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城 綾実 著『多人数会話におけるジェスチャーの同期──「同じ」を目指そうとするやりとりの会話分析』 もっと学びたいひとのための文献情報 > 研究会会員の著作紹介

城 綾実 著
多人数会話におけるジェスチャーの同期
──「同じ」を目指そうとするやりとりの会話分析
(ひつじ研究叢書(言語編) 第151巻)

目次と書誌

A5判上製函入り 240頁
定価5800円+税
発行日:2018年2月16日
ブックデザイン 白井敬尚形成事務所
ISBN-10: 4894769069
ISBN-13: 978-4-89476-906-9
出版社: ひつじ書房 |
「私はあなたと同じ理解をしている」ことを相手に伝えるには、さまざまなやり方がある。本書では、二人以上で同時に同じジェスチャーをするジェスチャーの同期を対象とし、複数の相互行為環境で収録した映像データをもとに、人びとが「同じ」を目指すやり方に迫る。会話分析による精度の高い形式的記述を通じて、言語によるやりとりのみならず、身体と言語、身体と身体の相互彫琢を支える人びとの合理性と柔軟さを明らかにする。
■目次:

第1章 序論―人びとにとっての「同じ」とは何か
1. はじめに―ジェスチャーの同期とは何か
2. なぜジェスチャーの同期を扱うのか
3. どの方法でジェスチャーの同期を扱うのか
4. 会話分析に依拠した相互行為研究
5. 本書の構成
第2章 「同じ」をめぐる先行研究
1. 「同時」に行なわれる「同じ」振る舞い
2. 相互行為の外部から分析した「同じ」振る舞い
3. 相互行為の内部から分析した「同じ」振る舞い
 3.1 唱和的共同産出とジェスチャーの同期
 3.2  予備的分析―ジェスチャーの同期の組織化と相互行為上の効果
4. ジェスチャーの「同期」という用語について
5. まとめ
第3章 研究方法とデータ
1. 会話分析
2. 会話分析の基本的概念
 2.1 発話順番、発話順番交替
 2.2 投射と高められた投射可能性
 2.3 行為連鎖と隣接ペア
 2.4 修復
3. ジェスチャー研究
 3.1 ジェスチャーがどのように取り扱われてきたか
 3.2 ジェスチャー単位
4. 相互行為資源としての身体
 4.1 会話分析における視線の分析
 4.2 身体行動に見られる形式的組織の探究
5. ジェスチャーの同期を記述するための諸概念
 5.1 ジェスチャーによる投射可能性
 5.2 ジェスチャーの同期と参加機会「スロット」
 5.3  ジェスチャーの同期に利用される高められた投射可能性
6. 認識可能なジェスチャーの構造を記述すること
7. 転記方法
 7.1 ジェスチャーと発言の違い
 7.2 発言の表記
 7.3 ジェスチャーと視線の表記
8. データの概要
第4章 人びとにとってのジェスチャーの同期
1. ジェスチャーの同期をめぐる知見の整理
2. ジェスチャーの同期達成過程
 2.1 会話の進行に伴い顕在化する知識あるいは経験の差
 2.2  隣接ペアの性質と特定のジェスチャーが生み出されるスロット
 2.3 ジェスチャーの準備
 2.4  発話権の緩み、受け手の視線確保とジェスチャーの組み立て
 2.5 小括
3. 高められた投射可能性―ジェスチャーの準備
 3.1 話し手が先行するケース
 3.2 受け手が先行するケース
 3.3 小括
4.  高められた投射可能性―規範的構造、繰り返し利用すること
 4.1 表現対象および身体が有する規範的構造
 4.2 ジェスチャーを繰り返し利用すること
 4.3 小括
5. 「 同じ」を目指す人びとの試み―細部のずれに関する考察
6. 「 同期スロット」におけるジェスチャーの差異に対する志向性
7. まとめ
第5章 ジェスチャーの同期が成し遂げられる位置
1. 相互行為の位置に注目する意義
2. 連鎖や活動の完了時
 2.1 隣接ペア第二成分
 2.2 語りのクライマックスまたはオチ
3. 進行中の活動の遅滞、トラブル発生後
 3.1 訂正
 3.2 想起
4. 「有標」な理解の主張の後
5. まとめ
第6章 ジェスチャーの同期により達成される行為・活動
1. 説明の共同産出
2. 参与者間の「食い違い」の解消
3. 共同産出者への同意の提示
4. 理解の例証と承認
5. まとめ
第7章 ジェスチャーの同期を利用することで生じうる効果
1. 「効果」という語で示されるもの
2. 特定の対象を「見所/勘所」として際立たせる
3. ピボット的な話題移行
4. 共通理解の確立と進行性の確保の両立
 4.1 相互行為における共通理解と進行性
 4.2  対話型アニメーション再生課題における共通理解と進行性の管理
 4.3 視覚的資源の性質
 4.4 [ 他者修復開始-自己修復実行]連鎖におけるジェスチャーの同期
 4.5 物語のクライマックスにおけるジェスチャーの同期
 4.6 小括
5. まとめ
第8章 結論―「同じ」をめぐる人びとの合理性と柔軟さの探求
1. 本書における課題と成果
2.  ジェスチャーの同期を中心とする一定のやり方と相互彫琢
3. 本書で展開してきた研究の意義
 3.1 「 同時性/同形性」を扱う同期・同調研究における貢献
 3.2 会話分析研究における貢献
 3.3 ジェスチャー研究における貢献
 3.4 複数領域におけるコミュニケーション研究への貢献
4. 今後の課題と展望
5.  まとめ―合理的かつ柔軟なやり方で達成されるジェスチャーの同期

