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是永論 著『見ること・聞くことのデザイン──メディア理解の相互行為分析』 もっと学びたいひとのための文献情報 > 研究会会員の著作紹介

是永 論 著
見ること・聞くことのデザイン──メディア理解の相互行為分析

目次と書誌

四六判並製232頁
定価:本体2400円+税
発売日 2017.4.11
ISBN 978-4-7885-1509-3
出版社: 新曜社 |
本書は、人々がメディアの表現を理解する際に用いている実践の方法について、表現上に描かれている活動の記述を分析の対象としながら、それらの記述のもとで理解に参照される規範を、特にカテゴリー集合と行為連鎖の観点から考察したものである。
■目次:

はじめに
メディア批判の困難
「理解の仕方」に即した分析
本書の特徴と構成
1章 記述のもとでの理解とはなにか
記述のもとでの理解とその方法
カテゴリー集合とその一貫した適用
発話を通じた行為連鎖の参照
トラブルの理解と修復
表現における理解の産出
2章 マスメディアは伝え方を操作しながら事実をねつ造しているのか
「事実と嘘」
記述としての「編集」
スタジオ・トークにおける行為連鎖の参照
「報道された事実」としての,公共的な理解の達成
3章 メディアに登場する人物は,送り手側の都合で「心にもないこと」を話しているのか
本当の経験としてのオーセンティシティのデザイン
受け手におけるオーセンティシティ
「自分のこと」として理解すること
トーク番組における経験の語り
経験の資格をめぐるカテゴリー化
経験の社会的な配置に向けて
4章 スポーツ中継は見れば分かるようなことを余計に飾り立てているのか
メディアの中のスポーツ
実況の問題
中継における発言の構造化
リュージュ競技実況における実践
見ることの規範
「動き」として見ることの規範
実況の「物語」と技
5章 広告は目立てばよいのか
広告の前景化
広告ではないものとして見るということ
「広告を見る」という実践
実践その1 カテゴリー化装置による人物の特定
実践その2 カテゴリーと結びついた活動
実践その3 参与枠組みの転換にしたがった活動の理解
理解の実践に結びついた象徴
6章 マンガは絵で描かれているからかんたんで誰でも読めるのか
「読むこと」の多層性
マンガのわかりやすさと「見ること」のわかりやすさ
画像表現における参与空間のデザイン
コマ展開における行為の理解
記号として「見ること」/相互行為上のデザインのもとで「見ること」
ニュースとして記述して伝えるシークエンス
規範の参照における「読む」という経験の多様性
あとがき
引用文献
索引(人名/事項)

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本書から:

本書は,日常的なメディア批判や,あるいはメディア・リテラシーの議論としてよく言われるような,メディア表現にまつわる一般的なうえテーマを各章に配置している。そのうえで,それぞれのテーマについて,表現の理解産出における規範の参照という観点から考察しながら,メディア表現をどのように分析していくのかについて,実際の研究例とともに示していく。(本書20ページより)

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著者に聞く ── 一問一答

本書を出版しようと思った動機やきっかけを教えてください.
 メディア研究としての動機については、本書の「あとがき」に書いてありますので、こちらではエスノメソドロジー(以下EM)研究としての動機について述べます。EMでメディアの理解を扱った主な研究としては、P・ジャルバート編(Jalbert(ed.),1999)のほか、D・スミスのものが挙げられると思います。両者とももちろん研究的な意義は大きいのですが、日本で日常的に接触するメディアを扱うにはいろいろと難しいところがあるように思っていました。そこで、自らも日本のメディアについての理解を実践するものとして、その実践過程の分析に使えるものを書いてみたかった、ということがあります。
 もう一つは、特にメディアを分析対象とする場合は、成員カテゴリー分析(MCA)の視点が非常に重要だと考えていたので、これまで日本ではあまり積極的にとらえられて来なかった、この視点からの分析の可能性について試してみたかったこともあります。
構想・執筆期間はどれくらいですか?

