。
出版以降にどのような反響がありましたか? またすでに書評などが出ているようであれば、教えてください。
おかげさまで、メイナード先生の来日講演時(2004年2月~3月)には、たくさんの方に会場にまできていただき、有意義な議論ができました(こちらに記録があります:「D. W. Maynard 教授講演会日程」)。直前に訳書の発行をすることができていたので、これも反響と言って良いと思います。関連記事は『朝日新聞』と『週刊 医学界新聞』[web版記事] と『ジャミック・ジャーナル』(2004年7月号)に載りました。
 書評は、全部で6本出ています[→書誌詳細]。2004年中に4本が雑誌に出ました。五十嵐 素子さん、田中 剛太さん、平 英美さん、中條 雅美さんによるものです。扱っている問題の重要さからか、みなさんに好意的にコメントしていただきありがたく思っています。あとの2本は、相野田紀子さん、阿部 智恵子さんによるものです。 これらは上掲の報告書[樫田編 2007で読むことができます。
 さらに、これも反響と言っていいと思うのですが、授業のテキストに取り上げてくださったところがあります。国際医療福祉大学の「在宅看護論」などで教科書として使っていただいたと聞いています。おかげさまで、翌年に第二刷を出すことができる程度には売れました。

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書評情報

五十嵐 素子
2004 「<書評> D.メイナード著,樫田美雄・岡田光弘訳『医療現場の会話分析-悪いニュースをいかに伝えるか』 勁草書房,2004年,238頁,3045円」 in 『年報筑波社会学』第16号:122~126頁
田中 剛太
2004 「『医療現場の会話分析』(書評)」 in 『明治学院大学社会学部付属研究所年報』第35号:181~182頁
相野田 紀子
2007 「書評 訳書『医療現場の会話分析・悪いニュースをどう伝えるか』 医療者教育には暗黙知の意識を意識することが必要」[pdf: 130k]
in 樫田編 『医学教育のエスノメソドロジー 平成15年度~平成17年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書』[web版] 45~47頁。
平 英美
2007 「書評 D.メイナード著『医療現場の会話分析-悪いニュースをどう伝えるか』(樫田美雄・岡田光弘訳 勁草書房 2004)」 in 『保健医療社会学論集』15巻1号:54~55頁。
中條 雅美
2004 「書評 D.メイナード著『医療現場の会話分析』」、in 『Quality Nursing』10-6:90.
阿部 智恵子
2007 「<書評> D.メイナード著,樫田美雄・岡田光弘訳『医療現場の会話分析』を教科書として利用して」 [web版] [pdf: 170k]
in 樫田編 『医学教育のエスノメソドロジー 平成15年度~平成17年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書』 [web版]

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本書で扱われていること ── キーワード集

 

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