参考文献
あとがき
索引

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本書から:

ここで重要なのは、ジェスチャーを行なっている参与者たちさえも、最初からそれぞれのジェスチャーを重ね合わせることでどのような効果が現れるのかを全て理解しているとは限らない、ということである。むしろ、ジェスチャーの同期を成し遂げていく過程でそれぞれの知識の一端が明らかになることで、チーム性を示したり、一体感や高揚感を得たり、差異を意識して自己修復をしたりといった相互行為上の副次的な効果が生じる可能性がある。断片4-1でいえば、AとBとで説明の共同産出(第6章第1節参照)を達成するとほぼ同時に、Cがした質問(15行目)の直接の宛先ではなかったAが、単独で発話権を得てシュノーケルについての説明を完了させている(22行目)。このようなジェスチャーの同期により達成される行為や活動、相互行為上の効果については、第6章と第7章で論じる。(第4章p.94-95)

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著者に聞く ── 一問一答

本書を出版しようと思った動機やきっかけを教えてください.
あとがきにも少し書きましたが、自らの博士論文に自信がなく、当初は出版の意思はありませんでした。ただ、幸運なことに、学位取得後すぐに会話分析の授業とゼミを受講する機会に恵まれました。当時、急なお願いであったにもかかわらず、受講をご快諾いただいた西阪仰先生と早野薫さんに心から感謝しています。さらに、博士論文を書き終えて以降も研究対象であったジェスチャーの同期への関心が自身の中でまったく失われずに、むしろ会話分析をきちんと学び訓練した上で、もっと丁寧に分析をし直したいという気持ちが強まっていました。そのような時期(2015年秋)に、ひつじ書房さんから二度目のお誘いをいただいたことが、直接のきっかけになりました。お誘いをいただいたときに、私自身の感覚よりも、出版する価値があると判断してくださったプロの感覚にゆだねてみようという思いと、もうひとつ、会話分析および身体に着目した研究に貢献できればという思いが生まれました。
構想・執筆期間はどれくらいですか?