 2011年に研究休暇に入る頃、2000年代に書いた論文をまとめるような形でお話をいただいてはいたのですが、分析対象となるメディアの範囲が狭かったので、対象を追加したほか、後述するように、EMの概念について多少なりとも納得のいく説明を考えるのに非常に時間がかかり、そうこうしている間に軽く3年くらい過ぎてしまいました。それでもまだ出版物として世に放つのにはいくつか支障があると考え、先に内容を博士論文として審査していただき、「お墨付き」を得た上でのこのたびの出版となったところで、都合6年ぐらいかかってしまいました。
編集作業中のエピソードがあれば教えてください。
 なんといっても苦労したのは、成員カテゴリー装置と行為連鎖という、EMの基本概念に至る部分をどうやって説明するか、という点でした。執筆期間と並行して、本務校で学部講義科目の「エスノメソドロジー」を担当しながら、いろいろと説明の仕方を考えてきたのですが、なかなか相手に話が伝わった感触がつかめませんでした。大学院はEMに適合した授業の担当がなかったのですが、2015年に東洋大学大学院の科目(「社会情報学特論」だったのですが)で、ようやく少人数に対して授業をする機会があり、そこで受講生の方から内容を理解いただけた上でのコメントがあり、その経験から自信をつけてまとめていくことができたように思います。
 あと、このサイトに掲載する話をいただけた時に書こうと前から決めていたことがあり、それは、執筆の前もしくは途中に気を落ち着けるルーチンとして、「皿洗いをする」のがオススメ、ということでした(笑)。お湯で洗うのがコツで、洗っている間に手や体が温まってくると、よいアイデアもふと浮かんだりして、そのまま書く気持ちが前向きになる感じがするように思います。お風呂でもいいのですが、ちょっとだらけてしまうこともあったので。いつか出版となったあかつきには、ここでこの話を書いてやろう、ということ自体も仕事の励みになったかもしれませんので、実際こうしたサイトがあることはEM研究者にとって貴重だと思います。
本書の「売り」は、どのようなところにあるとお考えですか?
 私が勝手に作った格言の一つに、「EMは例に始まって例に終わる」というものがあるのですが、サックスの「赤ちゃんが泣いた」の話がまさにそうですが、どういう例を選択しながら実践を記述するのかが、実践そのものを理解することにはじまり、EMとして理解すること、さらにはEM自体を理解することにとっても、その成否を左右する点で非常に重要であると考えます。
 「売り」ということで敢えて申し上げれば、その意味で、本書で用いている例は、どれも一つの分析データである以上に、EMを理解するためにも使えるものではないかと思っています。特にマンガは、私たちの日常的な理解の実践を考えるにおいて、とても意味のある対象だと思っていますし、そこにQ1で述べたような、「日本のメディア」を対象とするという意義もあるように考えます。
 メディアの事例という点では、インターネット上の現象を自力で扱えなかったところは不足にも思われますが、その分、マスメディアとしてのテレビの中で、これまで実践されてきた理解のデザイン方法をいくつか示せたことは、自分がテレビ世代であることも奏功して、ある種の記録的な意味を持つようにも思っています。事例にあったような、会話の機微を活かしたトーク番組や、精密なスポーツ実況といったものは、今後はもうあまり見られないのではないかと感じています。
メディア研究者にとくに読んでほしい箇所はありますか? またその理由は?
 3章で展開した「オーセンティシティ」をめぐる議論は、そもそもマスメディアにおいては、さまざまな人びとが協働しながらその表現実践に関わっているという点をあらためて考えてもらうためにも読んでもらいたいところです。昨今のメディア批判ではとかく「リアルでないこと」が標的にされますが、それはある意味で、「事実」もしくは「リアルさ」に基づいていれば誰が作っても同じ、ということにもつながりかねず、送り手が、その人ならではの立場で表現を制作することの価値を、もっと研究的にも考えてもらいたいとも思っています。この点は2章にも関連します。
実践家にとくに読んでほしい箇所はありますか? またその理由は?
 上記にも関連しますが、本書が意図することの一つには、メディアの制作者に「表現の担い手」としての価値を意識していただくということがあります。その意味では、2章や4章から、出来事を「わかりやすく」伝えたり、その場で「見るべきこと」を伝える担い手としての、自らの実践がもつ意義について気づいていただくきっかけとなればと思っています。実際に4章の内容を学会で発表した時は、スポーツ実況を職業としていた実践家の方にその点を評価していただいたことがあります。
どのような方に、どのような仕方でこの本を読んでほしいとお考えですか? また読む際の留意点がありましたら、教えてください。
 メディアの研究や実践に関わる人に読んでもらうことはもちろんですが、Q4のような点から、教える・学ぶという、それぞれの立場から、EMについての理解を進めるために活用してもらえると幸いです。教育目的であれば、「私つくる人」のCM映像も含めて、本書で分析対象となった映像はサーバーに置いて希望者にリンクを提供したいと思っています。

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書評情報

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本書で扱われていること ── キーワード集

メディア・リテラシー カテゴリー集合 行為連鎖 参与空間 グランス

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