ジェスチャーの同期を研究したいと思ったきっかけは、本書にも収録されている事例(断片4-2と4-3)を偶然(研究とは関係なく)収録したことなのですが、それが2006年夏くらいでした。博士論文を出そうと思ってから実際に出すまでは、おそらくM2の後半から実際の提出(および公聴会後の修正期間)くらいまでなので、4年半くらいかと思います。本書に関しては、2015年秋からの2年数ヶ月くらいです。
編集作業中のエピソードがあれば教えてください。
1冊の本を書くことは、自らの研究に対してだけでなく、自分自身とも向き合う仕事なのだと何度も痛感しました。たとえば、私は一人でコツコツやるよりも、誰かと相互行為するフェーズを設けた方が作業を進めることができる人間なのだと、すごく感じました。一人で執筆しようとがんばるよりも、ダメなりに現状を誰かに見せてフィードバックをいただく方が執筆を進めることができました。今回は、原稿に目を通していただいた居關友里子さんと荒野侑甫さんとのやりとりに非常に励まされましたし、学ぶことも多くとてもありがたかったです。彼らには、今までお見せしたことのない面をいくつかさらけ出したと思います。彼らのサポートなしに脱稿することはできなかったと思っています。
本書の「売り」は、どのようなところにあるとお考えですか?
大きく二つあると考えています。
 まず、身体的振る舞いに着目して多数事例を収集し、会話分析を用いてそのプラクティスの一端を明らかにした、日本語でまとめられた数少ない研究書であること。相互行為における身体が気になる、または会話分析が気になるけれども(気になるのはどちらか一方でも両方であってもよい)、具体的にどうしたら論文になるのだろうと考えている方のお役に立てるのではないかと思っています。
 次に、同期現象と呼ばれる複数の領域で探究されている現象を対象とし、従来は研究者による操作的定義に基づいた判定や計測によって(相互行為の外部から)分析されてきた同期現象を、会話分析によって(相互行為の内部から)分析したこと。この狙いは、同期現象をさまざまな立場から探究することにより、現象自体を広く、深く理解する一助として自らの研究を位置付けることです。会話分析の視点に首尾一貫して定位するのであれば、Lerner(2002)が呼んだgestural matchingをジェスチャーの重ね合わせと訳して利用する方が適切だったかもしれないという思いはあります。ただ本書に関しては、会話分析に関心のある方だけでなく、同期現象に関心のある方に会話分析の有用性が伝わればさいわいだという思いがあり、研究対象をジェスチャーの同期と呼ぶことにしました。
言語学者にとくに読んでほしい箇所はありますか? またその理由は?
本書の研究は、会話分析ですでに扱われていたユニゾン(唱和的共同産出)の研究に多く依拠しています。言語学者の方々は、ユニゾンという現象に関心を向けることはあっても、ジェスチャーの同期には関心が向かないかもしれません。ですので、第4章に目を通していただき、言語とジェスチャー、それぞれ特有の性質はあれども、プラクティスを記述するにあたり共通することは多くあるという事実を知っていただければうれしいです。言語の構造、意味、使用などを研究する上で、身体的振る舞いの分析が役立つこともあるだろうと思います。少なくともジェスチャーの同期を研究するのに、言語は重要な資源となっています。
認知科学者にとくに読んでほしい箇所はありますか? またその理由は?
前項回答と重なる部分もありますが、研究者による(相互行為の外部からの)計算や操作から生み出されたモデルだけでは、さまざまな状況に応じた相互行為のやり方およびそれにより生じる認知的効果の実態に迫りにくいのではないかと考えています。第1章と第2章を読んでいただくと、相互行為上で生じる現象を会話分析を用いて研究することの有用性を掴んでいただけるのではないかと思います。また、ジェスチャーによる表現および同期を可能にしている知識とその運用の一端についても第2章第3.2節や第4章の分析などで触れているので、目を通していただけるとありがたいです。
どのような方に、どのような仕方でこの本を読んでほしいとお考えですか? また読む際の留意点がありましたら、教えてください。
会話分析も、身体に着目して観察することも、とても魅力的なものです。しかし、それらをもとに論文を執筆するときには、いくつもの困難があるように私自身は感じています。本書は、ジェスチャーの同期という人びとが想起しやすかったり遭遇しやすかったりするという意味で「わかりやすい」(決して分析しやすいわけではないです)現象を、会話分析において重要なposition and compositionを重視してまとめたものです。会話分析を用いて論文を書きたい方や、身体的振る舞いの分析をまとめるのに苦労されている方には、ひとつの現象(研究対象)をどうまとめているのかという点でいくらかお役に立てると思いますので、通読していただけるとうれしいです。また、会話分析については、日本語で読める基本論文集や教科書がいくつも出版されていますので、本書を読んでわかりにくかった点については、ぜひともそれらをご参照いただければさいわいです。

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書評情報

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本書で扱われていること ── キーワード集

ジェスチャー、相互行為の外部/内部、相互行為上の位置、行為の構成、行為連鎖、修復、活動の進行性の管理、高められた投射可能性、規範的構造

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